彼女はは色々聞きたいことがあり 質問しようとしても口を出る前に全て忘れてしまう 黙っていると手枷足枷をつけられ担がれていく さっきまでいた床が遠くなった時 彼女は何故か声をあげて泣いていた
2017-05-25 23:30:07爆発から少し時間が経った マキは目を覚まし体を起こす 爆風に当たったのは背中だけではなくこめかみのすぐ横ガラスでも掠めたのだろう もともと頭の付近は出血すると多いがそこまでの怪我でもなく包帯が巻かれて止まっていた
2017-05-25 23:30:50そこまで確認してマキは自分が病院にいることに気づく なんというか間抜けな顔をしていたら父親がマキの顔を覗き込んでいた 「よかった気がついたねマキ、心配したんだよ 爆発現場のすぐ近くで倒れていたらしいじゃないか」
2017-05-25 23:31:55そう、爆発した現場 マキはそのことを言おうとしたが 父親が続けてこう言った 「工場の爆発に巻き込まれたんだってね 他の人も何人か運ばれてきていたよ、マキはまだ運が良かったかもしれない」 工場?工場などにはいなかったはずだ でもマキはすこし考える
2017-05-25 23:33:04もしかしたら白昼夢、嫌な想像で幻覚でも見ていて ゆかりの家じゃない場所にたどり着いていたのかもしれない 瞬間自信がなくなり始めた マキはゆかりの名を口にしようとしたが 一瞬だけその名前が抜け落ち声が詰まった ゆかり?
2017-05-25 23:33:45名前が思い出せなかったのも妙だったが マキは自分が倒れていたところをごまかされているのが気に食わなかった だがあえて何も言わないようにして 疲れたから寝るねと父に告げた 夕暮れの色が 今は安心よりも無限に広がる不安を思い出させる
2017-05-25 23:34:28…… 「被験体の様子は?」 「現在安定してます 先ほど精神の乱れで事故がありましたが 人員の補充はもう済んでおります」 「引き続き観察を頼む」 「はい」 白いかたまり、黒い塊が透明な壁の向こうで 女の子の様子をじっと眺めている
2017-05-25 23:35:18彼女はずっと床に寝そべったまま観察してくる何かを観察していた 何かするべきだった気もするが 何をするのか忘れて それを永遠繰り返して また巻き戻る そんな状態が新しい部屋に来てから5時間ずっと
2017-05-25 23:36:52でも5時間を境にしてる何かが変わった 彼女はゆっくり体を起こし立ち上がると透明な壁の前で 歪み始めた両手をつき ここから出してと呟いた その様子に白い塊と黒い塊は喜びの声をあげ 彼女の声をかき消していく
2017-05-25 23:38:20両手を壁に打ち付けても開くことも壊れることもなければ虚しく響く音 彼女は黒いからまりと白い塊の姿をちゃんと認識して人間だと理解すると よりいっそう激しく打ちつけた 彼女の興奮の度合いが引き上がると 両手は更に歪み 破壊を目的とした形へとなっていった
2017-05-25 23:39:16「素晴らしい、ふつうの人間ではあり得なかったことだ 自分の意志で形を変えられる 脳を汚染されることなくその力を行使することができる!! 私達は正しかった この娘を使ってさらなる高みへと行けるぞ」
2017-05-25 23:40:19歓声に負けじと叩きつけられた壁は いつの間にかヒビが入りあと三度も叩かれれれば粉々になると言ったところで神経ガスが流れ込み 彼女は床に倒れてしまった
2017-05-25 23:40:36…… しばらく寝ていたマキは 真っ暗になった空を見て身体を起こす 父親から置き手紙をもらっていたのでマキは開くことにした
2017-05-25 23:41:03手紙にはこう書いてあった 「マキが何と無く言いたかったことが私にはわかったよ マキは工場なんかには近づいてない ゆかりちゃんの事が心配だったんだろう で探しに行った最初の場所がそんなところではないと思うんだ 病院から出たらまた話をしようここは何か少しおかしい」
2017-05-25 23:41:38読み終えた後マキはその手紙を誰にも開かせないように自分のカバンへと忍ばせた きっと何もないと分かれば病院からはすぐ出られるだろう もう少しだけおとなしくここにいればそれでいいと自分に言い聞かせた
2017-05-25 23:42:04… マキが目をこすりながら起きるとおかしな事が起きていた いや ゆかりと連絡がつかなくなってから変なことしか起きていないのだがそれでもおかしいと思えた マキは着替えて病院のろうかをカバンを大切に持ちながら歩いた
2017-05-25 23:43:41誰かが必ずいるであろうこの病院はなんの音もせず ただ静けさに包まれていたのだ 昨日までいた患者も看護師も医師も 受付だって誰もいない マキは声を出さないように外に出ようとしたが 何かに腕を掴まれ床に転がる
2017-05-25 23:44:29そこには見たことも聞いたこともないような生き物が立っていて マキはその時だけ声をあげてしまった 発したその声が伝わるようにマキを中心に綺麗で何もなかった場所が血にまみれていき乱雑に散らばった椅子や植物に倒れこむ遺体やまだいきているだろう誰かの声がマキの耳に確実に流れ込む
2017-05-25 23:45:06その謎の生き物でさえ最初に見た印象から遠くかけ離れ まるでさっきまで人を襲い殺していたような姿でマキを見下ろし笑っていた
2017-05-25 23:45:50マキはその生き物が大きく腕を振り上げるところをゆっくりと見つめ その表情を固くさせていった 短時間の間に彼女はここから出られずにここでおとなしく命を散らすのだと理解したのだ またゆかりに会いたいなと一瞬だけ思い防御するために両腕を交差して振り下ろされた腕が来るのを待っていた
2017-05-25 23:46:44… 「マキさん!どうしたんです?」 マキは誰かに声をかけられて目を開けた 腕を交差させ 何かから守るようにしている よく考えれば彼女はベッドの上でそんな格好をしたまま寝転んでいた 汗はすごくかいている
2017-05-25 23:47:53同じ部屋で寝ていた人が声をかけてくれたようで それの拍子に目が覚めた、というところだろうか マキは恥ずかしくなり謝罪を述べた後夢のことを思い出し 怖かったが「現実ではない」と認識すると 途端笑い出してしまった
2017-05-25 23:48:22変な夢の話は自分の中にだけ留めておき マキは医者に再度確認、異常なしの診断を受けて父親と一緒に病室から去って行った 事故にあった後なので何か色々聞かれるんではないかと少し身構えていたが外にはそんな人たちもいなく 難なく家に着いた
2017-05-27 02:59:01