金剛のものがたり。最終話『金色に輝く未来。最後は笑顔で』

はるか @Kurosu_Haruka

「おっそーーーーーーい！」 　夕級、ヲ級。無数の駆逐艦や軽巡、重巡を蹴散らし、赤城の間にいる深海棲姫の頭を連装砲で吹き飛ばす。 「わたし速いけど、力尽きるのも──」 　そのまま、近くの深海棲姫の肩に飛び乗り、首に脚をかけ回転する。 「はやーーーい！」 #金剛のものがたり

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首が折れた深海棲姫は膝をつき、海中へと沈む。反撃を許さないまま二隻の深海棲姫を葬ったのはさすがだが── 「深海化するなんテ……」 「ぼさっとしないで！　島風はもう戦えない！」 　わたしの前を行く川内は吼え、そして連装砲を放つ。 #金剛のものがたり

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海面に倒れる島風は敬礼し、微笑んだ。 　あとは任せたよ。島風は声もなくそう言った。わたしは唇を読んだのだ。 　こちらの砲の射程に入った赤城と視線があった。 「赤城……！」 　あと少し。赤城まで届く。でも川内とわたしだけでは戦力が── #金剛のものがたり

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「こちら壱号艦隊旗艦、大和。支援します」 　──通信？ 「いいタイミングでしょ？　金剛さん」 「ベストタイミングね、ホテル！」 「ほ、ホテルじゃないです！」 「支援、頼むヨ！」 「了解です」 　通信が切れると同時に、左舷方向から敵艦隊へ無数の砲弾が降り注ぐ。 #金剛のものがたり

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続けて、大和と武蔵の姿を視認できた。 「壱号艦隊もきてくれたのネ！」 「よーし、もう本気の本気で力尽きても安心だー！」 「川内！？」 　川内はノットをさらに上げ、赤城へと突進する。 「今は夜！　夜戦なら私にお任せ！」 　 #金剛のものがたり

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迫る赤城の爆撃機。そのすべてを迎撃しながら、川内は赤城へ急速接近し彼女の顔へと蹴りを放つ。 　しかしその蹴りは赤城に掴まれ、ねじ切られた。 「ぐうぅ！　でも──」 　──金剛さん！ 　川内の叫び。 「……！」 「久しぶりネ、赤城」 「コン……ゴウゥ……」 #金剛のものがたり

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川内の影。赤城の死角から彼女の脇へと潜り込んだ。 「休もうカ、赤城」 「コンゴオオオオオオ！」 「ばあにんぐうううう！」 　赤城の右手が、わたしの額を掴む。 「シズメエエエ……！」 「らああああああああぶ！」 　零距離砲撃。彼女の脇を削り取る。 #金剛のものがたり

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「お疲れ様、赤城──」 　わたしは倒れる彼女を抱きとめ、その首に注射器の針を当てる。 「──そして、おかえりなサイ」 ────────── #金剛のものがたり

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「冷タっ！？」 「いつものヤツだ」 　夕暮れの防波堤。頬に感じた冷たいジュースの缶。振り返ると、そこには必ず── 「提督」 「やっぱりここにいたのか、秘書艦殿」 「よくわかったわネ」 「見つけて欲しくて、ここにいるんだろ」 「ウン」 #金剛のものがたり

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心地よい海風が頬をくすぐる。 「この港ともお別れか」 「そうネ。色々あったけど、やっぱり寂しいワ」 　海狼艦隊は解散となり、わたしや提督はこの鎮守府を離れることになった。 「名残惜しいな」 「ウン、名残惜しいヨ」 　もうこの防波堤で提督を待つこともなくなる #金剛のものがたり

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「そろそろ行くか」 　提督に肩を叩かれ、わたしは頷く。 「みんなも待ってるぞ、金剛」 「一緒に出ていこッカ」 　立ち上がると、防波堤の先、港は海狼艦隊のみんなが待っていた。 「行きましょうか」 　──矢矧。『れぎおん』の副作用で困っでいた時、世話になった #金剛のものがたり

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「金剛、お世話になりました」 　──浜風。こちらこそ世話になった。涼風を蘇生してくれた恩は忘れない。 「短い間だったけど、あたいもこの鎮守府、好きだったよ」 　──涼風。失った涼風が帰ってきてくれたような、そんな温かい時間をくれた。 「楽しかったよ、金剛！」 #金剛のものがたり

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──鈴谷。ほとんど話したことないが、シーライオンの襲撃事件では命を救われた。……機会があったら仲良くしよう。 「軍の迎えも来た。行くか」 ──提督。 「ね、提督」 「ん？」 「チュッ」 「……どわ！？」 　ホッペにキス。それくらい許されるよネ、 #金剛のものがたり

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「おい！　金剛！」 「あはは、提督、愛してマース！！」 「お前な……！」 「ずっとずっっっっっと！　愛してるワ、提督！」 ────── 「加賀ー！　ご飯足んないよ！」 「なんですって、島風さん。　三表は炊いたわよ！？」 「そんなこといっても！」 #金剛のものがたり

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私はちゃぶ台で茶碗を掲げる親友を目にし、ため息をつきながらも微笑む。 「おかわりっ」 「赤城さん……変わりなくて、なによりね」 「食べるの、はっやーい……！」 ────── 「ちょっと、榛名お姉様！　比叡お姉様にくっつきすぎです！」 #金剛のものがたり

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「榛名は比叡お姉様とくっついてないと大丈夫じゃないです！」 「あのね、二隻とも」 「はい？」「え？」 「大好きだからって愛全開で姉にベタベタするのはね、みっともないからやめてよ」 「お、お姉様がそんなこと言えるのですか？　榛名は理解に苦しみます！」 #金剛のものがたり

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────── 「艦隊のアイドル！　那珂ちゃんでーす……！」 「うーん、川内。そのポージングなにか違うなー。リテイク」 「え……那珂ぁ……まだやるの？」 「次のライブの決めポーズ。客観的に見て、しっかり研究しなきゃ。はい、もう一回」 「艦隊のアイドル──」 #金剛のものがたり

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────── 　ざあざあと波の音。目を覚ますと頬は白い砂に触れていた。 「ここは……」 　砂浜？　 　私は波打ち際に倒れていたようだ。 「私、生きて……？」 　ふと横に倒れている女性を見つけ、私は目を見開く。 「七瀬提督！」 　揺すぶると彼女は目を覚ました #金剛のものがたり

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「……私は」 「七瀬提督。良かった生きてたのね」 「あなたは……シーライオン？」 　私は頷き微笑む。その時だった。背後に気配を感じたのは。 「誰！？」 　そこに立っていたのは── 「ちょっと。私をこんなところに寝かしておくなんていい度胸ね！」 #金剛のものがたり

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「む……」 「ら……」 「叢雲！？」 「叢雲！」 「なによ、死ぬほど仰天した顔をして……きゃ！？」 　七瀬は叢雲に駆け寄り、力いっぱい抱きしめる。 「叢雲おお……！」 「な、なによ、このバカ！　離しなさい！」 「……元に戻った。意識が戻ったのね」 #金剛のものがたり

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「はあ？　私はいつでも私。叢雲よ！」 　でしょ？　春野博士── 　そう苦笑する彼女は確かに叢雲だ。 「私はシーライオンよ、フフ」 「なんでもいいわ。それよりお腹が空いたのだけれど」 「うん……うんっ……！　食べに行こう！　三人で！」 　三人とも助かった？　 #金剛のものがたり

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深海細胞破壊促進秘薬『まてりある』が、うまく作用したのだろうか。 　いや。きっと── 「また私たちが出会えたのは、きっと。そうね」 「え？　きっとなに？　叢雲。えへへ」 「海の神様がくれた奇跡かもね」 　そう。きっとそうなのだろう。 #金剛のものがたり

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たまには奇跡を信じるのもいい。そうでしょう。 　──金剛。 ────── 「へくち！」 「なんだ？　金剛。風邪か？」 「どうだろネ。でも車酔いして体調悪いデース……」 「船のくせに車酔いかよ！」 「陸の揺れには弱いノヨ！」 #金剛のものがたり

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「新しい所属先でも、またやりあってるわね」 「まあ、それが平常運転です、矢矧」 「それもそう……なの？」 　浜風と矢矧に舌をだし、わたしは元海狼艦隊のみなを先導する。 「横須賀鎮守府零号艦隊へ、うえるかむっ！」 　みなは緊張した顔をしている。 #金剛のものがたり

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「へ～い、ていとくぅ！」 「な、なんだ、金剛」 「零号艦隊初の人間の提督に就任した気分はどうですかネ！」 「お、お前の画策だと聞いたぞ！　海狼と零号の統合は！」 「なんことですかネ〜！」 「……気分か……横須賀鎮守府勤務。光栄に決まってるだろ！」 #金剛のものがたり