金剛のものがたり。十一話『最終決戦！』

はるか @Kurosu_Haruka

「島風、川内、両艦の捜索を最優先！　合流後反転し、いっきに敵本体を叩くワヨ！」 「了解！」 「島風らの大凡の位置は！？」 「彼女たちから送られてきた座標情報、星座の角度から割り出したところ──」 　待ってて、親友たち。今助けに行くから。 #金剛のものがたり

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「おうけい！　いくヨ、みんな！　目標、あのアホみたいにデカイ深海棲姫！」 「その先に島風さんたちがいるわ！」 「気合！　入れて！　行きます！」 「みなさん！　ついてきてくださいネ！」 「はい！」 「フォローミー！」 　0050時。零号艦隊最高の戦いが始まった #金剛のものがたり

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「姉様姉様姉様！　姉様に道をあけなさい！！」 　比叡の砲撃。出鼻を挫かれた夕級たちは一撃で大破轟沈し、残された軽巡たちは手にした刀ですれ違いざまに斬り伏せていく。 「姉様姉様姉様！　この戦いが終わったら脱ぎたてのおぱんちぬを下賜していただけるのよ！」 #金剛のものがたり

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──だから、どけええええええええええええ！！！　 気合一閃、敵艦隊の一角は比叡単艦で文字通り斬り崩した。その突出した比叡を敵駆逐艦が包囲する。 「……ちっ、すばしっこいわね。榛名！」 「了解、比叡お姉様。状況予測三式『くろのす』」 「潰せ！　榛名！」 #金剛のものがたり

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「沈みなさい！」 　比叡を包囲していた駆逐艦。その高速で移動していたそのすべてを榛名は偏差射撃で正確に沈めていく。 「金剛姉様の道は！」 「榛名と比叡お姉様が！」 「斬り拓くッ！！」 　両艦の勢いは止まらず、爆ぜた敵艦は水面へと沈んでいく。 #金剛のものがたり

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「金剛、お姉様。敵に動きがあります！　迂回し背後から奇襲を仕掛けるつもりかと！」 「おうけい、霧島！　北上を連れて後ろは任せたワ！」 「了解！　艦隊の頭脳を出し抜こうなんて百年早いのよ！」 　霧島と北上が後方へ向かうと同時に、わたしは加賀へ視線を送る。 #金剛のものがたり

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「制空権なら心配いらないわ。私を誰だと思ってるの」 「ふっ、そうでしたネ」 「一航戦、参る！」 　放つ艦載機。百の正規空母に勝ると言われた、零号の加賀と赤城。その一翼が操る艦載機は空を支配する。 「制空権は私のもの。あとは頼んだわよ。支援は任せて」 #金剛のものがたり

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「おうけ……Shit！」 　左舷から迫る砲弾を避け、わたしはとっさに攻撃された射角をなぞるように撃ち返す。 「グゥアア！　シネェ！！！」 　命中。接近し砲撃してきたのは重巡クラスが二隻。 「わたしたちに気づかれずにここまで近づくとはなかなかの実力ネ」 #金剛のものがたり

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「観測機！　周囲警戒を厳に！」 　加賀の指示と同時に、二隻の重巡は砲撃を続けながら、こちらへと迫る。 「那珂ちゃん、いくワヨ！」 「うん！　加賀さんを守──」 　あれ？　那珂ちゃんはそう呟き首を傾げる。 「どうしたネ」 「あの二隻、多分知り合い」 「へ？」 #金剛のものがたり

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「愛宕と高雄だよ！　七瀬艦隊に配属されたって聞いてたから間違いない！」 「深海化して暴走してるノ！？」 「違う。この歌。さっきから聴こえるこの歌が」 「あ。まさか」 「うん、私と同じ力」 　那珂ちゃんは砲撃を止め、マイクを取り出す。 #金剛のものがたり

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「それならやってみる！　私の精一杯を！　深海化……っ！」 　彼女の瞳が桜色に光る。 「ここからは私の舞台（ステージ）よ！」 　深海化した那珂の砲塔は音楽を奏で始め、彼女はステップを踏み始める。 　わたしは一気に駆け、愛宕と高雄の首を掴み、力ずくで掲げる。 #金剛のものがたり

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「那珂ちゃんのステージは汚させないワヨ」 「航空第三部隊、那珂さんへ敵を近づけるな！」 　加賀との連携で那珂を守る。 「青い空。水平線。砂浜〜♪」 「始まったネ！」 　その瞬間、掴み上げていた二隻の重巡が震えだす。那珂ちゃんの歌の効果だろう。 #金剛のものがたり

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──真夏の夜の海で〜♪ 「ううあ……」 「愛宕、高雄、しっかりするネ」 「ぐ、ぐるしいぃ……」 「あっ、そ、ソーリー！」 　わたしは彼女たちの首から手を離す。 ──描き信じてた夢♪ 「げほげほ……」 「私たちは……？　高雄、これはいったい」 #金剛のものがたり

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「状況説明はあとネ。正気に戻ったなら二隻は加賀の護衛をオネガイ！」 「わ、わかったわ〜、金剛」 「どうなってるのか、よくわからないけどこの場は任せてください」 　わたしは頷き、ライブ中の那珂ちゃんへ視線を向ける。 「金剛さん、敵の歌姫はあの大きな深海棲姫！」 #金剛のものがたり

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那珂の歌で、どうやら七瀬艦隊の連中は正気を取り戻し、敵と交戦を再開したようだ。しかし深海棲艦までは『歌』の効果が及んでいない。おそらく敵の『歌』が那珂の力を妨害しているのだろう。 「おうけい、当初の予定通り、わたしはあのデカイの潰してくるネ！」 #金剛のものがたり

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「空は任せて」 「頼りにしてるわヨ。那珂ちゃん！」 「はい！」 「ライブ続けて！　それじゃ、いってくるワネ！」 「お気をつけて〜！」 　那珂の気の抜ける見送りの言葉に苦笑し、わたしは巨大深海棲姫へと向かう。 　比叡と榛名のつゆ払いのお陰で、楽に進める。 #金剛のものがたり

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────── 「弾薬も！　そろそろ在庫切れ！　まずい！」 「こちらはまだ余裕があります」 「深海化すれば弾薬なんて自給自足できるし、なっちゃう？」 「ある程度自由に深海化可能な壱型と違い、試作型の榛名たちは一度深海化したら大丈夫じゃないです」 #金剛のものがたり

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「でもここまで来たら、やるしかないんじゃないの？」 「ですね」 「ウェイトゥ！！」 　不穏な会話をしていた妹たちに追いつき、わたしは敵に向かい砲弾を放つ。 「金剛姉様！」 「遅いじゃないですか！」 「ソーリー！　こっちも色々あってネ！」 #金剛のものがたり

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たった二隻で、深海化もせず、よくもまあここまで敵艦を蹴散らしてくれたものだ。 「誇らしく思うヨ、妹たち」 「姉様……」 「褒めてくれるなんて珍しいじゃないですか……」 「でも深海化は最後の最後の手段。無茶はしないでネ」 「はい！」 #金剛のものがたり

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「わたしはあのデカイのを轟沈（や）るネ」 「わかりました！　榛名とわたしは？」 「引き続き、近づく敵の掃討をオネガイ！」 「金剛お姉様、単艦で大丈夫ですか？」 「なにいってるネ」 ──妹たちにこんな活躍強いたのヨ。 「わたしは比叡と榛名、そして霧島の姉」 #金剛のものがたり

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わたしは左手を開き、巨大深海棲姫へ向ける。 「金剛型一番艦！！　金剛！　エレガントに突貫しマース！！」 ────── って、かっこつけてきたものの。 「こ、このデカイの砲、つけすぎじゃないですかネ！？」 　雨あられのように砲撃してくる。 #金剛のものがたり

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「撃ちます、ファイアー！」 　船体に命中。しかし、すぐさま再生してしまう。 　うーん。あの肉塊みたいなボディへ攻撃しても無駄っぽいネ。狙いは── 「あの頭頂部にあるむき出しの人形！」 　弱点と見── 「……どわああああ！？」 　 #金剛のものがたり

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突然、足下がすくわれ、わたしは奇声をあげる。 「しょ、触手うう！？　リアリィっ！？」 　よく見ると海中にはあのバケモノから伸びた触手が蠢き、その一本がわたしの足に絡みついている。そして一気に、わたしは逆さまにされ、空中へと引き上げられた。 #金剛のものがたり

はるか @Kurosu_Haruka

「こ、こっちはスカートだってノニ……！　この変態！」 　悪態は届かず、無機質な表情の深海棲姫は逆さ吊りのわたしへ砲を向ける。 「う、運動不足が祟ったネ」 　殺られる── 　目を閉じた瞬間、爆音が響く。 　死ぬ前に提督にドレス姿、見せたかったナ…… #金剛のものがたり

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生きてたい。もう少しダケ── 「提督……ッ」 　……アレ？　変ネ。どこも痛くナイ。 　なにやら落下してるようナ。 　目を開くと眼前には海面が迫っていた。 「ぶっ！？」 　海中に頭をめり込ませ、わたしは必死にもがき、なんとか立ち上がる。 #金剛のものがたり