説明深度の錯覚と、極端な政治指向

人は自分がどれだけ理解しているか錯覚する傾向がある。この錯覚を解消すると、政治思想も中立的になる傾向がある。
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Podoro @podoron

【人は,自分がどれだけ理解しているか誤解する】 物の仕組みなどについて,実はあまり理解していないのに「自分は分かってる」と思ってしまう心理現象。これが,政治の極端な支持/反対にもつながっており,政策内容を説明させ,無知を自覚させると政治指向がより中立的になるという研究結果。1/

2017-06-30 12:28:02
Podoro @podoron

好奇心旺盛な子供の相手をしていると,世界の様々な物事について実は自分がいかに無知であったか痛感させられますね。 子供に「どうして◯◯なの?なんでそうなるの?」と質問され,大人の威厳を見せてやろうといざ説明し始めると,実はその仕組みを自分もよく分ってなかった事に気付かされます。2/

2017-06-30 12:29:15
Podoro @podoron

これが「Illusion of Explanatory Depth(説明深度の錯覚)」という心理現象です。(日本語訳は探したが見当たらなかったので私の仮訳です) この「説明深度の錯覚」がどの様におきるか,それが極端な政治指向にどう影響しているかの研究結果を簡単にまとめます。3/

2017-06-30 12:31:07
Podoro @podoron

実験は, 【1】被験者に,「あなたは◯◯の仕組みについてどれだけ知っていますが?」という質問をし,自分の理解度を1~7のスコアで答えさせる。◯◯は,洋服のジッパー,水洗トイレ,ヘリコプターなど。 【2】それぞれの仕組みについて,詳しい説明を自分で書いてもらう。 4/

2017-06-30 12:32:48
Podoro @podoron

【3】仕組み理解の核心部分に関わるクイズに,答えの詳しい説明を書いてもらう。(e.g.ヘリコプターはホバリングと前進をどう切り替える?) 【4】それぞれの仕組みについての簡潔な説明を読んでもらう。 5/

2017-06-30 12:35:08
Podoro @podoron

【2】~【4】のステップ毎にも自分の理解度を再評価してもらい,【4】では“事前の”理解度(T4)と,説明を読んだ後の理解度(T5)を評価してもらう。 計5回の評価で,仕組みの理解度についての自己評価がどの様に変化したかを調べました。 6/

2017-06-30 12:38:02
Podoro @podoron

グラフは理解度の自己評価の変化。 事前の自己評価(T1)から,説明(T2),質問(T3)と評価が下がっています。 つまり,人はいざ説明しようとしてはじめて自分が知らないことに気づくのです。 7/ pic.twitter.com/DcyCdUfKiS

2017-06-30 12:43:09
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Podoro @podoron

この「IOED(説明深度の錯覚)」は,極端な政治指向にも影響しているという研究結果が出ています。 政策の具体的な中身・影響について実はよく理解していないのに,「自分は理解している」と誤解してしまうからこそ,盲目的な支持/無理筋の反対をしてしまう訳です。 8/

2017-06-30 12:47:06
Podoro @podoron

実験1では,前の研究と同様に,被験者に政府のいくかの政策の“仕組み・効果”について詳しい説明を書いてもらい, 説明前と後に「政策をどれだけ理解しているか/どれだけ支持するか」を1~7のスコアで自己評価させました。 9/

2017-06-30 12:48:57
Podoro @podoron

結果,政策の仕組み・効果の説明後に,前回と同様に理解度の自己評価が大幅に下がっただけでなく, 各政策への支持・反対がよりマイルドに,より中立的になりました(1~と~7がそれぞれ4に近づいた)。 10/

2017-06-30 12:52:48
Podoro @podoron

実験2では,政策をなぜ支持・反対するかその“理由”を挙げてもらいましたが,極端な指向を弱める効果はありませんでした。 先行研究では,支持・反対する理由を挙げさせると,政治指向がより先鋭化するという研究結果も出ています。理由を考える事で確信が深まるからだと考えられています。11/

2017-06-30 12:55:23
Podoro @podoron

なぜこの様な錯覚が起きるのか? 原因の一つは,自分に間違った質問をしてしまうからだと考えられています。 メタ認知レベルおいて,自分に間違ったレベルの質問をする事で,その質問から「自分は理解している」というを誤解を導いてしまうのです。 12/

2017-06-30 13:02:15
Podoro @podoron

例えば,自転車の仕組みについて聞かれた時に,「ペダルとギアの関係,ギアチェンジ,ブレーキがどう動くか分かるか?」と自分に聞く代わりに, 「自転車に乗ったことあるか?どれだけ身近?パーツの名前挙げられる?」といった質問をしてしまい,自分の理解度を錯覚してしまう訳です。 13/ pic.twitter.com/sroRF99amt

2017-06-30 13:04:23
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Podoro @podoron

政治問題についても,「候補者/政党の政策の違いが分かるか?」という質問に対して,「自分はよく理解した上で判断している」と思っていても, 政策の中身・仕組みについてではなく,「見た目の雰囲気,擁護/批判してる人が好きか嫌いか」といったレベルの判断と取り違えてしまうのです。 14/ pic.twitter.com/zUciMwzZGX

2017-06-30 13:08:27
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Podoro @podoron

そして,そういった判断は実際の具体的な内容ではなく,「処理流暢性」が影響してしまう事が分かっています。(同じ研究者の研究) 「政策で判断している」と言っていても,実際は見た目などが強く影響しているという研究結果が山程出ています。15/twitter.com/podoron/status…

2017-06-30 13:13:56
Podoro @podoron

「分かりやすい=内容も正しい」など、【脳が処理しやすいものは、ポジティブに判断するバイアスがかかる。vice versa.】という人間の認知システムである『Processing fluency/処理流暢性』の研究結果を解説しました。 togetter.com/li/1039919

2016-10-24 00:31:06
Podoro @podoron

民主主義は,人々が自らの「意志」を表明する事によって成り立っていますが,その「意志」が実は誤解・無知によって形成されているのであれば,民主主義の仕組みは土台から崩れてしまいます。 16/

2017-06-30 13:14:58
Podoro @podoron

人は,自分の知識や能力を過信しがちです。 そして、多くの場合,最も無知な者が最も自分を過信しているものです。 実際に,実験のテスト成績下位1/4が,クラスの他生徒の58%より自分の方がよく出来たと思ったといった研究結果などが出ています。 17/

2017-06-30 13:24:01
Podoro @podoron

まとめると, ・人は,自分がどれだけ理解しているか誤解する。 ・具体的に説明しようとした時にはじめて,自分が理解してないことに気付く。 ・極端な政治指向,盲目的な支持/無理筋の反対は,政策の仕組みや効果などを実はよく理解してないが事が影響している。 18/

2017-06-30 13:25:35
Podoro @podoron

・支持/反対する理由を挙げさせると,政治指向は変わらないかより先鋭化する。 ・政策の仕組みや効果を自分で説明させると,自分の無知に気付き,政治指向がより中立的になる。 昨今の政治的分断を解消する一つのヒントとなる研究結果ではないでしょうか。 20/

2017-06-30 13:27:18