日向倶楽部世界旅行編第26話「深く潜み、熱く躍動する」

ブルネイに向かう航海の最中深海棲艦と遭遇した日向達。鈴谷、あきつ丸、初霜が迎撃に向かうが、功を焦ったあきつ丸が暴走し窮地に陥る。だがそこに、金属バットを持った武蔵が駆けつけた!
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三隈グループ @Mikuma_company

【前回の日向倶楽部】 扶桑です。 久々に私達のお話…と言ったのに、私が喋ったのはここだけでした、そんな…。 ソロモン諸島に到着した私達は、ブルネイ調査隊の武蔵さんによってブルネイに招待される事となりました、ですがその道中深海棲艦が現れ、初霜さん、あきつ丸さん、鈴谷さんが戦

2017-12-12 21:30:27
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【前回の日向倶楽部その2】 補給の為ソロモン中央基地に立ち寄ったヒューガリアンだが、いくつかの物資が足りず立往生する。そんな彼等に戦艦娘「武蔵」が声をかけ、一行はブルネイ泊地を目指す事となる。 その航海の最中に深海棲艦が出現、功を焦るあきつ丸は窮地に陥ったが…

2017-12-12 21:31:20
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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第26話「深く潜み、熱く躍動する」

2017-12-12 21:32:04
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〜〜 「さて…後はこの武蔵に任せて貰おうか。」 武蔵は金属バットでトントンと肩を叩き、サングラス越しの真っ赤な目で戦艦棲姫を睨みつける。 が、すぐに背後のあきつ丸達に目を向けた 「…主らは船に戻れ、もし動けないなら私の部下達を寄越すが、どうだ?」

2017-12-12 21:32:19
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二人は首を横に振る、共にかなりのダメージを受けていたが、動けないわけではない。 「そうか、なら良い。」 答えを確認した武蔵はバットをクルクルと回し、構える。 今の彼女に主砲はない、副砲もない、機銃もない、得物は鬼の金棒のように持った金属バットただ一つ。

2017-12-12 21:33:16
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だがそれだけで十分!彼女は戦艦棲姫へと突撃した! 「ククッ…雑魚よりは良いものを持っているだろう…落胆させるなよ?」 口を吊り上げ武蔵はカッと目を見開く、接近に気が付いた戦艦棲姫は主砲をぶちかますが、彼女は素早い動きでそれらを回避、ぐんぐん距離を詰める!

2017-12-12 21:34:16
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そしてそのまま!小手調べとばかりに金属バットを戦艦棲姫の異形部分に叩きつけた!黒いそこにヒビが入り、それを構成していた物体が弾け飛ぶ! 「…!…!!?」 異形が破損した事に取り乱したのか、戦艦棲姫は武蔵を指差しながら口を開いたり閉じたりして何かを訴える。

2017-12-12 21:35:27
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その様子を武蔵は推し量る 「ほう…目覚めたばかりか、声の出し方もよく分かっていないらしいな。」 その間にも彼女は金属バットを振り続ける、武装にあたる異形部は無残にへこみ、その攻撃力を失った。 これで周囲への危険は消失、海には白い肌をした人型の部分だけが残された。

2017-12-12 21:36:23
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「…!!…!?」 残された戦艦棲姫はますます錯乱し、手や首をめちゃめちゃに動かす。 その滑稽な様子を武蔵は鼻で笑い、棲姫の喉をバットでど突いた 「分からないか?ココを使うんだぜ、出来るだろ?」 「…ァ!?」 仰け反った棲姫は口と喉を抑え、やがて声を上げて喋り出した。

2017-12-12 21:37:19
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「ココハドコダ!?キサマ、ナンダ!?」 イントネーションのおかしな日本語が海上に響く、武蔵はそれを懐かしむように笑い、バットを棲姫の腕に叩きつける。 「さあ、な!私も正直よく分からない。」 棲姫の腕が弾け飛び海の中に沈む、だが棲姫は気にも留めず喋り続ける。

2017-12-12 21:38:16
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「キサマオナジカ!?ワタシハダレダ!?ナンダ、コレハ!?」 「ハッハッハッハッハッハ!まあそうだよな、それが普通だぜ、当たり前だ。汝(うぬ)は何もおかしくない、当然の事を言っているだけだ。」 武蔵は笑いながら打撃の応酬、棲姫の腕がもう一本弾け飛び、遂に棲姫は両腕を失った。

2017-12-12 21:39:17
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そして次の瞬間! 「フンッ!」 武蔵の大きな手が戦艦棲姫の身体を貫いた! 「ア…?ァ…?」 「まあ、だからどうしたって話だ、私は明日の陽を見る、お前は消える、あばよ。」 武蔵は棲姫の体内を弄るように腕を動かすと硬い何かを掴み取り、勢いよくそれを引き抜いた。

2017-12-12 21:40:17
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同時に棲姫は沈黙し動きを止める、そこをすかさずバットで殴りつけると、戦艦棲姫だったものは崩れ、塵芥となって海の底へ消えていった。 「クククッ…恨んでくれるなよ?まあ、恨むだけのモノを持ててたかは知らないけどな。」 武蔵は愉快で仕方がないといった笑みを浮かべた

2017-12-12 21:41:15
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そして引き抜いた物体を見て呟く 「黒か…本当に生まれたてだったらしいな、これなら恨む程まで行っていないだろう…ククッ…クククッ…」 その物体を、ゴルフボール程の大きさをした石を太陽にかざす、それは寸分の光も通さず、彼女の顔に影を作っていた。

2017-12-12 21:42:15
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「役に立つかは微妙だが…あれば使いようもあるだろう、戻るか」 それを懐にしまい武蔵は身を翻す、すると一人の艦娘が自分を凝視している事に気が付いた。 「なんだ、主は戻っていなかったのか、怪我はないか?」 「ええ、大丈夫です。」 艦娘は、初霜はぎこちなく首を縦に振った。

2017-12-12 21:43:18
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「すごいですね…火器も無しに姫型を倒すなんて。」 「何、鍛えていれば簡単さ、ハッハッハッハッハッハ!」 初霜の言葉を武蔵は大きな声で笑い、金属バットを肩に担いだ。 「さて、もう敵はいないだろう?戻ろうじゃないか。」 鬼退治の英雄のように武蔵は海を闊歩する

2017-12-12 21:44:22
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そんな彼女の背を初霜はジッと見つめていた 「敵は…ええ…居ないわ…。」 噛みしめるように呟き、彼女も後を追ってヒューガリアンへ帰還した。 やがて誰もいなくなった海は天気が悪くなり、温暖なこの地には似合わぬ冷たい風がひゅうひゅうと吹き始めた。 〜〜

2017-12-12 21:45:18
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〜〜 戦闘が終わった後は大きなトラブルもなく航海が続き、二隻の船は静かな夜を迎えた、ヒューガリアンもその日の夕食を済ませ、各々が部屋で好きなように過ごしている。 そしてその中を、七人ではあまりに持て余す大きな船内を、あきつ丸は一人、歩いていた。

2017-12-12 21:46:18
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節電の為にぼんやりとした明かりしかない廊下、飾られたオシャレな絵画も何処か不気味に思え、ただでさえ迷子になりがちな彼女はひどい心細さを覚える。 それに耐え、彼女は一つの扉の前に辿り着く、ノブには奇抜な土産物のストラップと「鈴谷」と書かれたタグがぶら下がっていた。

2017-12-12 21:47:15
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彼女がここに来たのは言うまでもない、昼の戦闘について謝りに来たのだ。 自分が突っ走って怪我をするだけならまだしも今回は味方を巻き込んでしまった、日向や三隈は励ますような言葉をかけてくれたが、功を焦り大きなミスを犯したのは揺るぎない事実だった。

2017-12-12 21:48:17
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何より当の鈴谷とはきちんと話せていない、だからこそ一対一で話が出来るよう、こうして薄暗い廊下を歩いて来たのだ。 意を決してチャイムに手をかける、だが押すのは一瞬躊躇った、ミスを責め立てられるのではないか、何かされるのではないか、そういう不安が手を止めさせた。

2017-12-12 21:49:15
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しかしここまで来たのだ、あきつ丸は改めて決意し、チャイムを鳴らした。 キンコン、短い音が鳴り、中から気の抜けた声が聞こえるとドアが開いた 「うーい、誰〜?隊長さーン?」 ゆるいタンクトップにバスタオルを羽織っに鈴谷が現れる、彼女はあきつ丸の顔を見るなり口を開いた。

2017-12-12 21:50:17
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「ぬぉ〜あきつ丸ちゃんかー、怪我大丈夫?」 鈴谷は歯を見せてにんまり笑い、あきつ丸の全身を観察する。 「うーん、怪我は無さそう?大事にならなくて良かった良かっタ。」 ウンウンと頷く鈴谷、その態度はあきつ丸の思っていたのとは随分違っていた

2017-12-12 21:51:15
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昼の話をそれ以上するでもなく彼女はへらへらと訊ねる。 「でー、どうしたの?なんか飲む?まあ、コーラしかないんだけド。」 故にあきつ丸は拍子抜けしたように立ち尽くし、黙っていた、そんな彼女を鈴谷は部屋へ招き入れる。 「てか入んなよ、立ち話も何だしさ。」

2017-12-12 21:52:15