ストレイトロード:ルート140(26周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、短編という名の習作。 今回は1251~1300+おまけ。 終盤のリクエストコーナー以外は基本的に「天気にまつわる言葉」しばりの編成です。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1275。のち。 調べる手段も情報の精度も違う証言に踊らされるようでは。

2017-03-18 18:58:56
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

変装した藍が潜り込んだのは謎の飛行生物の研究者が集う学会だった。彼女が迷ったふりをして入った部屋を覗くと、見知った顔が登壇していた。以前から藍の能力を調べている担当者だ。「発表、始めます」題名を読み上げる声が震えている。狭い会議室に怪物はいないが、獲物を探す無数の目が輝いていた。

2017-03-19 19:07:28
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1276。発表。 研究テーマと人員がある限り、どこでもありそうな光景。 ちなみにこの登壇者は今度出す短編集に出演予定。

2017-03-19 19:08:13
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

砂浜の端に集められた子供達が思い思いに海の絵を描いていた。成り行きで加わった藍は題材を決められず唸っている。その隣のキャンバスを見ると、海上を流れる羊雲が見事に描かれていた。「負けていられないよ」少年が言う。隣から藍に睨まれても動じず、遠い空を指した。「雨が来る前に仕上げないと」

2017-03-20 18:59:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1277。羊雲。 雨の前触れと言われる理由までは藍ちゃんに覚えてもらいたいところ。

2017-03-20 18:59:42
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

資源を巡る町同士の対立は既に戦争と大差ない状況に発展していた。争いに巻き込まれて腹を立てた藍は、砂塵を集めて戦線に嵐を投げ込み、一人の怪我人も出さず隣の町の侵攻を阻止した。だが安堵も束の間、今度は私達の背後から悲鳴が上がった。敵の退散を喜ぶ人々に吹き返しの風が襲いかかったらしい。

2017-03-21 19:41:43
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1278。吹き返し。 元は台風の目が過ぎ去った後に吹く逆方向の風のこと。

2017-03-21 19:41:50
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍が試験の答案を通信で学校に送ったのは先週末。次の街へ移動する間に採点され、今日結果と成績表が届いた。私は答案だけを藍に渡し、平均を自力で計算させた。「わざわざやらなくても、メールに書いてあるんでしょ?」「先生の指示なので」実用性のない勉強は嫌と言った生徒に追加された設問だった。

2017-03-22 18:56:33
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1279。平均。 その知識を使わないで生きる人々もいる。 でも、問題を避けるばかりの生き方へ自ら進んでしまうのは、もったいない。

2017-03-22 18:56:41
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

長い行列が建物の外周を囲っていた。有名な篤志家の講演会があるとしか聞いていない私達は、係員の叫びに耳を疑った。「通路も舞台袖も埋まりました!中には入れません!」既に飽和状態にある会場になおも人々が詰めかけているのだ。「まさか物で釣ったの?」人の隙間に何を見たのか、藍は呆れている。

2017-03-23 19:30:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1280。飽和。 主催者側は何をやったのか…?

2017-03-23 19:30:39
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

村の青年が藍に懇願する。「お願いします。これ以上雨が降らないと生きていけない」窓の外に広がる畑は乾き荒れ果てていた。まとまった雨が必要なことは明らかなのに、藍は悩む仕草ばかりで返答をしなかった。「雨を降らせるなって昨日別の人に言われたの。怪しい」青年が帰った後に藍の呟きを聞いた。

2017-03-24 20:24:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1281。まとまる。 まとまらない理由は表面からは見えない。 なお「まとまった雨」で気象用語。

2017-03-24 20:25:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍は私の背中にしがみついて動かない。私は少女をレインコートの内側に隠し、人も怪物も去った戦場を歩いている。未明の街を包む土砂降りの雨が、一人分の足音と無数の不穏な気配を隠していた。首筋に感じる寝息だけが暖かい。疲れきった魔女は能力を発揮できないから、この天気はしばらく続きそうだ。

2017-03-25 18:51:25
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1282。未明。 何かの終わりと始まり。

2017-03-25 18:51:34
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

南国で捕獲されたクリーチャーを見せると言われ、研究所の中でも特殊な施設を案内された。「蒸し暑い環境が好きって、こういうこと…?」室内ばかりか建物全体で異国の夏が再現されていた。少し進んだだけで藍の目が虚ろになっている。「空調の故障ですか?」「いえ、冷えた人間がいると襲われるので」

2017-03-26 19:33:23
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1283。蒸し暑い。 再現は簡単じゃない。

2017-03-26 19:33:30
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

式典に乱入した怪物の足にロープが絡まり、装飾や国旗をぶら下げたまま市中へ逃げた。私達は迷走する翼を追って会場を飛び出した。「左に曲がって。先回りできそう」左右の窓を開け放った車内には絶えず風が吹き荒れ、舞い込む土埃やゴミに幾度も視界を奪われかけた。藍が叫ぶ。「まっすぐ走ってよ!」

2017-03-27 19:03:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1284。迷走。 大騒ぎのひと幕。

2017-03-27 19:03:12
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

黄金の巨像は怪物の爪痕を背負ってなお悠然と立っていた。懐かしい、という呟きを拾った藍が私を見上げた。「好きなの?」「昔ここで仕事をしたことがありまして」何年も前の夏、私は巨像の肩へ登って黄金に塗装した。猛暑と塗料の反射、粗末な足場。死の気配に囲まれた記憶を蘇らせた直後に後悔した。

2017-03-28 19:09:06
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1285。猛暑。 人の手でやっていた理由にもまた死の気配が。

2017-03-28 19:09:13
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

宿を発つ直前、従業員に呼び止められた。「あの山の方行くって本当?やめた方がいい」小規模な山崩れが先週起きて道路を塞いだという。私は目的地までの計画を念頭に迂回路を尋ねようとしたが、藍に割り込まれた。「最近雨降ってないのにどうして?」「さあ?」従業員も噂程度の話しか知らないらしい。

2017-03-29 19:04:23
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1286。山崩れ。 遠くの事故について深い情報はそんなに必要ない。関係者でもなければ。

2017-03-29 19:04:30
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍が目を丸くした。彼女が指差す礼拝堂の高い鐘楼は、この時代には珍しく原形を留めていた。以前に融雪用の設備を利用して怪物を撃退したらしい。「まさか夏に使うことになるとは誰も思わなかった」当時を知る老人が笑う。「ただ問題があってね」「問題?」「その時壊れたんだ。直そうにも部品がない」

2017-03-30 19:37:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1287。融雪。 大雪と怪物、どっちが再来しても困る。

2017-03-30 19:37:38