- Jindai_Komaki_
- 710
- 0
- 0
- 0
「夏だー! 泳ぐそぉー!」 「お姉ちゃん、はしゃぎすぎです!」 青い空に白い砂浜、綺麗なカモメに収入源の観光客! 「地元真っ盛りってね! 今日も元気だっ!」 「ねえねえ、キミらジモト〜?」 「ん? ジモトだけど」 なんだか肌の黒いチャラ男が話しかけてきた。 #梅桃桜
2017-06-07 15:09:26「ちょい、島ん中、案内してくんなーい?」 「いや、今泳ぎにきたんで」 「それじゃ一緒に泳ごってか〜?」 あげあげのチャラ男の肩を春菜がつつく。 「なぁに、ロリっ子ちゃん」 春菜は足下に繋いである船を停めるための鎖を指差す。 #梅桃桜
2017-06-07 15:11:40「ん〜? 鎖がどう──」 「セイッ!!!!!!!」 激しい金属音とともに、わたしの腕ほどの太さがある鎖は真っ二つになり、春菜の拳はアスファルトも少しえぐった。 「……!?」 「お姉ちゃんに話があるなら、まず春菜が拳で聞きますが」 「け、けっこうでーす……」 #梅桃桜
2017-06-07 15:13:48チャラ男はそそくさと逃げていってしまった。 「さすが春菜。牙王魔刄流空手の免許皆伝ね」 「お粗末さまです」 「さ、泳ごっか!」 「はい!」 【梅桃桜。第三話『へーい! あたしが一番デース!』】 #梅桃桜
2017-06-07 15:16:21「海って見るのは好きだけど」 「なに真っ青になってますか」 「泳ぐと波で酔うよね……ゴエエエエ」 「うわ、開幕、いきなり吐くヒロインがいますか!?」 「ヒロインだろうが、なんだろうが吐くときは吐くよね、人間だもの……」 「そういえばお姉ちゃんは波酔いに弱かったです」 #梅桃桜
2017-06-07 15:18:51「まあ砂で埋めとけばいいし、よしんばゲロトラップに引っかかっても、わたしみたいな美少女の体内で生成されたゲロなら喜ぶでしょ」 「桜ヶ島には、このようなゲロトラップはほぼありませんのでご安心して海水浴に来てください」 「それより、フランクフルト食べたーい」 #梅桃桜
2017-06-07 15:21:05「たった今ゲロ吐いたばかりなのに元気ですね」 「海って言ったらフランクフルトだし、今日も元気だっ!」 「自分で買ってください」 「お金ないよ」 「妹にたかるんですか」 「お、お願いします。おっぱい触らせてあげるから……」 「なにが悲しくて姉のおっぱいを……!」 #梅桃桜
2017-06-07 15:23:04「普通、言わないよ? わたしのおっぱいは神聖なものだし、本来は太郎にもみもみされつつ、ペロペロされたいとは思ってるけれど、好きな人以外には触れてほしくない特別な──」 モミモミ。 ──ん? 「特別な──」 モミモミ。 「なんじゃぁぁぁ……!?」 #梅桃桜
2017-06-07 15:24:52「へーい! 日本の女の子!! スオミの美少女デース!!!」 「は!?」 突然背後から人様の乳を揉んできたのは、この金髪の美少女か!? 「てか、クラスメートのシルマ……!」 「紹介キートスネ!! それより!」 「なによ!」 #梅桃桜
2017-06-07 15:26:58「あなたのブラスカスカネ」 「……!?」 …………。…………!? ……………………!! ………………。 「は!?」 「空気が七割デース!」 「お姉ちゃんは見えを張って大きな水着ブラをつけてますが、暴露するなんて鬼の所業! わたしがしようと思ってたのに!」 #梅桃桜
2017-06-07 15:28:52「黙れ! 貴様ら……!! 埋めるぞ! 砂浜に!」 「ふん。太郎の恋のライバルが、こんなチンチクリンでは話にならないデース」 「な、なんだと、貴様……」 「ワタシのほうが! おっぱい大きいシ〜!」 「……!」 「ウエスト細いシ〜!」 「クソが!」 #梅桃桜
2017-06-07 15:30:31「ヒップだけは、あなたやたら大きいネ」 「やかましいわ……!」 なんてやつだ。楽しい海水浴の日をめちゃくちゃにしよってからに。 「ふん。太郎は好きな人がいるの。あんたがいくらセクシーでも、無理なものは無理よ!」 「セクシーじゃないよりは落とせる確率が高いネ」 #梅桃桜
2017-06-07 15:32:47……クソ、この豚野郎が、正論をついてやがる。 「わたしはあなたがゲロを吐いてる間に太郎へ愛を捧げてきマース!!」 「な、なぜそれをわざわざ、わたし様に告げるか!」 「ライバルとは正々堂々勝負をしたいからネ!」 「なかなかの武士道。フィンランド人、やるじゃない!」 #梅桃桜
2017-06-07 15:35:52「というわけで、わたしは太郎へ愛を捧げてきマース!」 「……くっ」 「お姉ちゃん、後を追わなくていいのですか?」 「さ、さっきの残りゲロが……」 「うわ!? わたしの足にかかってます! かかってます!」 「ゴエエエエエエエエ……」 ────── #梅桃桜
2017-06-07 15:38:39「慣れないビキニなんてはいたもんだから冷えて、お腹まで壊したわね」 「下痢で一時間はトイレにこもってましたね」 「人間らしいヒロインでしょ」 「ま、まあ……」 「トイレって、わたしビデ苦手なのよね」 「いきなりなにを言い出すんですか、この人は」 #梅桃桜
2017-06-07 15:40:31「ビデってあれよね。反射して他人の小水がかかってて間接的に、わたしの股間に直撃するかと思うと怖くて使えないの」 「いや、なにを言ってるのお姉ちゃんは」 「でもペーパーだけで拭くと股間が臭くなるので、もし太郎とエッチするとなったら必ず先にお風呂に入りたいわ」 #梅桃桜
2017-06-07 15:42:12「恥じらい……!」 「妹に語ってるだけなのに、恥じらいもなにもないわい!」 「なぜ語るか問いたいです!」 「一時間下痢しながら考えてたからだよ!」 「ほんとろくでもないですね、この姉は……!」 「それよりフランクフルト食べようよ〜」 「わたしのお金でですか」 #梅桃桜
2017-06-07 15:43:49「うん。ボッタクリ価格の観光地フランクフルト、地元民は絶対買わないけど、なんか食べたくなっちゃって」 「自分で買ってほしいんですけど。自分のお金で」 「お姉ちゃん、クソゲに課金して破産しちゃったの」 「レアが出ないソシャゲをすぐクソゲ呼ばわりするのやめてください!」 #梅桃桜
2017-06-07 15:46:50「買ってくれないと、お姉ちゃん、今日はずっと防波堤でお空見てるから」 「はいはい……買ってきますよ……」 諦めたように肩を落として春菜は出店へ向かっていく。 「あれ? あの子は」 春菜と入れ違いにプラチナブロンドの美少女が浜辺にやってきた。 「シルマ?」 #梅桃桜
2017-06-07 15:49:50「……えっぐ……」 「たまご?」 いや違う。ハンプティダンプティ的ななにかをつぶやいたわけではなく、彼女は泣いていた。 大粒の涙をこぼし、肩を震わせて。 「どうしたの? なにかあった?」 「相手にしてもらえなかったデース……」 「太郎に?」 「ハイ……」 #梅桃桜
2017-06-07 15:52:29────── 「綺麗でしょ、ここ」 「わお! めちゃ綺麗デース!」 北欧人ははしゃいで手を大きく振った。 わたしの大好きな場所。ガードレールの下には崖と海が広がり、対岸にはキラキラと宝石のような夜景が見える山道。 「元気がなくなると、いつも来るんだ」 #梅桃桜
2017-06-07 15:54:36「素敵ネ……」 「うん。ホントにそう思う」 この島を大好きな理由。この風景が一番だろう。とても愛している。変わらないで欲しい原風景。 「ライバルのわたしを元気づけてどうするのヨ」 「人ってさ、辛そうな人見てるとほっとけないんだよ」 #梅桃桜
2017-06-07 15:59:14「サクラコ……」 「同じ人を好きになったら仲間みたいなものじゃない? 傷ついてるの見たら勝負は中断。支えたいよ」 「ヤサシイネ……」 「わたしには普通のことよ。それに──」 ネオンを指差し、わたしは微笑む。 「一緒に見る人がいたほうが楽しいじゃん」 #梅桃桜
2017-06-07 16:01:27「サクラコー!」 「うわあ!?」 当然抱きつかれて、わたしは尻もちをつく。 「この島に来て、なかなか受け入れてもらえなくて辛かったデース……!」 「そうだったんだ……」 いつも自信満々だと思っていた。 「わたし、日本生まれの日本育ちなのにサ〜……」 #梅桃桜
2017-06-07 16:03:53