稲川淳二のつぶやき怪談　2017年5月31日投稿分

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その時、何かがペラペラ、と揺れたんです。 正面の壁で、何かが揺れている。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

よーく見たら、色のあせた古いお札が貼ってあって、 そのお札がペラペラ揺れていたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「なんだよ、気持ちが悪いなぁ」 「なんでこんな所へお札を貼るんだよ？」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そしたら急に岡本さん、 「なんかこの風呂、いわくでもあるのかよ？」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

怖くなったけど、今更部屋を替えるわけにはいかないんです。 もう、空いている部屋は、ここしかないんですから。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それでも気になるから、もう一度よく風呂場を見てみると、 床の上に、何かが置いてあるんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「なんだぁ？」 そこにはドンブリのような、ツボのような物が置いてあるんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ジーッ、と見ていたんです。 その中には、灰が入っていて、線香の残りカスが残っていたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それを見て、ゾクーッ、としたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（なんでこんな所で線香を焚くんだよ） （もしかして･･･この部屋、なんかあるのか？）

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そう思っても、無理をお願いして泊めてもらっているから、 気にしたって仕方ない。 そう自分に言い聞かせて、 ガラガラ、と扉を閉めて、部屋に戻って布団に潜り込んだんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

でも、目を閉じて眠ろうとするんですけど、眠れない。 なんとか眠ろうと、自分に言い聞かせているけど、 ちっとも眠れないんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

岡本さんのいるその離れ、深夜になって物音一つしないんです。 シーン、とした離れなんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そんな静寂の中、イ〜ッ、イ〜ッ、と音がした。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（なんだぁ？）

稲川淳二 @Junji_Inagawa

部屋の中で、何か戸の開く音がしたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

部屋の中には古い三面鏡があったんです。 その三面鏡が、いつの間にか開いているんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

岡本さん、 （そうか、この部屋、傾いてるんだ） （だから、勝手に三面鏡が開いてるんだ） そう思ったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

でも、なんだか気になって、 上半身を起こして、その三面鏡をジーッ、と見ていたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

イ〜ッ、ゆっくりと三面鏡が開いてゆくんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ゆっくり、ゆっくり三面鏡が開いて、鏡の部分が段々と見えてきたんです。 そして、三面鏡の鏡に自分が映って見えたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

鏡を見ている自分の姿が。 岡本さん、なんだか妙に気分が悪くなったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

這って三面鏡の所まで行って、バタン、と閉じたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その瞬間、 （うっ）と思った。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

閉じた瞬間、鏡に何かが映っていたんです。