滝川一廣著「子どもための精神医学」を読む

滝川一廣「子どもための精神医学」を読みながら感じたことを書きました。 発達障害界隈で名著との評判が高い本書。子どもの発達と障害をわかりやすく解説していますが、同時にいくつかの重要な問題提起も孕んでいると感じました。 特に赤字強調した部分、みなさんはどう思われますか。 http://amzn.asia/1RFDoZ3
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松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

滝川一廣「子どもための精神医学」、発達を認識能力と関係性の掛け合わせで見ていく。前者をピアジェ、後者をフロイトに担わせて両者をくっつけて説明していくというコンセプト自体は相当ぶっ飛んでると思うんだが、そう思わせないくらいすんなりまとめているのがすごい。

2017-05-05 20:31:28
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

私の講義を聞いた人で「ピアジェについてもっと学べる入門書はありませんか?」と聞かれることがあるが、今度からはこの本をおすすめする。入門書というにはざっくりしているけど、理論を位置付けをしっかりするのによい。 amazon.co.jp/dp/426003037X/…

2017-05-05 20:38:49
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

ただ本書のピアジェが「関係の発達が認識の発達を促し支えている視点に欠けていた」という指摘は当たらないと思う。「知能の誕生」に代表される乳幼児期の研究を見るとそういう印象になるのだが、そのもっと前の「児童道徳判断の発達」などは一章丸々ゲームを通じた子どもの関係性の分析になっている。

2017-05-05 21:05:04
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

そこでは、子どものルールの認識が自己中心的、神話的なものから徐々に脱中心化され、子ども同士の話し合いで決まる相対的なものという認識に変わってくるという指摘がなされている。こういうのを読むとピアジェに関係の発達の視点がかけていたとは思えない。

2017-05-05 21:06:26
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

ピアジェの考え方にもし「偏り」があるのだとしたらその自然発生的な発達観にあるのであって、この点は天才ヴィゴツキーがその主著「思考と言語」の中で多分心理学史上最高に綺麗な批判を展開しているところだ。

2017-05-05 21:09:30
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

ただ、ピアジェは一生涯にわたってとんでもなく大量の仕事をしており、その全貌をつかもうとすると専門の学者が一生かけても終わらない。ピアジェについて語るにしても、結局、大きな山をどの方向からどれだけ登ったか、という話になってしまう。

2017-05-05 21:12:58
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

あと、滝川先生も「ピアジェ理論の数式うんぬんのところは難しい」って書いていらして、「ですよねー」って安心した。入門書のレベルでこんな感じだからね。 pic.twitter.com/FUgsJ8xc5m

2017-05-05 21:32:57
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松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

先のページは、中学生以上で発達する「形式的操作期」の説明で、その意味では、私達が日常的に行っている思考を数式で表現したものなのだが、思考の性質を16個の組み合わせからなるINRC群という数学的概念で定義しており、正直チンプンカンプンだ。

2017-05-05 21:37:18
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

この本は重大な問題提起を孕む。たとえば、「定形発達と発達障害との間で発達の<構造>に違いはない。どちらも同じ道筋を歩んでいく。ただ、発達障害のほうがその足取りがゆっくりで、社会のマジョリティが達している平均的な発達水準に届かないという相対差があるにすぎない」(p99)という記述。

2017-05-05 21:44:52
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

私も発達の道筋は1つだと思うし、そう思うからこそ発達を促す「療育」をやっているのだけど、そうは思っていない人のほうが多いんじゃないですか。たとえば、ASDには定型発達にはないASDならではの「独自の発達の道筋」があると思っている人はすごく多いと思うのですが。

2017-05-05 21:46:56
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

そういう意味でも、最初に述べたようにピアジェとフロイトくっつけてる点でも、「子どものための精神医学」は「基本を丁寧に説明」みたいなフリして、実は相当ぶっとんだ、ラディカルな理論を展開してるんですよ。そして繰り返しますが、それがそのとおりの説明になってるところが素晴らしいんです。

2017-05-05 21:51:28
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

先の「発達の道筋は1つであり、定形発達と発達障害の違いは相対的な差に過ぎない」という話ですが、だとしたら発達障害のある人の突出した能力は何なのかがわからなくなります。そこを補う概念がピアジェもフロイトも言ってない「補償」だと思ってます。これを言ったのはアドラー。

2017-05-05 21:56:36
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

苦手な分野を克服しようと無茶苦茶努力した結果突出した才能になるという過程をアドラーは「超補償」と呼んだ。たとえば、ベートベンが名作曲家になったのは耳が聞こえなくなったからだとまで言っています。ちょっと鵜呑みにはできないですけど、才能が後天的に発達したもの、という視点はおもしろい。

2017-05-05 21:59:46
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

しかしこう考えていくと広いじゃないですか。人間の発達というのは。発達障害なんていう狭い概念だけ掘ってたってダメだと思いますよ。 そうそう、「子どものための精神医学」でもう一つ共感したのは、DSMに代表される診断基準は医師同士の決め事に過ぎないという視点が強調されていることです。

2017-05-05 22:12:20
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

子どものための精神医学、よみながらツイートしてるんですが、発達に常に一定の個体差があるので、その意味で発達障害は脳障害じゃない、身体が健康ならみんな平均身長になるわけではないのと同じ、と。やっぱりこの本相当攻めてる。自閉症マウスの研究あたりと真っ向ぶつかりますね。

2017-05-05 23:17:58
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

あーそこから障害は個性、という話につながっていくのか。すごいなー。

2017-05-05 23:20:31