#ダークエルフ王国見聞録 その14

著者 へどばんさん pixiv版(https://www.pixiv.net/series.php?id=823771) 結婚式のはなし
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へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

口さがない私の評を述べる客の女性達も笑顔を浮かべながら酒杯を重ねていく。また、里の子供たちは母や姉に連れられて、宴席の様子を見学に来て、お祝いの言葉を述べ、家長である母から菓子を受け取って喜んでいる。祝祭の朗らかな空気が場を支配していた #ダークエルフ王国見聞録

2017-06-18 16:15:59
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

余興の剣舞や精霊を言祝ぐ歌が座の中央で行われ、昼過ぎになると大方の料理と酒は参列者達の腹に収まった。すると、膳や大皿は下げられ、色とりどりに染色された羽飾りを付けた長い煙管と煙草盆が運ばれてくる。家長が火皿に煙草の葉と薬草を詰め、炭火で火を着ける #ダークエルフ王国見聞録

2017-06-18 16:18:53
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

これを先ずはセラと私が吸い、次いで母と親戚が、その次に里長から家長達へと回して一口ずつ吸っていく。独特の香りのする紫煙が場に立ち込め、この薫香が座の絨毯や飾り布に沁みこむことで、婚儀の為されたことを夫婦に思い出させると言う #ダークエルフ王国見聞録

2017-06-18 16:22:16
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

煙管の回し飲みが終わると、家長からの参列者達への礼が述べられ、参列者達はこれに返礼して席を辞していく。今回の儀式を手伝った者や、セラの家族および親族は里長の館で開かれる慰労の宴に参加し、そこで夜を明かすことになる。 #ダークエルフ王国見聞録

2017-06-20 23:21:32
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

私はセラと一旦別れ、男衆が用意した風呂に入って身を清める。ゆったりとした衣に着替え、ここまでの介助をしてくれた里の男達に礼を述べ、今日の介助の感謝のしるしとして細やかな刺繍が為された帯を一枚ずつ手渡す。彼らもまた、この後は里長の館での宴席に加わるそうだ #ダークエルフ王国見聞録

2017-06-20 23:22:09
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

私がセラの家に戻ると、寝床に蚊帳のように薄布を重ねたもので包まれており、待機していた女性にこの中で待つように言われる。布を上げて中へ入ると、冬の始まりに獲った大灰色雁の羽毛を詰めた二人用の布団が敷かれている。これはセラの母がこの冬の間に縫ったものである #ダークエルフ王国見聞録

2017-06-20 23:22:29
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

枕元には銀の水差しと翡翠の杯、小さな薬瓶が置かれた膳が置かれていた。屋内の蝋燭の灯りが薄布を通してうっすらと寝床に入り、また焚かれた香の煙が漂っている。しばらくすると、人の歩み寄る気配がして、透けるような薄布だけをまとったセラが寝床へと入ってくる #ダークエルフ王国見聞録

2017-06-20 23:22:48
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

寝床の外にいる付添いの女性が退室することを告げて外へと出ていく。この家屋の入り口には、里に入るときに私に問いかけをした精霊の姿を模した二人の乙女が待機している。この者達は婚儀を済ませた夫婦の初夜を守る役割を担っているのである。 #ダークエルフ王国見聞録

2017-06-20 23:23:10
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

褥の上に向かい合って座ると、コホンと咳払いをしたセラから話し始める 「あ、改めてであると、緊張するものであるな。ま、まずはその小瓶を取って貰えるか」 小瓶を手渡すと、彼女はそこから紫の薬液一滴を杯の中に垂らして水差しから水を加える #ダークエルフ王国見聞録

2017-06-20 23:24:03
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

セラはこれを一口飲んでから、私に杯を手渡す。これを飲むと、胃の腑から熱が高まっていくのかが感じられ、鼓動が早まり、目前のセラがより魅力的に感じられるようだ。心なしか、セラの瞳も潤んでいるように見え、褐色の頬に赤味がさしていく。媚薬の類であろうか #ダークエルフ王国見聞録

2017-06-20 23:24:28
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

「黙ってこうしていても埒が明かぬであろう。こここ、今晩は貴殿の好きにするがよいであろう!」 そう言って私の手を取るセラに口づけをして、布団の上に倒れ込む。薬のせいであろうか、酒精のせいであろうか、これよりしばしのことは記憶していない #ダークエルフ王国見聞録

2017-06-20 23:24:55
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

・・・しばらくして意識が覚めると、私はセラの膝の上に頭を乗せて休んでいた。それに気づくと、解かれた長い銀髪を私の顔に垂らしてセラは私の顔を覗き込む。 「起きたのか。今日は色々とあった。疲れたのであろう。もう寝るとするか?どうしたい?」 #ダークエルフ王国見聞録

2017-06-20 23:25:18
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

私はこの婚儀が決まった頃から彼女に尋ねてみたいことがあった。長い時間を生きる種族である彼女が、彼らから短命者と言われる私を娶ることをどう思っているかである。私は、セラの長い生のごく短い時間しかを共にできず、まず間違いなく先に死ぬことになるだろう #ダークエルフ王国見聞録

2017-06-20 23:25:37
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

その問いかけをすると、セラは黙って顔を近づけ、優しく口づけをする。 「つまらぬことを聞く。お前と居ると、知らぬことや感じたことのないこと、様々に気付いて一日、一月が長く感じる。私はお前を夫として誇りに思い、また幸せであるぞ。それは永遠に変わるまい」 #ダークエルフ王国見聞録

2017-06-20 23:26:12
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

そう答えたセラの瞳が宵闇に輝き、その光に吸い込まれるような心地で、彼女に改めて謝意を伝える。家の入口で番をする乙女が船を漕いだのか、鉾の飾り金具がじゃらりと鳴る音が聞こえた。その音を合図に私はまた眠りに落ち、布団とは異なる柔らかさの肌に包まれるのを感じた #ダークエルフ王国見聞録

2017-06-20 23:26:39