- eightmaruter
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*帰省 “ただいま〜” 『おかえり!遅かったなぁ。きみくんずっと待っとったで。』 “うん。行ってくる。” 実家の隣に住んでるきみくん。 幼い頃から兄妹みたいに育ってきた。 私が上京してから会ってないから…2年ぶり? 久しぶりに会うきみくん、変わってないかな。
2017-01-07 21:06:492 “おばさーん。こんにちは。” この扉を開けると、幼い頃の記憶が蘇る。 『あれ!久しぶりやねぇ。きみ、上におるから上がって〜』 昔から明るいおばちゃん。 ちょっと見ない間に歳とったな。 昔から変わらない、少し軋む階段をあがり、きみくんの部屋に入る。 少し緊張。
2017-01-07 21:07:143 昔だったら、物凄い勢いで入れたのになぁ。 “こんにちはぁ〜…きみくーん…?” 扉を開けると、きみくんが椅子に座って本を読んでいた。 本を静かに閉じて、上目遣いにこっちを見る。 「久しぶりやな。」 “ひ、久しぶり。” 2年ぶりに見るきみくんは、大人の男になってた。
2017-01-07 21:07:194 タートルネックのニットに、丸めがね。 目に少しかかった黒髪。 2年前はこんなに近寄りがたくなかった。 “きみくん、少し痩せた?” 「少しやない。めっちゃ痩せた。笑」 フッと口角をあげて笑う。 その笑顔は変わらないのに、なんだか遠くに行ってしまった気がして切ない。
2017-01-07 21:10:245 「仕事、上手くいってるん?」 “まぁ、ぼちぼち。” 「そっか。」 いつも通り私はベッドの下に座って、きみくんは椅子に座って。 同じ立ち位置なのに、会話が弾まない。 やばい、私、意識してる? ドキドキしながら部屋を見回すと、一枚の写真が目に入った。
2017-01-07 21:15:566 女の人と写ってる。 笑顔の女性と、少し照れた表情のきみくん。 そっか…彼女出来たんだ。 もう良い歳だもん、彼女くらい出来るよね。 なんか、胸の奥が痛い。 ただの幼馴染なのに。 「どうしたん?」 “あ、ううん。そう言えばさ、きみくん彼女出来たの?”
2017-01-07 21:19:037 「…内緒。」 “教えてよ。” 「そう言うお前はどうなん?彼氏なんかおらんやろ?」 いつもみたいにからかって言うきみくん。 その時なんだか、子ども扱いされてる気がして悔しかった。 私だって大人になったんだから。 きみくんきみくんって言ってた私はもういないんだから。
2017-01-07 21:23:088 “…いる。” 「え?」 “彼氏、出来た。” 強がって、嘘をつく。 「…へ〜。そうなんや。」 きみくんは、良かったなぁと笑いながら、私の頭を撫でた。 “子ども扱いしないでよね。もう…大人なんだから。” 「あ、すまん…」 嫌な言い方する自分がバカみたい。
2017-01-07 21:27:409 “あの人… 彼女でしょ?” 写真の女性を指差した。 「あぁ〜、あれは元カノや。」 “じゃあなんで写真…” 「置き場所無くて、そのまんまにしとった。」 元カノなんだ… 自分の肩の力が抜けてくのがわかった。 ただの幼馴染なのに、何でこんな感情になるの…?
2017-01-08 05:48:0010 “ふ〜ん。” 「告白されて付き合ったんやけど、俺が無理んなって…」 “なんで?” 「忘れられへん人がいたみたいやわ。自分でも気付かんとこで。」 そう言って、すっとこっちを見るきみくん。 そんな大切な人って、どんな人なのかな…?
2017-01-08 05:48:2811 「…… でも、今日失恋した。」 “え、今日?” 「彼氏がおったみたいやわ。」 そしてきみくんは一呼吸置いてから、私の目を見つめて言った。 「お前や。」 言葉が胸に突き刺さって、驚きで声も出なかった。 わたし…?
2017-01-08 05:49:1512 「2年間、離れてみて気付いた。 俺、お前がおらんとアカンみたいやわ。」 そう言われた時、きみくんが今まで見てきたお兄ちゃんのような姿ではなく、一人の大人な男性として見えて、胸の高鳴りが抑えられなかった。 こんな気持ち初めてで、どうしたらいいのか分からない。
2017-01-08 05:49:3713 “わ、私…ちょっと家かえる!” 動揺を隠せず、家に逃げようと席を立った私の腕を、きみくんが力強く掴んだ。 グッ 「逃げんな。 俺の一世一代の告白やぞ。」 きみくんを見上げると、手の甲で口元を隠してはいても、耳まで真っ赤で照れているのがよく分かった。
2017-01-08 05:50:2414 なんか… “……かわいい。” 「は?」 思っている言葉がポロっと出てしまった。 “きみくんを初めて可愛いと思った。” 「…なんやそれ。」 “さっきの嘘。” そう言うが早いか、私はきみくんの事を抱きしめていた。 「//// !」 “彼氏なんて嘘だよ?”
2017-01-08 05:52:2015 「お前、わけ分からんわ…///」 “そんな事言われたら、私もきみくんの事好きになっちゃいそう。” 「…お前、こんな事簡単に出来るようになったんか?」 “出来るよ。大人だもん。” そう言って、抱きしめる手にギュッと力を込めた。
2017-01-08 05:53:3416 すると、きみくんも私に手を回してギュッと抱きしめた。 「いきなりの展開やな。」 “おばさんもビックリだね。” 「“………”」 そして顔を見合わせて、ふふっと笑った。 これからは、帰省するのがすごく楽しみになりそうです。 END
2017-01-08 05:54:24