逆理飛旋③(6/20)

GC大戦有志異聞『絶望ノ極大混沌再来期』 ソロールなど。ED・生還ロール
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ルゥイン(跡地) @gc_luyin

アガタ。 彼女もまた衝動と闘って生きている。 落ち着いていたよに見えたが、一人で苦しんでいたのかもしれない。 「みんな、待ってますから」「忘れないで下さい。この景色を。ボクと一緒に飛んだことを。もう、元に戻れなくても」 ――もう一度、本物の空を一緒に飛べたら。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:44:32
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

タレイア。 いつだって笑顔で、私を呼んでくれていた。 大陸の未来を決める戦場ですら私の姿を見つけて。 「自分がわからなくなったら、私が名前を呼んであげるわ!」「私は、あなたを棄てられない。棄てたくないわ」 ――助けて、と、言う代わりに。あなたの言葉で私は救われた。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:45:11
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

ルーカス、狩人。 何度も助けてくれた、温かい二人。 私が戦場にいられたのは二人の助けのおかげだ。 「困った時は力になる。……だから。どうか、生きてくれ。友よ」「顔見せてやってくださいよ。きっと旦那も喜びます」 ――あのような別れの告げ方をしたことは、今でも。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:45:49
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

キースクリフ。 今も私を留めてくれている旧い混沌の主。 私の隣を居場所と認め、意識を失いながらも倒れ込むように辿り着いてくれた。 「最後に自分を規定するのは、自分なんだ」「俺、も…お前に会えてよかった……会いたかった」 ――私が死んだあとは、彼は何処へ行くだろう。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:46:23
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

ラフィン。 蒼き星から訪れた、銀の少女。 彼女とは何度か戦った。魔境で別れを告げられた後、彼女は本当に消えてしまったのだろうか。 「モイモイ《おかえりなさい》、ルゥイン様。帰りが遅いので心配しましたよ」 ――今の私を見られなくて済んだのは幸いだが、また会えたなら。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:46:32
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

そうか。 私は、死ぬのか。 記憶はレオンハルトに初めて出会ってからのこと、その前のこと、故郷にいた頃のことへと徐々に遡る。 そうか。 私は、案外長く生きていたのだな。 ならば仕方がない。平穏な時間も十分に生きた。これ以上を求めるのは―― #逆理飛翔

2017-06-20 03:47:55
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

ㅤ 「本当に、それでいいのか?」 #逆理飛翔

2017-06-20 03:48:14
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

私に問いかけたのは、レオンハルトの声。 「それで満足かよ?」 違う。これはレオンハルトではない。口調も、声も、彼のもののように聞こえるが。 「一度だけ。一度だけなら、なんとかしてやれるぜ」 なんとかするとは、どういうことなのだろう。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:48:27
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

今訪れている死から逃れること? 「ぬるい。それじゃおまえは何れまた死ぬことになる」 最後の望みを叶えること? 「問うて、答えを聞くだけで、それで終わりか」 ならば。ならば、何ができると。私にこれ以上何を望めと。 「おまえはどうしたいんだよ。言ってみろ!」 #逆理飛翔

2017-06-20 03:49:12
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

ㅤ どうしたいかと問われても。 私は。 ああ、私は、どうしたらいい。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:49:34
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

私はレオンハルトの味方についた。 あまりにも多くを壊し、殺してきた。 それがいくら私の本意でないとしても、私のしたことに変わりはない。 たった一人の望みのために、英雄たちを、世界を敵とした。 そんな私が、今更―― #逆理飛翔

2017-06-20 03:49:46
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

――魔境は広がり続けて、城市を一つ軽く呑み込んでしまう大きさに拡大していた。 それは内側にあったものが広がっていくだけの、逃げる余裕のある勢いで。 このままでは国ひとつは確実に飲み込みそうだ。 処理しきれなければ拡大を続けるだろうと、見ていた誰かが思った時。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:50:57
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

どこからか滑らかで艶やかな何かの音が、声が、魔境の外で躍動した。 姿はないが、どこかからか。決して遠くはなさそうだと思えるほどはっきりと響き渡る。 それは、数度繰り返して。 波のように、寄せては返して。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:51:13
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

やがてその声は甘やかに、歌うように。 魔境を成していた混沌が、その波の震えに従い散っていく。否、消えていく。 たった一度の奇跡の力を借りて、跡形もなく。 どこへやらへと沼は消え去って、つい先程までの、元の景色に。 ――それは男がかつて成していた魔境のようだ。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:51:49
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

ㅤ そうして全てが元通りになろうとした、平穏の中に。 魔境の核は佇んでいた。 目を閉じ、力の抜けた身体で。 今にも倒れそうに、ぐらりと。 それでも立っていた。 渦の模様ではない、まだ誰も見たことのない邪紋を纏って。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:52:15
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

まだ、ぼんやりとしている。 呼ぶ声があったとしても、目の前に何かあったとしても、それは気づけはしないだろう。 やがて、其処に立っている男、に見えるそれは、目を開けた。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:52:48
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

ㅤ それは、たった一度きり。 男が人間として願った最後の望みが叶った結果だった。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:53:29
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

――最後の戦いの前に、レオンハルトが砕いた金の印章。 それに封じ込められていたのは「竜神」の半身。 レオンハルトが死んだことで解放され、本来の所有者の元へと還っていった。 それはヒトの持つものではない。 この大陸に投影され、己の半分を印章に封じ込めた、竜神のもの。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:54:31
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

それは本来、持ち主の危機に瀕して砕け散るというアーティファクト。 戦いの前にそれは砕かれたが、持ち主の危機は訪れぬままであった。 止まった時の中で生きる男が死に瀕し。 止まった時の中でその危機は訪れた。 半身を男に預けた竜神にとって、男の死は己が存在の危機。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:55:17
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

――ったく、手のかかるやつだ。 男が目覚める前に聞いた最後の声は、そう笑った。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:55:28
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

視界に映るのは先程倒れ込んだ地面。顔を少し上げれば、そこにはいくつもの表情。 意識はまた薄れそうであまり余裕がない。 私は――本当に、生きているのか。 沸き起こるそんな疑問を今は押しのける。 夢でもいい。これがただの幻想でも、一瞬の猶予でしかなくても構わない。 #逆理飛翔

2017-06-20 03:55:56
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

ㅤ 問わねばならないことがある。 これが先程の声が言ったように本当の生だとすれば、尚更。 ㅤ #逆理飛翔

2017-06-20 03:56:21
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

ふ、と、それは微笑む。 以前と――まだレオンハルトと出会う前と同じ、柔らかな、穏やかな、澄んだ表情で。 「私を真に信じるならば、答えてくれ」 声は掠れたが、大丈夫、届いてはいる。 「レオンハルトの在り様を愛し、レオンハルトと共に戦った私を……赦せるか?」 #逆理飛翔

2017-06-20 03:56:41