140ssログ４月

やまたに@極めのネタばれをします @mw_snc

お前は名前を気にするけど、僕はどうでもいいなぁ。兄はそう言ったので。膝丸は今日この日にそれを口にした。逆襲よりも少し容赦がなかったのは、彼の言うとおり価値観の違いがあると思ったからで。君は誰だ。俺に兄などいないぞ。その衝撃を受けた顔に、ざまあみろと始めは思ったのだ。(髭膝)

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本当の嘘つきは、11時59分ぎりぎりに。ねぇ、石切丸。なにげなさを装って。今日、なんの日か知ってるかい。ええと、確かえいぷりるふうる、だったかな。君が考える間に、秒針は一周する。僕は、君が好きだよ。え、と泣きそうな顔に、午後の種明かしを。(石かり)

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閉じ込めてやりたい。抱き締められる。お前を誰にも見せたくない。主張する腕の力は強く。俺だけのものにしたい。痛い、という言葉を宗三は飲み込んだ。あと、数時間のことだ。そうすれば彼は笑って見せて、全部嘘だと言うのだから。それこそ嘘って知っていますけれど。(薬宗)

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お姫さん、冗談めかしてそう呼んだ。返事の代わりは冷たい視線。怒った顔も美人だなぁ、ととぼけると溜息。あとはその内、根負けして。では、散歩の護衛をお願いしますよ。差し伸べた手を取るのは自分だけの特権だ。（薬宗）

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薬研、猫撫で声で呼んでみた。微妙な顔でなんだと聞くから、おかしくて。何も言わずに手を伸ばして、頭を撫でる。そのまま耳、頬、喉を擽って。なんの用だ、下がった目尻でもう一度。なあに、構って欲しいだけですよ。（薬宗）

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青江、すっかり舌に慣れた名前を呼ぶ。君は長い髪を揺らして、以前よりずっと柔らかな顔で微笑んだ。君は変わったね、そう言うと、おや、と。君だって変わったよ。そう、なら、お互いのせいにしようか。（石かり）

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石切丸、呟いた。振り向いて欲しいなぁ。振り向かないで欲しいなぁ。あべこべの願いは神様のお好みで。どうしたんだい、青江。いつだって神様は振り向いてくれるけど。（石かり）

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みえているものは、魔か妖か。その赤い瞳に石切丸は思う。悪しき色だと思われてなければいいなぁ、じっと己が 瞳を見つめる男に青江は思う。何が見える。石切丸が問えば。君を見てるよ。青江も答えて。ああ、私も同じだね。赤い瞳に、赤くなった男が写って、青江もまた頬を染めた。(石かり)

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ほら、と腕の中に入れられた。僕は大人だから、大きいから、大脇差だもの。繰り返して怪我を強がった結果が、それで。私からすれば、こんなに小さいよ。子供だよ。私は大きいからね。侮辱ともとれる言葉を彼は優しい声で言う。だから、傷が痛いと涙が出たのは悔しいせいだ。(石かり)

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とっくの昔だ。石切丸は言葉を飲み込んだ。ねえ、君はいつになったら僕に興味を持ってくれるのかな。さも今は違うと言いたげだから、いけない。すでに沈むほど溺れているなんて、君は気付かないのか。水底に張り付くように動けないなんて、君は。ねぇ、愛が重くて君を引きずり込んでしまう。(石かり)

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せつない、という字が君には入っているね。そんなことを悪戯をばらすように青江は言う。切なくて苦しいなんてこと、君にはあるのかな。不思議そうに、問いかける。そりゃあ、私にだってあるよ。石切丸は頷いた。意外と柔らかな頬を両側から引っ張って。君が愛し過ぎるせいでね。(石かり)