金剛のものがたり。最終話『金色に輝く未来。最後は笑顔で』

はるか @Kurosu_Haruka

「ほら、見えてきたよ〜。戦場が」 「あら。派手に待っているようですね」 「そうだな、大和。腕が鳴る」 「大和、武蔵。二隻とも、出撃準備しといてよ〜」 「了解だ、天ノ川提督」 「それでは行ってまいりますね」 　ブリッジから二隻が去り、私は目を細める。 #金剛のものがたり

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「春野博士。あなたの考えも間違ってはいない。でも──」 　"あなたも協力してくれたから"完成した、あの秘薬。罪の意識もあったんだよね、きっと。 　わたしの作った『れぎおん』。艦娘を守るためのもの。 「艦娘は宝。それがこの私の信念」 　行くよ、大和、武蔵。 #金剛のものがたり

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「横須賀鎮守府壱号艦隊『天ノ川』！　行くよ！」 　──私の魂。我が戦艦。この朝日改の名にかけて。 「朝日改！　大和と武蔵の支援を行いつつ、零号及び海狼両艦隊と合流！！」 　──そして。 「一気に敵を殲滅す！！」 #金剛のものがたり

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【金剛のものがたり。最終話『金色に輝く未来。最後は笑顔で』】 #金剛のものがたり

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「お前な、秘書艦殿……」 「な、ナニヨ」 　三笠改の艦首に立つ提督は呆れ顔だ。さすが厨二病。司令が艦首に立つなんてアホの極みだ。 「俺に挨拶抜きで出ていくなんて、どういうつもりだよ」 「……べーだ！　知らないワ、提督なんカ！」 「なにを拗ねてるんだ……」 #金剛のものがたり

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「こ、金剛。戦闘中よ」 「て、提督ワっ……！」 　嬉しいのに。本当は。助けに来てくれた奇跡を。見つけてくれた奇跡を。きっと救援にかこつけて、勝手にいなくなって横須賀へ帰ったわたしを迎えに来てくれたんだ。わかってる。そんなことは。 　嬉しい。嬉しいのに。 #金剛のものがたり

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「提督は一度も、わたしを人として見てくれなかっタ……！！」 「そ、そんなことありませんよ、金剛」 「浜風は黙ってテ……！」 　こんなコト言いたいわけじゃないのに。ありがとう。そして好きって伝えたいのに。 　好きって気持ちがめちゃくちゃに暴走して制御できない。 #金剛のものがたり

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提督には好きな人がいる。苦しくて苦しくてたまらない。でも、薬漬けのポンコツ艦娘。それも深海細胞純度100%の零号艦娘。提督を幸せにできるわけがない。提督は人と結ばれるべき。だからわたしはそっと提督の幸せを願い身を引く。そんなことわかってる。わかってても。 #金剛のものがたり

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「提督は、わたしを……助ける対象としか見てなかったヨ……」 　たえられなかった。どうしても。自分がだめな艦娘なのはわかってる。それでも。 　それだからこそ。 「人の心なんていらなかっタ。合理的に考えられナイ……」 　こんな時にまで愛情に振り回される。 #金剛のものがたり

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「他には？　なにかあるか？」 「な、なにヨ」 「言いたいことだ。全部言え」 「も……」 「も？」 「もう少し可愛がってヨ……！」 「それから」 「わたしは人なの？　兵器ナノ……！？」 「人だ」 「なら……」 それなら。 #金剛のものがたり

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「女の子らしく扱ってヨ……」 　戦場で馬鹿みたいだ。でもネ。女の子なら、きっと。戦いより恋が優先なんじゃないノカナ。わたしはそう思う。そう思うんダ。兵器のくせに。 ──兵器のくせに。 「兵器のくせに馬鹿みたいネ」 　涙が止まらなかった。 #金剛のものがたり

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「金剛」 「……なに」 「人には役割がある」 「役割」 「お前を慕い戦うもの」 ──姉妹に那珂。矢矧に浜風。 「お前を信頼し身を削るもの」 ──加賀。川内。 「お前といて楽しいからと守るもの」 ──島風。北上。 「俺の役割はわかるか？」 #金剛のものがたり

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「わかんないヨ……」　 「バカモン！！」 「は！？」 　提督は艦首に片脚を乗せ、自らを親指で示す。 「俺は──」 「……！？」 「提督だーーー！！」 「ばっ」 　バカダーーー！！ 「だから俺はお前を助ける対象として見るのは当然だ！」 「て、ていとく」 #金剛のものがたり

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「女の子として見て欲しいだと？」 「……うう」 「見てる！　見てるが、その上で！」 「そ、その上デ！？」 「お前は別にタイプじゃない！」 「ズガーーーーーーーーーン」 　左右に展開していた矢矧と浜風、鈴谷と涼風は、青ざめてこちらへ哀れむような目を向けてくる。 #金剛のものがたり

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「金剛。俺はお前を尊敬しているし、大切に思っている」 「う、ウソツケ……！」 「お前は世界でたった一人しかいない」 「……うう」 「俺の秘書艦だ」 「ていとく……」 「こうして探し出したのは」 「ウン」 「愛してるからだ」 「……へ？」 #金剛のものがたり

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──ざわっ。 海狼艦隊のみなさんに戦慄が走る。 「あ、あいし……！？」 「そう、秘書艦として愛──」 「愛！！　ていとくが愛！？」 「家族愛のような──」 「ていとくが、わたしを！！　愛してるでええええええええええええええす！！！！！」 #金剛のものがたり

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突然、船内の機関すべてに魂がこもったかのように熱くなる。 「よっしゃァァァ！！！　提督のハートを掴んだのは、わたしデース！！！！！！」 「こ、金剛、違うわ、ちゃんと聞き──」 「ほら、もたもたしてないで戦うヨ！！」 「まあ金剛がいいなら行きましょう、矢矧」 #金剛のものがたり

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「いいのかしら……浜風」 「このほうが面白いでしょう？」 「あなたらしいわね……」 　提督は慌てた顔でなにか叫んでいる。 「お、おい！　秘書艦殿！　人の話を聞──」 「いくヨ！！　海狼艦隊！　戦闘開始ネ！！」 「金剛っ！」 　わかってるヨ、ていとく。 #金剛のものがたり

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でも今は勘違いしていたいノヨ。 　そのほうが強くなれる。だって、わたしは── 「提督ラブ勢筆頭、金剛デース！！」 　そう叫ぶと同時に、わたしは仲間を引き連れ、巨大深海棲姫へ向かう。 「にしても、厄介ネ、海中の触手！」 「一掃できたらいいのですが」 #金剛のものがたり

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その時。胸にしまってある懐中時計が午前三時を告げた。 『任せなさい』 　突然の通信。そして水煙── 「こ、これワ！？」 「海中からの水雷よ！」 　驚愕している、わたしの肩を誰かが叩く。 「ワ！？」 「おひさしぶりね、金剛」 「お、お前ワ……！？」 #金剛のものがたり

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紫の髪。そして海水をしたたらせる水着姿の美しい女性。 「し、シーライオン！？」 「私も海狼艦隊の仲間じゃない？　なにを驚いてるのよ、フフ」 「い、いきてたノ！？」 　矢矧も浜風も誰一隻驚いていない。みんな彼女の生存を知っていたようだ。 #金剛のものがたり

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「あのあと。私も助けられてね」 「……良かったネ」 「あなたを殺す前に死ぬわけがないじゃない？　この私が、フフ」 「そうだったネ」 　わたしは頷き、微笑む。頼もしい仲間がまた一隻増えた。 「さあ、触手は消えた。道は開いたわ。行きなさいな」 「おうけい！」 #金剛のものがたり

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フルアヘッド。この距離まで近づけば、もう外さない。 「ばあにんぐらあああああああぶ！！！」 　轟音と薬煙。断末魔。巨大深海棲姫の本体は、私の砲弾に頭を貫かれ、海中へと船体を傾ける。 「全艦斉射！　放テ！」 ────── 　 そして深海棲姫を沈めた先には。 #金剛のものがたり

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【壱号艦隊『天ノ川』】 旗艦。大和。 武蔵。 長門。 陸奥。 蒼龍。 以上、すべて零号壱型艦娘。 以下、後期型。 軽巡、駆逐艦複数。 #金剛のものがたり

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「ひいいいいい！　いつまでおってくるの！？」 「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬうう！」 「川内、言い遺すことある！？　受け付けるよ！」 「な、なによ、それ！？　私だけ沈むの！？」 「わたしのほうが船足速いし、あなたの勇姿を、みんなへ伝えるためにも生き残るから！」 #金剛のものがたり