ラン・スルー・フィールド・ウィズ・ザ・ストライダー #2

ニンジャスレイヤー×ストライダー飛竜のクロスSS。エイプリルフールネタ。#2
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おゆはり @SSoyuhari

「ワァ、スゴーイ!お客=サン、何着てもカワイイ!」目にも眩しい派手な化粧の女店員が、着せ替え人形めいた試着をヤモトに迫る。「でもアタイ、こういう胸元が空いたのってあまり…」「アラー、心配無いですよ。豊満じゃない人でも魅力重点」「いや、そういう事じゃなくて」 25

2017-04-01 20:23:38
おゆはり @SSoyuhari

今年のトレンドだと店員が薦める服は、どれも露出が激しいものばかりだ。普段着ている物とは趣向が違うため、ヤモトは気後れしてしまう。「セクシーなカンジの方が、男のヒトも食いつきイイですよ?好きな人とかいるでしょ?」「す、好きな人?」おずおずと服を返そうとしたヤモトの手が止まる。 26

2017-04-01 20:24:23
おゆはり @SSoyuhari

「……あー、ゴメンナサイ。彼氏持ち?」「い、いや違います」「それじゃあ男、捕まえなきゃ!カワイクなって彼氏もできて、アブハチトラズな!」「そ、そうは言っても…」これではまるでオイランだ。オブツダンやセンコウの扇情的な姿がニューロンに思い浮かぶ。同時に、やはりザクロの小言も。 27

2017-04-01 20:25:14
おゆはり @SSoyuhari

(((もっと楽しみなさい!そう、恋とか!なに気後れしてるの!)))楽しむ……恋……。「……あの、やっぱり、コレにします」ヤモトは結局、最初に目に留まった服を指差した。水彩画めいた桜の柄をあしらった、透明感あるピンクのワンピースだ。コレでも恥ずかしいが、他のよりはマシである。 28

2017-04-01 20:26:52
おゆはり @SSoyuhari

「エー。でも、普通すぎだけど、この服も女の子らしくってカワイイですよね!」期待を外された店員の何気ない一言が、ヤモトの胸中で反芻された。これが、普通。(普通……女の子らしい、かぁ)知らず胸が躍る。笑みが零れる。……そうだ。靴も新しいのを買おうかな。他の店も見てみよう。 29

2017-04-01 20:27:59
おゆはり @SSoyuhari

店を出る頃には、すっかり日は暮れていた。両手に買い物袋を持つヤモトの顔は晴れやかだ。若者向けの街を歩き、買い物をしたのも、随分と久しぶりである。今日の戦利品に時折目を配りながら、ヤモトはそれをお披露目する瞬間を想像した。何度も心がケマリめいて弾み、自然と足取りが軽くなる。 30

2017-04-01 20:29:10
おゆはり @SSoyuhari

普通でありたい。同年代の若者と同じように振舞う事こそが、ヤモトの望みであった。今でこそ学校には通っていないが、前までは自分も平凡な高校生だったのだ。友達と一緒に遊びに行って、学業や部活動に青春を捧げる。通りを行き交う若者達は皆、当たり前のようにそう過ごしてきたのだろう。 31

2017-04-01 20:30:34
おゆはり @SSoyuhari

今日は、自分にも少しだけ“普通”ができた。最初は恥ずかしかったが、大丈夫。普通だ。これを着れば自分も普通になれるのだ。ザクロも「アラ!似合うじゃない」などと喜んでくれるかも知れない。ヤモトは「絵馴染」までの帰路を急いだ。 32

2017-04-01 20:31:19
おゆはり @SSoyuhari

その時だった。ガドゥーム!「アイエエエ!」ヤモトの前方数十メートル、大通りの上で突如火柱が上がった。人々の悲鳴が聞こえる。車の事故だろうか?いや……直感的に、ヤモトはそれが事故ではないことを悟り、その場へと走った。 33

2017-04-01 20:32:04
おゆはり @SSoyuhari

「アイエエエ!スモトリヤクザ!?」「ナンデ!?」「アイエエエエ!」逃げ惑う人々の流れに逆らい、ヤモトは炎と悲鳴の中心地にたどり着いた。そこで見たものは、横転し赤黒い炎を上げる数台の車。そして……赤いチャイナスーツに身を包み、サングラスをかけたボンズのスモトリだ。 34

2017-04-01 20:32:45
おゆはり @SSoyuhari

「あ、アイエエエ…!」スモトリが見下ろす先には、逃げ遅れたであろう若い男が尻餅をついていた。涙と鼻水を垂れ流すばかりか、恐怖のあまりわずかに失禁さえもしている。スモトリはその男を見限ると、ゆっくりと右手を振り上げた。ブッダ!陰から現れたスモトリの右手は人間のそれではない。 35

2017-04-01 20:33:57
おゆはり @SSoyuhari

巨大なドリルめいた斧だ!スモトリは、その悪魔的凶器と化した真っ黒の右手を最高高さまで振りかざす。「アイエエエ!」無軌道大学生らしき若い男は、いよいよ自分の死期を悟りしめやかに失禁!そして振り下ろされる狂気!「危ない!イヤーッ!」 36

2017-04-01 20:34:50
おゆはり @SSoyuhari

重く鈍い音を響かせ、スモトリのドリル斧がアスファルトにめり込んだ。男は……いない!ふっと右を見ると、少女が男を両手に抱え、スモトリを見上げている。一瞬の隙に男を庇い、ネギトロになるのを防いだのはヤモトだった。「……」無表情に見下ろすスモトリに、ヤモトは凛とした視線で応える。 37

2017-04-01 20:36:07
おゆはり @SSoyuhari

「ア、アイエエエエ!」若い男の情けない退散も全く意に介さず。チャイニーズヤクザを見たことは無いが、おそらくこの男はヤクザではない。ヤモトは、買い物袋とバッグを地面に置き、細長い布袋の封を開けた。するすると袋から出したのは、一振りのカタナだ。 38 pic.twitter.com/awejWnnFHN

2017-04-01 20:38:17
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おゆはり @SSoyuhari

スモトリは、ヤモトが戦闘態勢を整えるのを黙して待っている。やはりこの男はニンジャだ。カタナを全て出し終えると、ヤモトはそれを左手に携え、右手で手刀を切った。そう、彼女もニンジャだったのである。「ドーモ、はじめまして、ヤモト・コ…」オジギの最中、ヤモトの背に悪寒が走った。 39

2017-04-01 20:39:12
おゆはり @SSoyuhari

視界が妙に暗い。顔を上げると、そこには巨大な狂気を振り上げたボンズのスモトリの姿が!「……イヤーッ!」無表情で振り下ろされた斧を、ヤモトはすんでの所で横っ跳びに回転回避!次の瞬間、ヤモトの瞳は動揺と怒りの色を宿し、スモトリの横顔を見据えた。アイサツの途中だ。スゴイシツレイ! 40

2017-04-01 20:40:07
おゆはり @SSoyuhari

この男、やはりニンジャではないのか?今まで出会ったどんな卑劣なニンジャ達でさえ、アイサツだけは欠いていなかった。そう、あのソニックブームやナッツクラッカー、プロセッサーでさえもだ。アイサツ前はともかく、アイサツの途中でアンブッシュを仕掛ける奴がいるなんて。 41

2017-04-01 20:40:47
おゆはり @SSoyuhari

右手には鈍器。なら、あの長いチャイナスーツの袖に隠れた左手には何がある?それに、ニンジャでないにしろこの男の目的は何なのか?もうもうとたちこめる黒煙と炎。その只中にあってヤモトは呼吸を整え、氷のように冷静に相手を観察するよう努めた。イアイを仕掛けるのはまだ早い。 42

2017-04-01 20:42:22
おゆはり @SSoyuhari

「……GGGRRRAA」……今の音は何だ。燃え上がる車の異音ではない。男のうめき声だ。スモトリ男は道路にめり込んだドリル状の斧を戻し、ヤモトの方に向き直った。その顔を見てヤモトはぞっとした。男の口から黄色い涎が滝のように溢れ、赤いチャイナスーツの胸元を汚していたからだ。 43

2017-04-01 20:43:53
おゆはり @SSoyuhari

ZBRアドレナリンのオーバードーズか。捨て駒のヤクザ鉄砲玉か?先ほどまでオジゾウめいて黙っていた男の野獣的雄叫びがヤモトの思考を遮った。「AAAAGGRRR!」再び最上段からのドリル斧!「イヤーッ!」ヤモトは右方向に回転回避!だが今度は違う、斧はアスファルトにめり込まない! 44

2017-04-01 20:45:35
おゆはり @SSoyuhari

アスファルトの直前でピタリと止まったドリル斧は、そのまま横方向に旋回!「GRRAAAH!」ヤモトの回避動作を学習しての対策的攻撃だ!狂気を迸らせながら、何たる冷静さか!斧がヤモトの身に迫る!カブーン!「GUAAAA!?」突如、男が怯んだ。目の前で桜色の小爆発が起きたのだ。 45

2017-04-01 20:47:15
おゆはり @SSoyuhari

ヤモトはカタナ「ウバステ」を抜き放った。彼女の瞳は桜色に輝き、いつの間にかスカーフ状のメンポが鼻から下を覆っている。そして、先ほどヤモトが置いたバッグから次々に飛び出してくるのはオリガミだ。桜色の光を帯びたそれらは独りでに折り畳まれ、ツルやイーグル、飛行機を象っていく! 46

2017-04-01 20:47:59
おゆはり @SSoyuhari

これこそがヤモトのユニーク・ジツ、サクラ・エンハンスメントだ!「行け!」ヤモトが命令すると、周囲に浮かぶオリガミがミサイルめいてスモトリを襲う!「GGAAAAH!」スモトリ男は右手のドリル斧を振り回し、オリガミを叩き落とした。だが鈍重!カブーン!カブーン!「GUAAAA!」 47

2017-04-01 20:49:23
おゆはり @SSoyuhari

ヤモトのオリガミはスモトリを上回る速度で際限なく戦闘的形状に折り畳まれる!スモトリ男の迎撃が間に合わないのは自明だ!カブーン!カブーン!カブーン!「GG……GGUURRRAAAHH!」一発のダメージは軽微であると踏んだ男は、爆風の中を覚悟の前進!一気に間合いを詰めていく! 48

2017-04-01 20:50:22
おゆはり @SSoyuhari

「GGRRRAAAHH!」手足を斬られている間に頭を一発撃つといい。平安時代の哲学者、ミヤモト・マサシが書に残した戦術の体現だ!捨て身のドリル斧攻撃が爆風を切り裂き、ヤモトを襲う!……が、そこにヤモトはいない。フシギ! 49

2017-04-01 20:51:57
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