「この世界の片隅に」美術監督の林孝輔さんイベント「アニメーション美術監督の仕事」レポート

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

美監、林孝輔さんイベント「アニメーション美術監督の仕事」レポ ①呉美でやってたこうのさんの展示に行った人なら見たであろう、ビデオを見ながら美監ご本人による解説。「原図」と呼ばれる浦谷さんの描いた絵を基にトレーシングペーパーを使って、鉛筆で再度なぞって行く。（やらんこともある）

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

②整理した原図を画用紙にコピーし「地塗り」を行う。まず裏表をハケを使って水で濡らし、遠景から近景へ色を塗っていく。背景師によって「左上から」「大きいパーツから」「淡い色から」といったタイプがいるらしい。塗り色も２色くらい、ほぼ完成レベル、全体薄っすら塗るタイプが居る。

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

③仕上げ。細部を塗っていくが、リズム感を大切にして描き込み過ぎないよう気をつける。下手に描き込みすると「絵が死ぬ」ので、常に「どういうタッチで描けば絵が輝くか」を考えつつ描いて行くように心掛けている。背景絵は2-3秒しか使われないのでパっと見勝負。

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

④背景はアイコン的な役割を持つこともあるが、鬼の考証男のせいで、省略して良いかどうか事実との見比べが大変。また、写真を参考にし過ぎるとそれはアニメの背景ではなくなって（ただの写真になって）しまう。絵が完成したら、スクリーンの形の枠を絵の上に乗せてチェックする。

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

⑤完成した絵をスキャンしてデジタルデータにする。吸い上げたときに紛れるホコリを消し、コントラストの微調整を 行うが、あくまでも最小限に留める。（以下、MAPPA第２スタジオでの作業風景）

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

⑥ここからは林さんのフリートーク。「ふだんは裏方で表に出ないので、今回このような場を設けて貰って嬉しいが『公開裁判』でもされている気分」 「さっきの動画で『すずさん（映画の一番最後に流れる曲）』が流れていたが、実際に作業中も聞きながら作業していた」

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

⑦「原図を浦谷さんがかなり細かく描き込んでいてくれたので大いに助かった」「今ではデジタル描画が増えてきてはいるが、僕（林さん）はアナログのほうが好き。手描きの方が絵に味が出るし、こうのさんの絵には手描きが合うと思う」

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

⑧色の塗り方は十人十色。「僕はニッカーのポスカ36色セットのビンの奴を使ってる。これなら蓋を開けっぱで使えるので、チューブタイプより良い」「色塗りペースはこれ（灰ヶ峰からの鳥瞰図シーン881）で3日程。普通のシーンで1日1枚。週イチアニメ背景だと日に3-4枚描く。」

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

⑨「産業奨励館は本編中7回ほど出て来るが、今もある建物なので、自然と気合いが入った。」「今までに『バケモノの子』『思い出のマーニー』『ジョバンニの島』『がんばれルルロロ』など手掛けたが、作品が背景の雰囲気や質を決める。柔軟な対応が必要」

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

⑩「今後はCGが主流となってきて、背景を描く仕事は無くなるかもしれない」「作品ごとに絵柄変わるのは楽しい、固定観念に囚われずミーハーに（色んな絵柄を好きに）なることも大切」「背景師は芸術家と商売人半々のバランスが必要（納期や予算がある）」

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

⑪「昔の画家もパトロンなどに納期を切られて描いていたと思う。言ってみれば自分たちの前身となる立場」「時間と価値のバランス、相反する矛盾と戦いながら仕事をしている」「時間さえあればいつまでも描き込めるが、筆を置かないと迷宮入りするので、『ここだ』というポイントで筆を止める」

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

⑫「上手い人ほど筆数が少ない」「背景師は『個性が消えやすい仕事』だが、一つのチームでやっていると、それでも『これは誰の描いた絵』と消したはずの個性が滲み出ることがある」

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

⑬#この世界の片隅に について。「背景は1250カットを焼く40人で描いた。雰囲気が思ったのと違う時は描き直して貰ったり自分が少し手を加えたりした」「押し付けすぎて個性が消え過ぎるのを危惧することもあった」「とにかく原作イメージを大事に、ラフ提示したりディスカッションを行った」

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

⑭「多くの視聴者が喜ぶ絵を『個性を消さずに描く』のが大事」「（今までと矛盾してることは感じてる）ただ結局は受け手がどう感じるかが50％」

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

⑮美術監督兼背景師の仕事の流れ。『美術設定（線画）』キャラの内面、生活環境など「物語の背景」を作り込む。『美術ボード』上記に色を。『BG（背景）』絵コンテを基に背景作成、それに動くキャラを乗せて撮影。音響を編集で動画にくっつけて完成。

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

⑯「今は前出の『撮影』の時にデジタルで微調整出来るので、せっかく描き込んだ色を飛ばされたりして台無しになることも」「人によって人工物や植物など描く絵の得手不得手がある。それを考慮して仕事を割り振るのも美監の仕事」「呉の瓦礫の背景は武重さん。自身が経験した震災地のイメージ」

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

⑰「産業奨励館は我々世代でも『分からないなりに』描いていかないと駄目」「繰り返しになるが、映画は予算と〆切がある。本音は良いものを不休で作りたいが、それはビジネスモデルとしてNG。絵描き以外のことをしたり勉強するのも大事」

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

⑱「背景師には向き不向きがある。なるべく多数に支持されるものが必要。ニッチな人気となるものは背景としてはNG」

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

⑲林さん自身について。「大学で日本画専攻、絵の仕事がしたいが芸術家肌ではない。元々風景が好きで、綺麗なものを描きたい」「奥さんは建築家。二人で旅行すると自分は景色、奥さんは建築物しか写真撮らず『誰と旅行に行ったの？』と」（会場爆笑）

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

⑳「#この世界の片隅に の美監になったキッカケは町中で見た「制作準備中」のポスター。MAPPAにメールで「背景描かせて」と送った。まだその頃はCFで資金募ってる段階。気がついたら美術監督やることに…」（会場笑い）

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

㉑#片渕監督 について。「まろやかに言って、クレイジー。学者気質でなんでも調べまくる。『その背景の天気、温度、湿度、どの程度の視界か』等の情報を与えられる。学会用の論文資料作りを手伝ってる気分」「原作に対して嫌味にならない描き込みのバランスを求められた」

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

㉒最後に。「写真のようでは一歩引いて見られるようになるので、作り込みすぎない。『未完成だからこそ、一歩前に寄って見て貰える』ようになる」「戦争してても綺麗なものは綺麗め美味しいものは美味しい、笑ってる人たちは笑って生活してる」（林さんはなぜか「すず」「晴美さん」と呼んでた）

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

㉓質疑応答。１#片渕監督 について。指示で困ったことは？「すずたちが干潟を歩くシーン。コンテは金色に光る砂浜だけ（会場笑い）今は見ることの出来ない景色なので、ソウゾウデ描いていくしかないが、何度かリテイクした」２テクニックについて。「アニメは全部虚構。リアル過ぎないことがリアル」

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

㉔質疑応答２。背景の画角について。「広角気味になったりなどは全て浦谷さんのセンス。実写だと狂ってるが、アニメでは上手く嘘をついて受け手に補完して貰うことが出来る」

鈴木えら🐗さらにいくつもの映画・アニメ・漫画垢 @eraabu

㉕質疑応答３。林さんについて。「父は絵が好きだったがから自分はサッカー選手になりたかったがダメだったので筑波大へ。石膏画など書道科の子にすら負けて学年でビリ２の実力だったが、それ故上達していく過程が楽しかった」