ストレイトロード:ルート140(26周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、短編という名の習作。 今回は1251~1300+おまけ。 終盤のリクエストコーナー以外は基本的に「天気にまつわる言葉」しばりの編成です。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「本当に道順合ってる?」先月と同じ道を走っているはずなのに、藍が何度も尋ねてくる。私は地図を確認する為、見覚えある橋の前で車を止めた。「ほら見て、川がない」橋の下にあるのは乾いた道と細い水流だった。水位の低下を知ってから上流を見ると、水源を抱く山もまた活力を失っているようだった。

2017-03-06 20:34:19
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1263。水位。 増えても困るけれど。

2017-03-06 20:34:25
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

先頭を歩く藍が足を止めると、風が急速に弱まった。突然辺りを包んだ静穏を異変として察知したのか、怪物もそれを囲む野犬達も睨み合いを中断し警戒の姿勢を取った。私の後ろに控える男だけが全く気づかない。「止まった。撃つなら今」咄嗟に身を屈めた私の背を何かが蹴った。獣の吐息が静穏を乱した。

2017-03-07 19:54:20
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1264。静穏。 風がない状態を指す言葉でもある。

2017-03-07 19:54:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

早朝を迎えても私は寝つけなかった。今夜は起きていると意気込んでいた藍は夜が深いうちに眠ってしまい、今は私の腕を抱き枕代わりにして落ち着いている。車を止めた路地にも目の前のホテルにも人の出入りはない。噂は噂。藍が脱落した時点で張り込みを諦めても良かったのに、何故か目を離せなかった。

2017-03-08 19:27:02
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1265。早朝。 ここまで来たら、の心境。

2017-03-08 19:27:08
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍の能力は言い方を変えれば感情に左右される。あらゆる風を呼び込めるはずだが、暖気を作り出すことは攻撃的な突風より難しいらしい。彼女の気性を考えると納得できる話だ。「でも本当はできるはずなんでしょ?理論とかあるなら教えてよ、春の暖かい風」本人は不得手の存在を気にしているようだった。

2017-03-09 19:05:34
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1266。暖気。 下手に呼ぶと暖かいを通り越すのかもしれない。

2017-03-09 19:05:41
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

山に囲まれた地形は敵の侵攻を阻み、集落に安定した天候と自然の恵みをもたらした。だが人間だけが争う時代は過ぎ、四方の山で激化する怪物達の縄張り争いが要塞を天然の檻に変えた。「ここは狭いから突撃されないかも」「でも険しい道よ」細い指が模型をなぞる。藍は住民達の脱出法を共に探している。

2017-03-10 19:33:22
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1267。地形。 長所はある日突然弱点に変わる。

2017-03-10 19:33:29
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

震える藍を雨具に包み、村で唯一明るい建物へ駆け込んだ私を、人々は温かく迎えた。だが藍の正体を知るや親切が止まった。「頼む、何とかしてくれ」熱を帯びた小さな手に幾つもの手がすがりついた。これ以上雨の日が続くと上流域のダムが壊れ、村にも被害が及ぶという。回復を待つ猶予はあるだろうか。

2017-03-11 18:56:19
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1268。続く。 水害を止める人手も資材もきっと足りない。

2017-03-11 18:56:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

後頭部に鈍い衝撃と痛みを感じた時には、両足に力が入らなくなっていた。床に倒れた私の目の前に藍のブーツがある。「今、何をしたの」冷たい声が私の背中を飛び越えていく。「答えられるでしょ?大人なんだから」突風が窓という窓を激しく叩いた。間違いない。この瞬間、低気圧の中心地がここにある。

2017-03-12 19:05:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1269。低気圧。 顔を見なくても感情が見える瞬間。

2017-03-12 19:06:04
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

数日前の土砂崩れで通行止めになった道路が復旧したと聞いた。「これで山の向こうへ行けますね」当初その道を走るよう指示していた藍に報告したが、意外にも彼女は興味を示さなかった。「他にも方法あるでしょ。探して」私達が回り道をして目的地に着いた頃、同じ場所を再び土砂が埋めていたと知った。

2017-03-13 19:03:16
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1270。土砂。 応急措置の先まで見ていたのか?

2017-03-13 19:03:22
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

好天に恵まれた砂浜に人が溢れている。水着に着替える藍を車外で待っていると、通りかかった若者達が私を見て、笑いながら去った。「今あなたバカにされたって分かってる?」藍が窓から顔を出した。目は合ったが会話は聞いていないと答えると呆れられた。「あの波に乗れたら少しは格好良く見えるかな」

2017-03-14 18:58:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1271。波。 届かない方が幸せなときもある。

2017-03-14 18:58:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

俄雨が人々の足を急がせる。一組のカップルが喫茶店の軒先に駆け込み、雲間から覗く青空を揃って見上げている。「ああいうのもいいと思わない?」藍の緩んだ顔に彼らが気づくことはない。私達は対向車線に停めた車の中から二人の様子を見ている。「狙って降らせることができたら、いろいろ使えそうね」

2017-03-15 18:59:38
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1272。俄雨。 演出に欲しい。

2017-03-15 18:59:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「わたし言ったよね」寒気を感じて口を噤む。藍が一言話すたび、上空に寒気が流れ込んでいるのだろう。「あなた返事してたよね」肌を刺す冷たい空気から身を守りたくても、私には上着を探す僅かな時間さえ与えられなかった。「どうして手ぶらで帰ってきたの?」彼女は弁明に耳を傾けてくれるだろうか。

2017-03-16 21:10:16
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1273。寒気。 今回は二つの読み方を活用する練習。

2017-03-16 21:10:21
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

麓の村は色とりどりの花に包まれていたが、山を越える道の両脇にはまだ根雪が残っていた。車は春の息吹を連れて走る。「そう、春だから」藍は助手席で何かの歌を口ずさんでいる。多少調子外れでも私は反応しない。腹を立てた拍子に村での出来事を思い出したら、怒りの力で辺りが雪景色に戻りかねない。

2017-03-17 20:14:37
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1274。根雪。 記憶が埋もれるのが先か、冬が溶けるのが先か。

2017-03-17 20:14:43
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

今日の天気は晴れのち曇りとラジオは言う。昨日の新聞は終日雨だろうと述べていた。「どっちでもないんだけど」藍が窓辺で頬杖をついている。薄い雲に覆われた空を眺める彼女に、私は暇潰しの話題を提案してみた。「この雲の後にどんな天気が来るのか、予想してみましょうか」「あなたと対決するの?」

2017-03-18 18:58:50
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