- jomosanzan_ahm
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同じ1970年代のウーマン・リブ運動の中で「慰安婦」について言及されていることが下記、木下直子『「慰安婦」言説再考』(2013)の中で述べられている(ウーマン・リブについてはPDFのp.90~92に表でまとめられている) catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/handle/2324/13…
2017-05-31 22:45:27手記の形では富田邦彦編『戦場慰安婦』(1953)城田すず子『愛と肉の告白』(1962)なども木下(2013)(PDF33)に書かれているし、
2017-05-31 22:48:23同ページではアジア女性基金『「慰安婦」関係文献目録』に載っている『女の戦記1―朝鮮人慰安婦金春子手記』も「正面から『慰安婦』を扱っている」と指摘している 目録のあるページawf.or.jp/6/01-1.html
2017-05-31 22:50:24ついでなので木下(2013)で扱われていて、私も所持している書籍から1983年以前のものを2つほど。金一勉編著『戦争と人間の記録 軍隊慰安婦』(1977)と、広田和子『証言記録 従軍慰安婦・看護婦』(1975)について
2017-05-31 22:52:50金(1977)の最初の論考、川田泰代「日本軍隊と朝鮮人慰安婦」には、軍に要請された「日本人売春業者」が女性を集め、その方法として「だまし」「官憲の威力をかさに」といったものが挙げられている。(p.11-14)
2017-05-31 22:54:04川田氏の記述事態は現在の歴史学的見地からすると問題点も多い気がするが、ここで重要なのは、国家機関が直接暴力的に集めた「狭義の強制連行」だけを問題視していたわけではないことがわかる点だ。
2017-05-31 22:55:34広田(1975)も同様で、「朝鮮人慰安婦」の場合「半ば強制的に、あるいは騙されて、慰安婦となった者が多かった」と、ここでも騙されたことも問題視されている。(p.21)
2017-05-31 22:56:35これも木下(2013)からになるが、元「慰安婦」としては1975年に裵奉奇(ぺ・ポンギ)さんのことが新聞報道されたこともある(PDF39)。後述する尹貞玉氏が1980年に最初に調査したのも、この裵さんだ。
2017-05-31 22:57:34<「強制連行」の文脈で「慰安婦」を扱ったもの>という定義でも、朴慶植『朝鮮人強制連行の記録』(1965)が挙げられる。しかもこの中で「強制連行」は直接的な暴力に限定されていない。 d.hatena.ne.jp/scopedog/20140…
2017-05-31 22:58:36韓国の事情についても吉方べきさんの調査で韓国内の新聞に「慰安婦」のことが1945年には書かれていたこと、以降も「吉田証言」以前から記事が存在したことが分かっている oshietegensan.com/war-history/wa…
2017-05-31 22:59:28さらに、元挺対協代表の尹貞玉氏が「慰安婦」問題の調査を始めたのは前述のように1980年からである。尹氏が1990年の『挺身隊<怨念の足跡>取材記』というハンギョレ新聞に載せた論考で吉田証言を参照にしたことは事実だが、時系列で言えば調査の方が先に始まっている
2017-05-31 23:01:46加えて言えば、挺対協が1993年に出した証言集では吉田証言に疑義が出ていることが記されている。 d.hatena.ne.jp/scopedog/20140… (なお、この証言集での「強制連行」の定義は「当時の国際慣例に従い、『詐欺、暴行、脅迫、権力濫用、その他一切の強制手段』による動員」)
2017-05-31 23:03:13「発端」を<問題が大きく扱われるようになったこと>と定義した場合はどうかというと、一つの目安として、下記で扱われている朝日新聞の記事件数があり、報道量を見ると「金学順さんらの提訴が決定的な分水嶺」ということが示されている。 d.hatena.ne.jp/Apeman/2011122…
2017-05-31 23:06:52木下(2013)では吉田証言について「<従軍慰安婦問題>出現の時期まで影響力を持っていた」(PDF40)としているが、吉見義明氏や西野留美子氏を引用し「日本では運動に関わる研究者など関係者は概ね吉田証言を証拠としては採用せずに実態調査を進めてきた」(PDF41)ことに触れているし
2017-05-31 23:11:12「戦後補償の要求の高まりと、前節までにみた『慰安婦』制度の問題化が相互に影響しつつ、<従軍慰安婦問題>を社会問題化させたといえよう」(PDF41)とし、
2017-05-31 23:12:39尹貞玉氏の活動、韓国の女性団体の声明などを挙げつつ、その後の金学順さんの名乗り出が「決定的な出来事」であったとしている(PDF43-45)
2017-05-31 23:13:21木下氏が吉田証言を「発端」として扱っていないことは明白であるし、否定論者の吉田証言の扱いについて「<従軍慰安婦問題>が歴史の歪曲による虚構であるかのように攻撃される要因の一つである.」と、現在では歴史学を無視した人々の材料であっても史実とは別の問題であることも述べられている
2017-05-31 23:15:45ただし、木下氏は「<従軍慰安婦問題>出現時、吉田は朝日新聞に証言者として扱われ,その証言は世論形成にも影響を与えたと言える」
2017-05-31 23:16:54「なにより韓国で社会問題化の契機となった尹貞玉の論考『挺身隊(怨念の足跡)取材記』においても、吉田が大いに参照されているのだ.」(PDF41) と、言説の初期段階での影響力は比較的大きく見ている。
2017-05-31 23:17:57では具体的にどの程度のものを木下氏がこう表現しているのかというと、朝日新聞については補注64で「1990年代までの朝日新聞で『吉田清治』と『慰安婦』の語がどもに確認される記事は、1986年に1件,1990年から1992年の間に7件,1997年に1件の計9件である.」としている
2017-05-31 23:19:49ただ、97年の記事は吉田証言を「著述を裏付ける証言は出ておらず、真偽は確認できない。」としている記事なので、むしろ影響力が弱まったことを示しているとも言えるものだ。
2017-05-31 23:20:34「取材記」については尹貞玉 他『朝鮮人女性がみた「慰安婦問題」』(1992)に、和訳されたものが載っているのでそれを見てみると、吉田証言に関する記述が出てくるのは「北海道」の記事での「資料の隠蔽」という部分で1行触れている部分と「タイ、ハッチャイ」の記事で、
2017-05-31 23:21:50タイの方で吉田証言が大きく扱われており、「慰安婦“狩り”極秘通牒」「吉田清治さんの戦争犯罪の告白」(p.31-34)が吉田証言に依っているところだ。
2017-05-31 23:23:22このほかにタイの記事では「ユユタさん」という元「慰安婦」への取材の記録が書かれており、分量的には「ユユタさん」の記述の方が多い。
2017-05-31 23:24:56