不知火に落ち度はない55(浜風)
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俺らの世代にはよくある『洋製品は強い、カルシウム万歳』という宗教である。 この宗教はほどよく俺らの世代に与えられ、結果としてやんちゃ小僧を無駄に作った。 今がどうなのかはわからないが、昔はそんなもんだったわけで。 浜風の育ちは俺の時代と似てるぽい。 #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:13:07![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「さて。じゃあそろそろ私も食べますね。冷蔵庫からタッパー出してもらえます? その一番上の青いの」 「おうよ。……って浜風、今日はご飯大盛りなの?」 「最強のご飯のお友ついてますから」 珍しくご飯てんこ盛りのお茶碗が見える。 すごい嬉しそうである。 #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:18:02![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「兵頭さんは、どうします? ごはんは」 「あー、じゃあ折角だから貰うか。並盛で」 と、言うと。浜風が意地悪そうな笑顔を浮かべた──すごいレアな表情だぞこれ。 「いいんですね、それでほんとに?」 「お、おう?」 何事であるか。 #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:19:57![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「ではいただきます」 「おう。いただきます」 ほどよくご飯が並んだところで、行儀よく互いに手を合わせる。 俺はビール片手に、浜風はてんこもりご飯の前で。 はて、あのご飯のボリュームでおかず足りるのか? などという心配は杞憂だった。 #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:21:36![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「じゃーん。これがメインディッシュなんです」 「え、それなの?」 タッパーを意気揚々とあけるとそこには──ニンニク醤油に浸したしそ? え、それがホントにメインなの? 今までの豪華なお肉としそのコラボの後で見ると、それはとても貧相であった。 #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:23:14![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「これをご飯にのっけて──あーん」 はむ、とその小さなお口を開けて、ご飯ごとしそをぱくつく浜風。 うむ。並んでるおかずと見比べても、到底それがこの他の料理に匹敵するようには見えないんだが。 しかし、浜風の反応は── #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:25:45![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「んん~っ♥ やっぱりこれですこれ! この時期だけの贅沢っ♥」 キラキラであった。すごいキラキラであった。 なに、そんなにヤバいのこれ? そんなうまいのこれ? さっそく箸を伸ばして俺もご飯の上に乗っけてぱくりと。 #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:27:04![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
一見ただのシンプルなしょうゆ漬けに見えるが、ごま油の風味とニンニクの癖のあるうまみがドッキングして、まったく新しい調味液漬け野菜を誕生させてやがる。 なんだよこれ。酒にも絶対あうし、米にも100%合う。 これで包んで食うだけで、もりもりごはん減るぞ? #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:29:23![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「さらに、これです! じゃーん」 「お。なにそれ?」 「しそをぜいたくに使った、和風しそジェノベーゼソースです!」 珈琲ビンに入った緑のソース。 浜風は嬉しげにそれをご飯に乗っけていく。 おいおいおい。その物体Xどんなパワーあるの? #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:31:52![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「ごはんにもこれ、合うんですよー。大元はしそ味噌ですから!」 「ほうほうほう。シソ味噌なあ」 喰ったことねえけど、どんなもんかと実験。 浜風をまねてちょん、っとごはんに乗っけたらぱくっとな。 っておいおいおい。 #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:33:47![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「浜風。これ、チーズ入れてる?」 「大正解です♥」 「チーズと味噌とゴマでオリーブオイルってどんだけ、和洋折衷だよ。うますぎだろこれ」 しかも塩と唐辛子も入ってるのか、これがぴりっとと効いてとにかくうまい。 かけるラー油越えがここに誕生してる。 #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:35:47![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「これ、サラダにかけてもいいですし、お豆腐にかけてもおいしいんですよ?」 「わかる。超わかる。和風豆腐じゃなくて、完全洋風豆腐なるもんな」 というわけで、素早く用意されてる豆腐にレッツダイブ。 豆腐の白に緑が映えて──さあ、一口もぐっと。 #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:37:37![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
うっわ。すっげー。これやべえって。 洋風豆腐まっしぐら。シェフを呼べの勢いで食える新感覚豆腐誕生でござる。 あっさりした豆腐が、コースメニューの仲間入りですよ? イタリアン好きのモグリなら、確実中毒コースである。 だが──そこで見落とした。 #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:40:17![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
浜風が不敵な──かかったなとでも言いたげな笑みを浮かべていたのを。 「でも私はこっちの方が好きですよ?」 と、言いながら、さきほどのしそ醤油をかけたのである。 真っ白い豆腐の上に、かけたのである。 くそ。そうか、布石だったのか! #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:42:16![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「んんん~♥ あっさり目のこの味が一番好きです、やっぱり♥」 くっそ、キラキラである。 すごい、キラキラである。 そりゃうめえわな!? 冷たくて白い豆腐にあっさり酸味のしそ醤油が合わないわけねーもん!! むしろ一番順当な使い方だもんよ!! #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:44:26![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「俺にもよこせ、その豆腐」 「いいですよ、はいどーぞ♥」 そこで第二の罠発動。 そう、思考停止した俺は、さらに下手を踏んだ。 かけりゃいいじゃん。俺も今から普通にしそ醤油かけりゃいいじゃん。 だが、ぱくりと口に運び── #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:45:43![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
ああもうこれうっめーわ!! だめだわ! 日本酒コーナー一直線だわ! 豆腐のうまみにキレが加わって最強だっつの!! さらなるおかわりを求めようとする俺に対し、浜風はもう一段の手を使ってきた。 すっと、引いたのである。しそ醤油の入ったタッパーを。 #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:47:17![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「浜風……そりゃ、なんのつもりだ?」 「兵頭さん。冷静になった方がいいですよ?」 冷静に? 何がだ。 一体俺に何をさせたいんだ? 浜風は目を細めて、そっとささやいた。 #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:48:43![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「冷蔵庫に納豆あります」 「!!!!!!?」 ここで、そんなことを持ち出しやがった!? なんてこった!! 「それを踏まえたうえで、ご飯足ります?」 「……。」 茶碗を見るとすでに、飯の量は三分の一。 #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:50:36![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
足りない。絶対足りない。 このおかず群と、しそソースにしそ醤油。 それにご飯のお供の、納豆様。 明らかに、飯は足りてない。 浜風が最初からてんこ盛りを選択してたのはそういう事。 自分が作るメニューに通常の飯量では足りないと、わかりきっていたのである。 #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:52:19![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「お代わり──お願いします」 俺はそっと、飯が尽きそうなお茶碗を差し出し。 浜風はにっこり笑って、自分の勝利を宣言したのである。 #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:54:11![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
そんなわけで今日はそんな日。 しその偉大さと、飯の上手さを知った、そんな日であった。 しそ、すごい。 しそ、つよい。 しばらくはしそ醤油が欲しくて、時折浜風に頼みに行く俺がいたとだけ言っておこう。 #不知火に落ち度はない
2017-06-24 12:55:42あとがき&おまけ
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ってわけでおしまい。 浜風のしそレシピはまだまだあったりすんじゃ。 れんこんのはさみ揚げに入れる、和風なんちゃってジェノベーゼソースを豚肉にあわせて豪華なソテーなどなど。 #落ちぬい
2017-06-24 12:56:49