逆理飛旋①(~5/1)

GC大戦有志異聞『絶望ノ極大混沌再来期』 ソロールなど。5/1ぶんまで(以降②に続く)
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ルゥイン(跡地) @gc_luyin

#異聞絶望キャラ紹介 名前はルゥイン(魯蔭)、外見年齢25歳前後の男性邪紋使い。 竜を信仰してきた一族の生き残りで、「生き延びる」ことを至上命題としつつも信念のため戦場に身を投じることは厭わない。任務で不在の間に、仕えていた条約君主が反英雄に殺されて拠り所を失った。 #逆理飛旋

2017-03-26 22:37:18

――ルゥインが故郷の村を旅立った時の話

ルゥイン(跡地) @gc_luyin

焼けた臭い。痛む身体。風が抜けるだけの音、その度に身体に当たる細かな砂塵。目を開ける。上体を起こす。 「…………」 声が出ないのは喉が渇いているからというばかりではなかった。 #逆理飛旋

2017-03-27 01:57:03
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

焼け落ちた社。汚れた身体。風が抜けて灰を巻き上げ、その度に身体に当たる炭の破片。乱れた髪を避け、立ち上がる。 「……これは」 誰の姿も気配もない村には、自分以外に意思をもって動くものはなかった。 #逆理飛旋

2017-03-27 02:01:44
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

生まれ育った村がただの焼け地と化し、自分一人が残されたのか、自分一人が残っているのか。 今朝も祈りを捧げた神の社に、玉で作られた竜の彫像が残っていた。長か、代わる誰かがこれを持たずに村を離れるはずはない。つまりは皆死んだのだ。鈍く光を反射するそれを呆然と見つめる。 #逆理飛旋

2017-03-27 02:08:46
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

「神は村を見捨てなさったか」 神がこの村におわしても、より強い力が存在できない掟はない。それを分かっていながらも怨み言がこぼれた。 ここに留まる意味はない。行くべきところもない。村を守る力を求めながらも、その守るべき村を失ったのだから。 #逆理飛旋

2017-03-27 02:17:39
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

村に伝わる守り神、その力が及ばなかったならば、己が立ち向かわねばならぬ――故に誓いを刻む。私は竜にこそなろう。村を守り続けた竜神よりも、強く高く飛翔せんと――もう失うことのないように。 #逆理飛旋

2017-03-27 02:30:49
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

何も残っていない村を出た。いくつもの亡骸を見た。これほどの惨状を見ることになるとは考えていなかった。夜盗や襲撃にも遭ったが、その実行者たちは追い詰められてそうせざるを得なかった者ばかりで、自分の手で彼らを殺すことはできなかった。 #逆理飛旋

2017-03-29 00:34:36
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

殺さなかったことは救ったことにはならない。鱗も、爪も、風雨を味方にする力も――それらをせめて領民を守ることに役立ててくれる君主と出会えたのは、この絶望の世界での最大の、最後の幸運であったかもしれない。彼は必ずしも理想の主ではなかったが、立派な為政者ではあった。 #逆理飛旋

2017-03-29 00:47:01

――「レオン」との邂逅前に、半竜がみた夢。

ルゥイン(跡地) @gc_luyin

任務で遠地に飛んでいて帰る道中のことであった。 遠くに禍々しいモノを見た。 #逆理飛旋

2017-03-29 00:49:23
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

間に合うことはできなかった。まるで嘲笑でもするかのように荒い風が吹き抜け、つい一昨日まで見ていた日常は消え失せていた。 この光景は初めてではなかった。 この恐怖も、喪失感も、怒りのやり場のなさも。 肌身離さず持っている玉造りの竜を無意識に握りしめていた。 #逆理飛旋

2017-03-29 00:56:39
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

ある日を境に、純白が少しずつ侵されていった。 身を覆う鱗も、翼も、まるでそれこそが聖なるものであるかのように白く光を反射していたはずなのに。 「……何故だ」 原因は分かっていたが、それでも苛立ちと屈辱は収まらぬ。混ざる黒色、それは己の模す竜には存在し得ない濁り。 #逆理飛旋

2017-04-01 02:43:40
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

「これは……!」 否、これは夢だ。意識を縛る眠りを砕く言葉で意識を覚醒させる。これは夢だ。言い聞かせることで眠りの支配は揺れ解ける。 「これは現だ」 目覚めて身体を起こし、この時間こそが現実であると己を確定する――嫌な夢見をした。これは星の囁きか、ただの悪夢なのか。 #逆理飛旋

2017-04-01 02:54:37
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

胸元の竜の彫り物に、鱗越しに触れる。片時も離すことのないようにと鱗の内側に埋め込んであるものだ。村から持ち出したのは、社にあったこの彫り物と、何らかの呪いめいたものが施された一振りの剣だけ。どちらも失うわけにはいかない。 さあ、明日からの任務のために寝直さなければ。 #逆理飛旋

2017-04-01 03:06:18

――「レオン」との邂逅戦

ルゥイン(跡地) @gc_luyin

今朝の祈りを済ませる。村の神の社はなくとも、神の力を内包するという彫り物が我が身から離れることはない。 主を、領に住まう民を、力なきものも、力あるものも。 「守りたまえ。我が身は竜なれば、御身に替えて不屈の盾とするべし――」 今朝の夢の光景が過り声の端を揺らす。 #逆理飛旋

2017-04-01 10:46:21
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

瞑想をしてその悪夢を振り払うと、翼を広げて風を読み、流れるように空に昇った。数日前に謎の消失を遂げた、少し遠くの村に向かう――仔細に観察し報告せよとの命だ。 なにか胸騒ぎがする。空を翔けながら、胸の片隅でなにかが疼くような不快感。だが止まるわけにはいかなかった。 #逆理飛旋

2017-04-01 10:54:44
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

雲のない空に揚がるには目立ちすぎる白の鱗。いつも通りに一枚の翳りもなく、夢で見たような玄鱗は身体のどこにも見られない。 安堵と胸騒ぎを共存させつつも潰えた村の観察を終え、しかし収穫はなく君主の元に戻ろうと空高くから城の方角を遠く見やった時だった。 #逆理飛旋

2017-04-01 11:52:16
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

「なんだ、あれは」 何か分からないが何事か起きているのを目視した。火事や敵国の襲撃、否、何か異様だ。急ぎ戻らなければ。心臓が早鐘を打つ度に、玉彫りの竜がその存在を主張する――視界に割り込む殺戮の映像。見知らぬ青年の影。それがどうか、現実でないことを。 #逆理飛旋

2017-04-01 11:58:14
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

【時系列:『3つの悲劇』から数ヶ月後】 条約のとある領。 領主は、寛大にして剛毅な者だった。 その領では、往々にして各地で疎まれがちな邪紋使いを多く登用し、領の防護を任せていたのだ。 明君であると、言えただろう。

2017-04-01 13:03:00
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

しかし。 領主と領民は、辺境の地であったが故に些か噂の波に疎かった。 加えてそれらの善政が、仇となった。

2017-04-01 13:03:25
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

領地に一人の男が訪れた。 誰もが彼に『御伽噺の獅子の騎士』を幻視した。 何者かと問われると、彼は『レオン』と答えた。 そうして、いつも通りに。 彼にとっては何の手間とすらならぬ。 彼にとっては単なる破壊に過ぎぬ。 命の伐採が行われた。

2017-04-01 13:03:39
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

空からその様子を目視したルゥインが全速力で駆け付けた時にはもう手遅れであった。 金の髪を靡かせる青年が剣を薙ぎ、最後の一人が絶命した。 黄金の剣が真紅に濡れている。 胴から血の飛沫を上げ、斃れた死体。故郷亡きルゥインを拾ってくれた、善なる君主であった。 @gc_luyin

2017-04-01 13:04:30
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