- Jindai_Komaki_
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「見ろ〜。私たちの艦隊は圧倒的よ〜」 「個々で上回っていても数は圧倒的に敵のほうが上。ほぼ二十倍はいるのよ」 「深海棲姫も見た限りで十隻はいるもんねぇ」 「それに交戦前、中央にいた赤い奴」 「ああ。あの棲姫とは戦いたくないわね〜」 #金剛のものがたり
2017-05-26 20:28:51「他にも強そうなのがたくさん。だから油断しちゃだめ……きゃ!?」 私は高雄を突き飛ばしながら、砲撃を放つ。 彼女の立っていた位置を砲弾が走り、それを放った夕級へ私の攻撃が直撃する。 「油断してるのは高雄でしょ〜」 「ごめんなさい」 「いいってこと〜」 #金剛のものがたり
2017-05-26 20:33:20それにしても深海化促進秘薬かぁ。 とても良い。まるで零号艦娘のように動けるし戦える。見た目が少し深海棲艦へ近づくのが気に食わないが、見ようによってはかっこいいかもしれない。 「あは。本当に私たち七瀬艦隊だけで倒せるかもね」 「だから慢心しては──」 #金剛のものがたり
2017-05-26 20:35:31「なに、この声」 「くぅ……船体が震えるわ……愛宕」 「高雄、私なんだか意識が……」 「私もよ……」 「この声のせい? ちがうこれは──」 ──歌? 悲しい悲しい、そんな歌。望郷の歌だろうか。 薄れ行く意識の中で、私はそう感じた。 #金剛のものがたり
2017-05-26 20:37:48────── 「おい! どうした! 艦娘どもはなにをしている! 状況を報告しろ!」 「七瀬提督、それが……全艦、一斉に共食いを……」 「共食い……だと!?」 「は、はい」 「ふぅざけるなぁ!!」 私は壁を殴り、士官の襟を掴み上げる。 #金剛のものがたり
2017-05-26 20:39:52「なにが春野の野蛮な『紅牡丹』だ! あいつら艦娘のほうがよっぽど野蛮じゃないか!」 軍のアホ共に紅牡丹の有用性を知らしめる。そうしなければ── 「叢雲の犠牲が浮かばれないんだよ!」 士官を壁に投げつけ、私は銃を彼に向ける。 「ひ、ひいい」 #金剛のものがたり
2017-05-26 20:41:58「ああ、これはわかったぞ。この歌声。春野博士が研究していた」 そう。深海棲艦を操り味方にできないかという実験。 「共振操作だ」 深海棲姫級の化物が歌で友軍を操っているのだろう。深海化が仇となった。 「こうなったら私は真の零号を解き放つ」 「提督、それは」 #金剛のものがたり
2017-05-26 20:45:00「だぁまれぇ!!」 銃口が火を吹き、士官の喉を貫く。 「げぼっ……ぐぉぇ」 「他に意見のあるやつはぁ!?」 ブリッジにいるすべての士官がうつむく。 「意見があるなら早く言えよぉおおぉぉ!!」 ────── 「バカどもが。たまの無駄させやがって」 #金剛のものがたり
2017-05-26 20:46:45ブリッジにいた士官どもをすべて殺害し、私は格納庫へ急ぐ。 「待ってろ。今、自由にしてやる」 外にいる偽物の艦娘どもに真の艦娘が誰か一緒に教えてやるんだ。 辿り着いた部屋。銃のカードリッジを変え、私は衛兵に銃を向ける。 「な、七瀬提督、これはい──」 #金剛のものがたり
2017-05-26 20:49:19「どぉけよぉ!!」 彼を射殺し、私は格納庫をカードキーで開く。 中には棺のようなコールドスリープ装置が置いてある。チンケなSFのような。それでも確かに機能していた。 「さあ、行こう、叢雲。一緒に」 ゆっくりと装置の扉を開く。 「一緒に」 #金剛のものがたり
2017-05-26 20:51:22瞳をとじて寝ているような叢雲。 ──ごめんね。十年も寝かせて。私と春野博士の大切な娘。 「行こう。そのために連れてきた」 突然目を開いた叢雲は私の手首を掴む。 「融合して。そして戦おう」 ──全てと。 一緒にまたご飯。食べに行きたかったよ。みんなで。 #金剛のものがたり
2017-05-26 20:53:38────── 「うわ、七瀬艦隊が共食い始めたと思ったら、またヤバイのが出てきたよ」 七瀬提督が搭乗していたはずの朝日改は轟沈し、中から出てきた艦娘。周囲の艦娘や深海棲艦を喰らいながら少しずつ巨大化しているように見える。 #金剛のものがたり
2017-05-26 20:58:34「島風、まずいわよ。加賀さんに連絡しよう?」「そうね、川内。やばいわ。気が付かれてないとは言っても、わたしたちも遠巻きに囲まれてるっぽいし」 通信圏内ならいいが。 「さすがの零号艦隊でも今回はホントにヤバイかもしれないなぁ」 #金剛のものがたり
2017-05-26 21:02:08────── 「おっそーい! もう零時近いよ!」 「さすがに救援に来てるなら合流してもいい頃よね」 川内に頷き、私は腕を組む。 「早くなんとかしないとまずい。深海たちは七瀬艦隊のバケモノを無視して、横須賀へ向かったよ」 「それをおってバケモノも横須賀へ」 #金剛のものがたり
2017-05-26 21:27:19「ヤバイ」 「まずい」 その瞬間、風切り音が聞こえた。 「危ない! 川内!」 川内を押し倒し、わたしと彼女は海面へ倒れ込む。そして水煙が上がった。 「あ、ありがとう、島風」 「お礼はあと、見つかったよ!」 ひっそりと艦隊の中に紛れ込んでたのに。 #金剛のものがたり
2017-05-26 21:30:52「だああ……!」 「砲弾の雨あられだわ〜!」 敵の数が多すぎる。一斉に撃たれて、周囲は雨が降ってるのかというくらい水しぶきと水煙で賑わっている。まるでお祭り騒ぎだ。逃げ回るしかない。 「川内、夜戦得意でしょ!? 全部やっつけてよ!」 「よし!」 #金剛のものがたり
2017-05-26 21:35:23川内は踵を返し、敵の大群を睨みつける。 「やっぱり無理ー!」 「だめじゃん!」 敵に背を向け、再び逃げ出す始末。 「どんなマイナスの戦局も零まで引き上げるから零号艦娘でしょ!?」 「マイナスすぎるから! ていうか島風なんて零号試作型でしょ!? 頑張って!」 #金剛のものがたり
2017-05-26 21:37:27「試作艦はあくまで試作艦だよ! 壱型の川内ががんばるべきじゃないかな!?」 「うるせーんだい! この露出狂!」 「川内だけにって? 露出狂じゃないよ!」 罵り合っていると近くに砲弾がふってきた。 「し、至近弾!」 「い、今のは危なかったよ、川内!」 #金剛のものがたり
2017-05-26 21:39:39「も、もう死んじゃうのかな、私たち……」 「大丈夫……! きっとみんなが来てくれるよ!」 「でも、島風。みんな来ないでくれたほうが。さすがに比叡たちでもこの数は……」 「確かに。これは覚悟決めないとかな」 ──もう一回くらい金剛の腕、折りたかった。 #金剛のものがたり
2017-05-27 06:58:34────── 「へくちょ!」 「なんです、金剛姉様。それ」 「クシャミデース」 「比叡お姉様のクシャミも変わってましたけど、金剛お姉様のも相当変です」 「榛名、姉様のクシャミは可愛いじゃん?」 「比叡お姉様も可愛いと、このメガネ思っております」 #金剛のものがたり
2017-05-27 07:01:46「あなたたち、あの大艦隊の前で、よくのんきにしていられるわね」 「加賀こそ。表情一つ変えてないわネ」 「当然よ。後期型と一緒にしないで。乗り越えた死線の数が覚悟を重くする」 「そうネ。他の未熟な艦娘がこの戦場に来ないで済むようにやっつけたいのヨネ、加賀は」 #金剛のものがたり
2017-05-27 07:04:31「馬鹿言わないで。私は別に」 「加賀の優しさはよく知ってるヨ」 「それはどうかしら」 「赤城。たすけたいんでショ。本当は誰よりも焦ってル」 「……」 「きっとなんとかなるヨ」 「金剛さん」 「赤い深海をぶっ倒して赤城を取りモドス」 そして── #金剛のものがたり
2017-05-27 07:06:37「零号艦隊全員集合っていこうヨ!!」 「そうね」 「だから自分は沈んでも赤城は助けるなんて考えないでネ、加賀」 「……そ、それは。わかっていたの? 私の覚悟を」 「付き合い長いからネ」 「あなたこそ、戦場で死にたがってるくせに」 「そうネ。その通りヨ」 #金剛のものがたり
2017-05-27 07:08:34「お互い生きて帰りましょう」 「おうけい。約束ヨ、加賀!」 急に戻ってきた、わたし。そんなわたしの指示をみな当たり前のように聞いてくれる。 「……みんな、ついてきてくれてサンキュー」 「当然よ、金剛さん」 「金剛姉様! 気合! 入れて! フォローユー!」 #金剛のものがたり
2017-05-27 07:11:37「お姉様や姉妹がいれば榛名は大丈夫です!」 「ふっ、この艦隊の頭脳と眼鏡。金剛お姉様の指揮のもとでこそ輝く者」 「金剛さんと一緒なら那珂ちゃん、なーんも怖くないよ」 「てゆうか、なんでもいいから金剛。駆逐艦ウザーいから早く戦おうよー」 ──みんな。 #金剛のものがたり
2017-05-27 07:14:32