日向倶楽部世界旅行編第7話「パプアニューギニア・ウェワクの一日」

ジャングルに現れた謎の襲撃者たちを振り切り、日向達は負傷したジャンボを預ける為ウェワクの病院へとやって来た。 病院にジャンボを預け、日向達はホテルへ戻ろうとするが・・・
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三隈グループ @Mikuma_company

「そうそう、筆記試験の成績も重視されるそうですが…」 「そうですね、大和型希望者は国公立大学と同じで共通一次の成績が必要なんです。」 高校生と一緒に受けて来ました、と笑った 「元々勉強は得意だったんですけど、当時は艦娘用の参考書が充実してなかったので、そこが大変でしたね。」

2017-07-25 22:19:16
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多くの戦艦娘は、運動試験よりも筆記試験の成績が重要視されやすい。 戦艦娘の艤装は複雑で覚える事が多く、学校の勉強も出来ない人間に任せるわけにはいかないのだ。 大和型も例外ではなく、筆記試験のボーダーは最低九割、ついでに共通一次の成績による足切りも存在する。

2017-07-25 22:20:03
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「大和型には最新式のコンピュータが内蔵されていて、それはもう色々とやってくれるんです、でもコンピュータに指示を出すのは人間なので…」 自分より頭の良い物に指示を出すのは大変で、コンピュータとタメを張れる程度の頭や学習能力は持っている必要があるとの事だった。

2017-07-25 22:21:04
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「なるほど…そうそう、大和型は維持費などがかなりかかると聞きましたが…本当なんでありますか?」 大和型といえば必ずこの話になる、ヤマトは頷いた。 「よく燃料が大量に必要と言われるんですけど、実はそうでも無いんです。」 「えっ、そうなんですか。」 「ええ。」

2017-07-25 22:22:01
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ヤマトによると大和型は兎にも角にも構造が複雑で、そこからくる整備の難しさにコストがかかるのだという。 当然整備に当たるのは優秀な技師、人件費も並では無い。 「私が整備してるわけでは無いので…すみません、これ以上詳しい事は分かりません。」 「いえいえ、ありがとうございます。」

2017-07-25 22:23:02
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その後も取材から何気ない世間話、所属も艦種も違う二人の会話は盛り上がり、気付けばケーキも注文していた。 「あきつ丸さんはどうして艦娘に?」 「あはは…自分はお金が必要だったので、それで。」 あきつ丸が着任した頃は、艦娘になるだけでかなりの大金が舞い込む時世だった。

2017-07-25 22:24:01
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金目当てなどというと悪い印象も持たれがちなのだが、ヤマトは感心していた。 「立派な事だと思いますよ、いつだってお金は必要ですからね。」 「ははは…ありがとうございます。ヤマトさんはどういう理由で?」 大和型になるくらいなのだから、相当な志や根気があったのは明白だ。

2017-07-25 22:25:02
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「私、昔艦娘の方に助けて頂いたんです。強くて、勇敢で、凄かった…」 助けてもらった艦娘に憧れる、というのは珍しい話では無い、〜型の◯◯を志望する者が絶えない理由だ。 「一時は普通に過ごしてたんです、でもあの怪物を一蹴する姿が忘れられなくて、大学2年の頃に目指そう、って」

2017-07-25 22:26:02
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あきつ丸は黙って聞いていた 「それで、一番強い、一番みんなを守れる、だから大和型を目指そうって思って…」 が、そのうちにヤマトの声が震え出したのに彼女は気が付いた。 「…でも私が着任した頃には、もう主要な戦いが終わっていてね、私の、大和型の出る幕なんて、無かった…」

2017-07-25 22:27:04
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ヤマトは震える手で紅茶を飲む 「それって良い事なんですよね、武器なんて使わずに済むならそれが一番の幸せなんですから。」 陶器のぶつかり合う音が響く 「だけど、朝起きて、費用がかかるから小さなトレーニングだけして、出撃もなくて…」 肩が小動物のように小刻みに震える

2017-07-25 22:28:02
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「そんな風に過ごしてると、私、何のために居るんだろうって、分からなくなっちゃって…!」 いよいよ彼女は泣き出してしまった、あきつ丸はもう良いと止めようとしたが、彼女の口からは決壊したダムの様に言葉が流れ出てくる 「毎日毎日変わらない朝が来て、海は静かで、何も起きなくて!」

2017-07-25 22:29:02
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言葉と嘆きは止まらない 「なんだかバカにされてる様な気がして、何かが来て全部燃えてしまえば良いって思えて、そんな風に考える自分も嫌で…!」 「ヤマトさん…」 あきつ丸はかける言葉が思いつかず、一言名前を呼ぶ事しか出来なかった。

2017-07-25 22:30:04
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そしてひとしきり泣いた後、ヤマトは落ち着きを取り戻した。 「ごめんなさい、こういう話って滅多にしないんですけど、つい…」 「いえ、平気であります。」 そう言ってあきつ丸は薄くなったアイスコーヒーを飲む、色々と凄いものを聞いてしまった気分だった。

2017-07-25 22:31:02
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その後ヤマトの支払いで会計を済ませ、二人は喫茶店を出た。 「私はこちらなのでここで失礼します、今日は色々とありがとうございました。」 ヤマトは深々と頭を下げる 「いえ、自分も貴重なお話を聞かせて頂いたので、ありがとうございます。」 あきつ丸も同じ様にする

2017-07-25 22:32:01
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「では、さようなら…」 ヤマトはそう言って歩き始める、その背中を見てあきつ丸は彼女を呼び止めた。 「ヤマトさん!」 そこまで言って口ごもり、あきつ丸は精一杯言葉を押し出した 「…お達者で。」 「…あきつ丸さんも、お元気で。」 小さく一礼し、ヤマトは雑踏の中へと消えた。

2017-07-25 22:33:09
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(何の為に居る…でありますか、自分も何の為に居るんでありましょうなぁ…) 日向や三隈があの場にいたら彼女にかけられる言葉があったのだろうか、自分にかけられる言葉はなかったのか、小さな後悔と複雑な思いを胸中に収め、あきつ丸は反対側へと歩き出した。 つづく

2017-07-25 22:34:02
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【艦娘】 深海棲艦と戦う戦士、本作では艤装を付けた人間の総称でもある。 対深海棲艦の反攻作戦に投入され、それが落ち着いた現在では輸送船の護衛、観光ガイド、海賊の鎮圧など様々な場面で活躍している。 その為、軍人というよりは消防士などに近く、比較的ポピュラーな職業と化している。

2017-07-25 22:35:03
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【艤装】 艦娘の装備の呼称、筋肉や指の僅かな動きで操作し、その性質は兵器より楽器に近い。 内蔵された学習型コンピュータが装着者の癖などを逐一記録し、艤装は艦娘と共に成長、人器一体へと近づいて行く。 共に経験を積んだ艤装は、やがて艦娘にとって最高の戦友となるのだ。

2017-07-25 22:36:20
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【艦種】 普通の人間は化け物と進んで戦いたがらない、故に開戦初期は志願者の全てを艦娘として戦えるようにする必要があった。 そこで全員の適性に合うよう、様々な受け皿を用意した結果が、多種多様な艦種と艤装である。 これらは結果として、艦娘名という多くのコードネームを生み出した。

2017-07-25 22:37:11
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【艦娘になろう】 現在、艦娘になる為には運動能力試験と筆記試験を受ける必要がある、これらの成績によってどの艤装を付けるか…即ちどの艦娘になる事が出来るかの適性を測るのである。 緒戦で輩出された個性豊かなエース艦娘の存在により、戦艦や空母だけでなくほぼ全ての艦種に一定の人気がある。

2017-07-25 22:38:02
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【日向】 トラック泊地の航空戦艦娘、本作の主人公の1人。 特務部隊日向倶楽部の隊長、好奇心が非常に強く様々な事に首を突っ込む。その為度々トラブルに巻き込まれるが、それを切り抜けられる能力も備えている人物。 赤道近くでは少々暑い制服を脱ぎ、ラフな私服で旅に臨む。 pic.twitter.com/fTBqDgiopk

2017-07-25 22:39:05
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