教えるより、意欲を育むこと

凡庸な人間でも子どもを立派な大人に育てるには、教えるよりも意欲を育むことを重視した方がよいようだ。
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shinshinohara @ShinShinohara

私は長い間「教える」ことに悩んできた。優秀な人間を育てるには自分が優秀な人間でないといけないのか?自分自身を優秀にできないで、子どもを優秀にすることはできないのか?「トンビがタカを生む」「出藍」「名選手必ずしも名監督ならず」というけれど、自分が優れていなくても人を育てられるのか?

2017-05-09 17:19:34
shinshinohara @ShinShinohara

しかしどうやら、「自分が優秀である」ことと「人を育てるのがうまい」こととは、全然違うらしい。優秀な人が優れた指導者になるとは限らず、凡庸な人でもビックリするほど育てるのがうまい人がいる。いったいなぜそんなことが起きるのか?願わくば育てるのがうまくなりたかった。

2017-05-09 17:23:00
shinshinohara @ShinShinohara

最初はテクニックを教えようとした。私が知りうるものすべてを伝えれば、私より優れた人間になるだろうと。しかしすぐに困難だと分かった。当たり前だが私の脳と相手の脳には何の連絡もない。言葉を通じてしか。言葉だといくらも伝わらない。相手がやる気なければなおさら。

2017-05-09 17:27:38
shinshinohara @ShinShinohara

ある意味興味深いことに、教えようとするほど子どもは覚えなかった。「この人にまた聞けばいいや」と外部記憶扱いするように、人間の心理はできているらしい。だから「すごく分かりやすい説明!よく分かった!」と感動してくれた翌日、「あれ、なんだっけ?もう一度教えて?」となる。

2017-05-09 17:29:39
shinshinohara @ShinShinohara

そこで私は教えることをやめた。その代わりに「意欲」を重視するようにした。諦めずに取り組めば、いずれできるようになる。できるようになればうれしい。その頑張りを「よくやったな」と認めれば、ますます諦めずに取り組むようになる。テクニックは自分で勝手に身に付けるようになる。

2017-05-09 17:33:08
shinshinohara @ShinShinohara

諦めずに取り組めば「できない」が「できる」に変わる。「やれるようになったな。よく頑張った」と認められたら、ますます意欲的に、諦めないで取り組むようになる。取り組めば取り組むほど意欲が湧いてくる手助けに徹するようにした。すると子どもは勝手に育った。

2017-05-09 17:35:23
shinshinohara @ShinShinohara

私に言われてやるのではなく、子どもが主体的に取り組むこと。諦めよう、挫けそうになるのを「大丈夫、きっと君ならできる。諦めずに取り組んでごらん」と、そばで見守りながら励ます。ついにやり遂げたとき「やったな!」とハイタッチすると子どもは諦めなかったことに誇りをもつ。

2017-05-09 17:39:13
shinshinohara @ShinShinohara

私が心がけるのは、その子のレベルを把握し、少し頑張らないとできない課題、しかし頑張ればできる程度の課題を用意すること、そばで見守ること、挫けそうなとき、諦めそうなとき、「大丈夫、きっとできる」と励ますこと、克服したら一緒に喜ぶこと。それだけだとも言える。

2017-05-09 17:41:52
shinshinohara @ShinShinohara

「赤毛のアン」に登場するマシューは、私には理想の親の形に思える。マシューは「そうさのう」以外の言葉を滅多に発さない好好爺。アンが嬉しそうなら心から喜び、アンが悲しそうならオロオロと心配し、ひたすらアンの幸福を祈る。こんな人にたった一人だけでも出会えたら、その人は幸福だ。

2017-05-09 17:46:30
shinshinohara @ShinShinohara

アンは決してマシューを悲しませるようなことはしたくないだろう。「こんなことをしたらマシューが悲しむだろう」と思ったら、胸がかきむしられるような思いがするだろう。子どもの幸福をどこまでも祈ってくれる人がいたら、どんな困難にも立ち向かい、克服する力となるだろう。

2017-05-09 17:49:44
shinshinohara @ShinShinohara

子どもは非常に敏感だ。「あなたのためを思って言ってるのよ」という言葉に、利己的な見栄が隠れていることを鋭敏に嗅ぎ取る。子どもをコントロールしようという意図を持つことは、しばしば子どもに「親の支配欲」を嗅ぎ取り、反発と嫌悪感を呼び起こし、何より意欲を奪う。

2017-05-09 17:54:02
shinshinohara @ShinShinohara

マシューはアンをコントロールしようということをハナから考えていない。アン自身の力で難局を切り抜けてもらうしかないと思っている。そしてどうか切り抜けてほしいと祈る。その祈りがアンにひしひしと伝わる。「諦めちゃいけない、マシューを悲しませてはいけない」という強い念になる。

2017-05-09 17:57:42
shinshinohara @ShinShinohara

トンビがタカを生む、青は藍より出でて藍より青し(出籃)。これを実現するには、マシューと同様、その子の幸せを心から祈ること。そしてその子自身の力で切り抜けるしかない、それを見守るしかないことを観念すること。その二つが、どんな困難にもくじけない意欲を子どもに灯すのだと思う。

2017-05-09 18:01:52