金剛のものがたり。三話『紅牡丹と死化粧』

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はるか @Kurosu_Haruka

「カエルワヨ……金剛!」 「ワタシノ……カエル場所ワ!!! 海ノ……ソコネ!!!!」 「アナタノ帰ル場所ワ……深海ジャ……アリマセン!」  二匹の素手による攻撃をいなしながら、わたしはゼロ距離で砲撃を放つ。彼女たちはどうやら無傷で、わたしを捕らえたいらしい。 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:06:55
はるか @Kurosu_Haruka

「カエルワヨ……金剛!」 「ワタシノ……カエル場所ワ!!! 海ノ……ソコネ!!!!」 「アナタノ帰ル場所ワ……深海ジャ……アリマセン!」  二匹の素手による攻撃をいなしながら、わたしはゼロ距離で砲撃を放つ。彼女たちはどうやら無傷で、わたしを捕らえたいらしい。 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:06:55
はるか @Kurosu_Haruka

素早い動き。しかし、わたしの腕からは逃れられない。 「ウグ……っ!?」 「チカラニ振リ回サレテイタ以前ノ……ワタシト……オナジトオモウナ」 両腕で二匹の首を掴み上げ、わたしは勝ち誇る。 「腕ワ、二本アルンダ。コノママ……オマエタチモ……深海ノソコニ」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:09:59
はるか @Kurosu_Haruka

素早い動き。しかし、わたしの腕からは逃れられない。 「ウグ……っ!?」 「チカラニ振リ回サレテイタ以前ノ……ワタシト……オナジトオモウナ」 両腕で二匹の首を掴み上げ、わたしは勝ち誇る。 「腕ワ、二本アルンダ。コノママ……オマエタチモ……深海ノソコニ」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:09:59
はるか @Kurosu_Haruka

「振り回されてるのは俺たちのほうだっての」 「ナンダト……?」 「二人は囮だ」 「ナ……!?」  その瞬間、首に痛みが走り、わたしの意識は霞むように途切れていった。 「深海化抑制秘薬『れぎおん』の原液」 「グゥゥウ……」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:13:02
はるか @Kurosu_Haruka

「振り回されてるのは俺たちのほうだっての」 「ナンダト……?」 「二人は囮だ」 「ナ……!?」  その瞬間、首に痛みが走り、わたしの意識は霞むように途切れていった。 「深海化抑制秘薬『れぎおん』の原液」 「グゥゥウ……」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:13:02
はるか @Kurosu_Haruka

「注射させてもらったよ」  わたしは弛緩し、二匹を放す。 「イツノマニ……ソンナ作戦ヲ……回線ワ……ワタシモ傍受シテタノニ」 「だろうと思って島風だけには別回線で指示してたんだよ」 「テイトクウゥ……!」 「おやすみ」 「テイトク……」 「今は寝ろ、金剛」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:15:02
はるか @Kurosu_Haruka

「注射させてもらったよ」  わたしは弛緩し、二匹を放す。 「イツノマニ……ソンナ作戦ヲ……回線ワ……ワタシモ傍受シテタノニ」 「だろうと思って島風だけには別回線で指示してたんだよ」 「テイトクウゥ……!」 「おやすみ」 「テイトク……」 「今は寝ろ、金剛」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:15:02
はるか @Kurosu_Haruka

──────── 「……ここワ」  目を覚ますと、視線の先には見慣れた天井があった。 「執務室?」  提督の執務室の床に布団が引いてあり、そこにわたしは寝かされていたようだ。 「起きたか」 「ていとく、ぐもーにん」 「お、お前な。ぐもーにんじゃねえよ」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:20:01
はるか @Kurosu_Haruka

──────── 「……ここワ」  目を覚ますと、視線の先には見慣れた天井があった。 「執務室?」  提督の執務室の床に布団が引いてあり、そこにわたしは寝かされていたようだ。 「起きたか」 「ていとく、ぐもーにん」 「お、お前な。ぐもーにんじゃねえよ」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:20:01
はるか @Kurosu_Haruka

「わたしどうなってたノ?」  提督はなにも答えずに、わたしのほうへと近づき、缶ジュースを頬に当ててきた。 「冷タッ」  提督が、わたしの提督になったあの日のように。 「お帰り金剛。命令守ったな」 「わ、わたしワ」 「偉いぞ」 「え、エライ!?」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:22:16
はるか @Kurosu_Haruka

「わたしどうなってたノ?」  提督はなにも答えずに、わたしのほうへと近づき、缶ジュースを頬に当ててきた。 「冷タッ」  提督が、わたしの提督になったあの日のように。 「お帰り金剛。命令守ったな」 「わ、わたしワ」 「偉いぞ」 「え、エライ!?」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:22:16
はるか @Kurosu_Haruka

「主力艦隊が到着するまで、涼風を守ってたろ」 「あ、あれは島風がデスネ」 「それに一番大切な命令」 「アウチっ」  提督にチョップされ、わたしは動揺する。 「なにするデース……!」 「生きて帰ってくれた。それだけでいい」 「提督……」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:24:24
はるか @Kurosu_Haruka

「主力艦隊が到着するまで、涼風を守ってたろ」 「あ、あれは島風がデスネ」 「それに一番大切な命令」 「アウチっ」  提督にチョップされ、わたしは動揺する。 「なにするデース……!」 「生きて帰ってくれた。それだけでいい」 「提督……」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:24:24
はるか @Kurosu_Haruka

────── 「へいへいへい! ヤハーギ! 閃光投げなサーイ!」 「え、ええ、そうだったわね……」  島風が横須賀鎮守府へと帰投し、わたしたちの鎮守府はいつもの落ち着きを取りも出していた。 「俺の執務室はいつから子供のたまり場になったんだよ……」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:25:52
はるか @Kurosu_Haruka

────── 「へいへいへい! ヤハーギ! 閃光投げなサーイ!」 「え、ええ、そうだったわね……」  島風が横須賀鎮守府へと帰投し、わたしたちの鎮守府はいつもの落ち着きを取りも出していた。 「俺の執務室はいつから子供のたまり場になったんだよ……」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:25:52
はるか @Kurosu_Haruka

「百歳越えてる、わたしつかまえて子供扱いとはいい度胸デース!!」 「はいはい」 「それよりお腹すいたワ! 提督ごはーん!」 「は、はいはい……」  ジャージ姿で床に寝っ転がり、いつも通りジタバタとしていると、ノック音が響いた。 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:27:53
はるか @Kurosu_Haruka

「百歳越えてる、わたしつかまえて子供扱いとはいい度胸デース!!」 「はいはい」 「それよりお腹すいたワ! 提督ごはーん!」 「は、はいはい……」  ジャージ姿で床に寝っ転がり、いつも通りジタバタとしていると、ノック音が響いた。 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:27:53
はるか @Kurosu_Haruka

「お前ら、来客だ! 「んじゃ、静かにげえむしてるネ〜」 「あ、アホか! 立て! しゃんとしろ! お偉いさんだと困る!」 「ジャージ着てて、しゃんもへったくれモ──」 「失礼するよー」  入ってきた艦娘を目にして、わたしは勢い良く立ち上がる。 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:30:26
はるか @Kurosu_Haruka

「お前ら、来客だ! 「んじゃ、静かにげえむしてるネ〜」 「あ、アホか! 立て! しゃんとしろ! お偉いさんだと困る!」 「ジャージ着てて、しゃんもへったくれモ──」 「失礼するよー」  入ってきた艦娘を目にして、わたしは勢い良く立ち上がる。 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:30:26
はるか @Kurosu_Haruka

「す、すずかぜ……」  思わず、つばを飲み込む。 「金剛に改めてお礼をいいたくてさ」 「お礼デスカ」 「あたいを助けるために真っ先に飛び出してくれたんだってね」  わたしはそっぽを向き、頬をかく。複雑な心境だ。 「来てくれなかったら轟沈してた」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:32:50
はるか @Kurosu_Haruka

「す、すずかぜ……」  思わず、つばを飲み込む。 「金剛に改めてお礼をいいたくてさ」 「お礼デスカ」 「あたいを助けるために真っ先に飛び出してくれたんだってね」  わたしはそっぽを向き、頬をかく。複雑な心境だ。 「来てくれなかったら轟沈してた」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:32:50
はるか @Kurosu_Haruka

「……かもネ」 「あたいは金剛の知ってる『涼風』じゃないかもしれないけど、前のあたいみたく好かれないかもしれないけど──」  涼風は元気に笑って、わたしをまっすぐ見つめてくる。わたしの『親友』だった、あの子のように。 「金剛と友達になれるように頑張るから」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:34:48
はるか @Kurosu_Haruka

「……かもネ」 「あたいは金剛の知ってる『涼風』じゃないかもしれないけど、前のあたいみたく好かれないかもしれないけど──」  涼風は元気に笑って、わたしをまっすぐ見つめてくる。わたしの『親友』だった、あの子のように。 「金剛と友達になれるように頑張るから」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:34:48
はるか @Kurosu_Haruka

わたしの目から滝のような涙が溢れてきたのは言うまでもない。鬼の金剛。まさに鬼の目にも涙である。 「涼風は涼風ネ。あの子とは違う、あなたはあなたデース」 「金剛……」 「涼風じゃないとか酷いこと言ってソーリー」 「ううん」 「……改めてはじめまして、涼風」 #金剛のものがたり

2017-05-17 15:36:31
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