日向倶楽部世界旅行編第26話「深く潜み、熱く躍動する」

ブルネイに向かう航海の最中深海棲艦と遭遇した日向達。鈴谷、あきつ丸、初霜が迎撃に向かうが、功を焦ったあきつ丸が暴走し窮地に陥る。だがそこに、金属バットを持った武蔵が駆けつけた!
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三隈グループ @Mikuma_company

冷たく燃える復讐心が狙いを定め、トリガーを引く、何発もの銃弾が武蔵に飛び、その全てが右手に掠め取られる。 五発撃ったところで初霜は持っていた拳銃を放り捨て、新しい銃を撃ち始める、ひたすらに、撃つ。 「随分肝が座っているな、人間はやはり個性的だ、ズルいぞ?」

2017-12-12 22:18:15
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話す間も撃ち続けられる弾丸を容易く掴み、懐にしまってゆく武蔵、気付けば初霜は全ての弾丸を撃ち尽くしていた。 それを見て武蔵はニヤリと笑い、内ポケットから何かを取り出した。 「ククッ…折角の機会なんだ、こいつも使ってみろ。」 一丁の拳銃が初霜の足元に投げられる。

2017-12-12 22:19:23
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「五発入っている、私は五歩で汝に近付く、後は分かるな?」 「…!」 初霜は拾い上げ、すぐさま撃鉄を起こす 「試した事はないがヒトの形をしてるんだ、ここかここを撃てば、止まるんじゃないか?」 眉間と心臓を指差し笑う武蔵、初霜は無言で狙いを定め、指に力を込めた

2017-12-12 22:20:16
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一発目、右手が取る 「まず一歩だ…」 二発目、やはり右手が取る 「二歩目、次で半分だぜ。」 三発目、足元を狙う、踏み潰される 「ほう…悪くないが、そいつは無駄だな、三歩目だ。」 四発目、またも右手 「四歩目…次でラストだ、さあ…どこを撃つ?」 武蔵はニタリと笑う

2017-12-12 22:21:15
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その瞬間!初霜は活路を見出すべく駆け出した! が! 「うぐっ…!」 「自分から来てどこへ行く…?ン…?」 武蔵の右手が初霜の首を掴み、大樹の幹に叩きつけた! 目にも留まらぬ圧倒的な速さ、初霜は全身を打つ鈍い痛みと締め上げられる首で、初めて何が起きたのかを理解した!

2017-12-12 22:22:20
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「五発目が残っているだろ…?撃て、撃ってみろ、汝は生きている、まだ引き金を引けるぞ?さあ撃て…」 右手でか細い首を締め上げ、武蔵は初霜を追い詰める。 「こ…の…!」 「それとも私の物になるか?この世界は飽きない…成体は触れたが、汝の様な身体はまだ未知だ…興味深い…」

2017-12-12 22:23:19
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舌舐めずりをし、初霜の柔らかな頬を左手で摘む、初霜はおぞましい嫌悪感から頭に血が上る、しかし抵抗する事が出来ない。 「こ、殺してやる…!お前達、深海棲艦…!」 「ククッ…こんな人間は初めてだ、欲しくなってきたぞ…」 武蔵はそう言って初霜の上着を弄り始めた

2017-12-12 22:24:17
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その時! 「グホァッ!?」 何か強烈な力が、殴りつける様な衝撃が武蔵の身体を弾き飛ばした! 彼女は後方に仰け反り、踏ん張りながら地に膝をつく! (なんだ?今、何が起きた?) 武蔵はすぐに初霜へ目を向ける、すると一瞬、何かの影が消えるのが見えた。

2017-12-12 22:25:15
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(奴がやったのか?だが本人にその気は無かったように見える…) 埃を払い、彼女はゆっくり立ち上がる 「汝、一応聞くが、今のは何だ?何をした?」 初霜は咳き込みながら不敵に武蔵を睨んだ 「勝手に飛んだのはそっちでしょう…ゲホッ、オバケでも見たのかしら?臆病者。」

2017-12-12 22:26:18
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未だ状況は武蔵の掌、だが初霜は寸分足りとも臆してはいなかった、そんな彼女を見て武蔵は大笑いする。 「この状況でそれだけの口が叩けるとは、汝を人間と分類するにはかなり無理があるな。」 心底愉快に笑いながら、武蔵は懐から黒い石を取り出し、お洒落な巾着に入れた。

2017-12-12 22:27:20
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そして、その袋を初霜へ投げ渡した 「…何、これ…?何のつもり?」 「ククッ…汝に必要なものだ、そいつを肌身離さず持っておけ…ただし、誰にも見られぬようにな。」 そう言って彼女はゆっくりと初霜の元へ歩み寄った、既に右手は人のものとなっており、敵意や殺意は無かった。

2017-12-12 22:28:26
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武蔵は赤い瞳を輝かせて語りかける 「汝は私を殺したいのだろう?ならもっと強くなれ、貪欲に生きろ、そして私を殺しに来い…」 それに初霜は動じず答えた 「言われなくたって殺してやるわ…絶対、必ず殺してやる…」 「ククク…それで良い、それが汝の"生"だ…」

2017-12-12 22:29:18
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これまでで一番の笑みを浮かべ、武蔵はゆっくりと立ち上がった。 初霜も同じように立ち上がる、その眼差しは敵意と憎悪を向け続けていた、だがそんな中で一つだけ理性的になり、彼女は武蔵にある疑問をぶつけた。 「…一つだけお前に訊きたいわ、お前達の…深海棲艦の目的は何?」

2017-12-12 22:30:18
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その疑問を武蔵は鼻で笑った 「…汝は同じ生き物なら、相手の考えてる事が全て分かるのか?」 「えっ…?」 「ククッ…そういうことだ、私の知ったことじゃない。」 そう言うと彼女は身を翻して初霜に背を向け、月光に向けて両手を拡げる。

2017-12-12 22:31:15
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「汝等も私もこの星の住人だ、好きなように生きろ、好きなように死ね、その全てが生だ」 海風が強く吹く 「手に入れろ、楽しめ、目的を果たせ、どいつもこいつも生は短いんだ、迷っている暇は無いぞ?」 大樹の葉が揺れ、波音が響き、遠くで船の汽笛が鳴った。

2017-12-12 22:32:25
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やがて彼女は長学ランをたなびかせながら振り返った 「生きるというのは実に楽しい…そう思わないか?私と汝、互いの生をぶつけ合える日を楽しみにしているぞ。」 武蔵はそう言い残し、笑みを浮かべながら自然公園を立ち去った。 残された初霜は一人、鋭い目つきで満月を見上げる

2017-12-12 22:33:18
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「殺すわよ…必ず殺し尽くしてやる…みんな地獄行きよ…!」 彼女は輝く月へ呪詛のように呟く、月はそれを、何の表情も変えずに聞いていた、呪うような言葉を前にしても、月は綺麗なままだった。 つづく

2017-12-12 22:34:36
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【うお型深海棲艦】 クジラを想起させるフォルムをした深海棲艦、最も観測数の多いタイプである。 集団で動き、身体の円筒部位から弾丸を射出したりして攻撃する。 動きは素早いが単調、艦娘にとっては雑魚に過ぎないが、船舶などに攻撃を加える為危険である事に変わりはない。

2017-12-12 22:35:22
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【ヒト型深海棲艦】 ヒトの形をした深海棲艦、様々なタイプが存在し、全部合わせればうお型と変わらぬ数が居ると考えられる。 うお型に比べると速度は劣る、しかし運動性能が比べ物にならず、行動パターンもうお型より複雑、艦娘でも手こずる難敵も少なくない。

2017-12-12 22:36:22
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【姫型深海棲艦】 深海棲艦の中でもひときわ強力なカテゴリの一つ、ヒト型に近い部位とうお型に近い異形部位の二つで構成されており、カタツムリ型と姫型で名称を争った過去がある。 耐久性と攻撃力が極めて高い異形部が脅威だが、ヒト型部を破壊されると自壊してしまう弱点を持つ。

2017-12-12 22:37:20
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【ブルネイ泊地】 ブルネイ王国の対深海棲艦拠点、他拠点に比べるとかなり大規模な拠点として西の海を守っている。 ブルネイ軍はマレー民族のみが入隊出来る決まりがあるが、艦娘やそれに準ずる者には適用されていない、故に非マレー民族の愛国者が多く所属しており、士気が非常に高い。

2017-12-12 22:38:24
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【武蔵】 ブルネイ泊地の戦艦娘。 頭脳、実力、求心力を兼ね備えたブルネイ泊地の英雄で、現地では絶対的な信頼を寄せられている。 その正体はヒトに擬態した深海棲艦、しかし人に危害を加えようという気は無いらしく、むしろ深海棲艦討伐に協力するなど、その思惑は謎に包まれている。 pic.twitter.com/yrvLmvlo7H

2017-12-12 22:39:20
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