不知火に落ち度はない５５（浜風）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

さて、突然ですが手短に更新です #落ちぬい

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ぬいぬい。今日暇なんすけど」 「そうですか。書類はまだありますが？」 「スロの設定アツくなる日っぽいんだけどさ」 「そうですか。働け」 秘書艦へ復帰して、数日。 不知火は前以上のドーベルマンとして俺の仕事を管理している。 可愛げは以前より減った。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

本日の深海棲艦指数は１２。 梅雨を前にして連中もちょっぴりやる気を失ってるご様子である。 現状2組出撃体制を取ってるが出番はなさそうだ。 そんなわけで俺も梅雨を迎える前にちょっくら、外出でもしたいわけだが。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「不知火の顔を見ても、書類は進みませんが」 御覧の通りのありさまでして。 そこで提案をしてみる俺がいましてな。 「可愛い顔してくれたらやる気出るかも」 「働け」 要求を蹴られた。 訓練に投げ込んだプチドーベルマンは人の心を無くしたようである。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「とは言えな。これホントに俺が見るべき奴なの？ 関係ない基地の道路使用申請とかメールでよかろうに」 「それを見ないから不知火がわざわざ出力しています」 地球に厳しい対応が来ちゃったぞ。 サインまでして渡さなきゃ納得しない顔だ。 前より融通が利かない。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

とりあえず、前の災害出動の際の事後処理書類は終わってる。 後残ってんのは、いわゆる残弾の確認書類とかその辺だけである。 以前なら月末にでもそれを確認して終わらせればいいわけなんだが。 そこで不知火はこうして、逐一確認用のタスクを増やしてくれるわけで。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

おかげで北上様ンときのようなパチ屋外出や、早霜の時のような野暮用外出は使えなくなってる。 前は不知火もその辺ちょっとルーズにしてくれてたと思うのだが。 今は俺を椅子に縛り付けて、他所に出さないのが大切だと学んだと見える。 終わったらまた追加されるんだ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「司令官に人権くだち。こんなに目を酷使したら老眼になっちまう」 「ではこれをどうぞ」 ぽんっと何かを投げつけられる。 キャッチして何かと見てみたところ、赤い目薬サンテなんとかさんであった。 慈悲などなかった。 慈悲などマジでなかった。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「うーん。しかしなー、この手の書類ってやっぱメールで見てはいおしまい的な重要度だろ？」 「きちんと見てない証拠ですね。備品申請書が入ってます」 「マジで？ えーと、陽炎じゃんこれ」 スポーツドリンク。 おう、これは確かに必要な奴だわ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

しっかりしてんなあいつ。一応一括で発注はかけるんだが、ちゃーんと自前で必要数集めて申請するとは。 「不知火。そういう書類は前まとめてくれてなかったっけ？」 「前は前、今は今です」 プリントアウトされる書類の音がまた聞こえる。 オーケー読めてきた。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

こりゃ誰かの入れ知恵だ。 俺を椅子に縛り付けるために必要書類と不要書類を混在させて来てンな。 この中の9割は俺んとっちゃ見なくていい奴。 建前は俺宛で、実際は秘書艦が見るやつばっかだ。 つまり、だ。 隙見てサボっちまって問題ない。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

んじゃま早速、ぺらぺらぺらーっと。 ほうほう。ざっと見たところ重要書類は10枚程度。 ハンコ押したら終了はうち8枚。 賞味1時間いらねーぐらいの内容である。 さて、口実としてはどうするべきか。 「何か？」 おう。視線に気づくとはな。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「いんや。そいやおやっさんが話があるっつーの、抜けててな」 「どうぞ」 ぽいっと投げつけられるのは、工廠課直通のダイヤルがすでに入力済みPHSだ。 うん。そう来ると思ったからまずキャッチ。 「ほいパス」 「は？」 顔面コースで投げ返す。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そう来るとは思わなかった不知火。 そりゃそうだ。今までの俺なら絶対やらなかった行動だもんな。 だが、不知火が進化したのに合わせて俺も進化する必要がある。 従来ならやらない方向の対応に不知火は、僅かに慌てるもPHSをキャッチ。 それが隙である。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「んじゃ、ちょっくら話聞いてくるわ。留守よろしく」 がらっと窓開け、レッツダイブ。 「司令！！」 そして不知火は迷わず銃を抜きやがった。 おいおい神通教室加減しようぜ？ だが、空中に飛んだ俺の体を狙うは難しい。 さて、自由落下する前にっと。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

既に出しておいたひも付きフックの先端を窓の縁にかけて、そのままぎゅーんと一気に降りる。 耐加重1t超のザイロンヒモって超便利。 机の中においといても、糸巻にまいときゃ何に使うかバレません。 脱走することが必要な仕事におススメ！ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ま、下手に扱うと手とかめっちゃ切れるんですけどねこのヒモ。 そこはそれでテクもあるわけですよ。例えばこの超頑丈な仕込みつきベルトにひっかけとくとか。 ホントはロープでもおいといて一気に滑り降りたかったんだけどしょーがない。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「つーわけで行ってくるわ。留守番よろしく、今日はもどんねーからさ」 「明日覚えておいてください」 ハシビロコウ先生もびっくりの視線で俺をにらみ、不知火は矛を収めたご様子。 さあ、明日が怖いが今日はこっから1日サボりである。 んじゃ畑の様子でも見るか。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そんなわけで俺は、ひとまず敷地内にこっそり作ってある畑へと向かって行ったのであった。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「さて、どうすっかなーこれ」 雪風のひまわりよし。 新しく植えたニンジンも順調。 キュウリはもうちょいで育つとして── 今この畑ではすんげえ勢いで勢力圏を伸ばしてる存在がある。 そう、この時期旬の食べ物。 スーパーで買うと案外高いアレ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ほんと誰だよシソの種植えたやつ」 ごらん。この緑に覆われつつある土地を。 最初は一本二本ならいっかなーと思ったわけだが。 今ではびっしり生えて種をガンガン落として大繁殖なう。 間引いても間引いても次から次に出てきやがる。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

いや、最初はさ。シソ生えてっから食堂で適度に取っていいって話はしたんだわ。 でも用途って限られるから、あんまり詰まれる機会もなかったんだわ。 そして増える一方で減りもしないシソと、専業農家ではない提督。 この物量作戦は考えてなかったわ。マジで。 #不知火に落ち度はない