ゴールデンカモイ #10

一通り調べた結果、どいつもこいつも命を勘定に入れてないと判断するしかなかった。 9:https://togetter.com/li/1134867 11:https://togetter.com/li/1136243
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劉度 @arther456

近くで銃声。見れば、別の死体に向け、部下が銃を撃っていた。それで少尉は気付いた。「死体だ!死体が死んでねえ!」少尉は起き上がろうとする日本兵の頭を撃つ。頭が半分なくなっているのに、日本兵はまだ立ち上がろうとする!「HQ、HQ!日本兵が死なない!死なないんだ!」22

2017-07-31 22:03:07
劉度 @arther456

豪運の地上砲撃機といえども、濃密な対空砲火を避けきることはできない。北端上陸姫を散々苦しめていたスツーカは、ついに対空砲火を受け、海上へと不時着していった。「やった……!」血と汗にまみれながらも、北端上陸姫は会心の笑みを浮かべた。24

2017-07-31 22:06:18
劉度 @arther456

鬱陶しい爆撃機を退けた北端上陸姫は、改めて戦況を確認する。艦娘たちが港外に出ている。彼女たちは港湾水鬼の爆撃機へ、あるいは北端上陸姫へ攻撃を始めている。潜水棲姫も北方水姫も、人間たちの軍に止められたままだ。当初の作戦は完全に崩壊した。25

2017-07-31 22:09:08
劉度 @arther456

だが、北端上陸姫に退くつもりはなかった。「砲撃体勢を取りなさい!目標は、前方の艦娘軍団!」残り少ない砲台小鬼が艦娘たちへ砲を向ける。「撃てぇーっ!」いくつもの砲弾が、艦娘たちに襲いかかった。当然、艦娘たちはこちらに気付き、その主砲を向けてくる。だが、そんなものは恐ろしくない。26

2017-07-31 22:12:03
劉度 @arther456

北端上陸姫は、戦う前から恐れ続けてきた。この体になってから、脳裏に何度もよぎる光景。穴だらけになりながらも平然と進む戦車たち。弾幕の中を刀を振りかざして進む日本兵。恐怖を感じず、狂気を伴ってそれに応じるロシア兵。1945年の占守島にいた人間は、1人残らず狂っていた。27

2017-07-31 22:15:05
劉度 @arther456

それを引き起こしていたのが、『アメリアの柩』という日本軍の魔術兵器のせいだと知ったのは、つい最近のことだった。あの通信機が語りかけるのは人ではない。世界だ。『戦い続けろ』と命じれば、放たれた魔力は『戦い続ける』ためにありとあらゆる事象を捻じ曲げる。それは死すら凌駕した。28

2017-07-31 22:18:01
劉度 @arther456

昔の人間はあの柩を使いこなせず、最後は封印したそうだ。だが、艦娘を生み出すほど魔術に慣れた今の人間が、『アメリアの柩』を手にしたらどうなる?あるいは、封印が何かの拍子に解けて暴走を始めたら?ありありと想像できる現世の地獄に対する恐怖が、北端上陸姫をここまで動かしてきた。29

2017-07-31 22:21:08
劉度 @arther456

だが、劣勢に立たされた北端上陸姫には、疑念が芽生えていた。砲撃を恐れずに反撃してくる艦娘たち。その様子は、かつての士魂部隊と良く似ている。まさか『アメリアの柩』は目を覚ましているのではないのか?「……ねえ、そっちは大丈夫?」北端上陸姫は、北方水姫に通信を送った。30

2017-07-31 22:24:15
劉度 @arther456

《行くぞ行くぞ行くぞ行くぞぉ!》雄叫び。北方水姫は彼女の呼びかけに答えない。「ロングテイル?」北の島で海防艦たちと戦う潜水艦は、回線すら開いていない。「ちょっと、誰か返事してよ!」《悪ィ、戦いが先だ!》港湾水姫も、他の深海棲艦も、誰も彼もが殺し合いを優先させている。31

2017-07-31 22:27:02
劉度 @arther456

戦争の狂乱は、これほどまでに伝染するものなのか。それとも、柩が目覚めたのか。これほどまでの大規模戦闘には参加したことがなかった彼女にとって、判断はつかない。却ってそれが、彼女の理性を辛うじて保っていた。「まだよ……まだ、大丈夫!」そこに、どうしようもない事実が現れた。32

2017-07-31 22:30:14
劉度 @arther456

北端上陸姫の背中で爆発が起きた。「きゃあっ!?」小口径の砲撃。だが、背後は陸。艦娘がいるはずがない。振り返った北端上陸姫が見たものは、ひしゃげた戦車だった。九七式中戦車・チハ改。100年前の戦いで、ロシアの上陸部隊に襲いかかった、あの士魂部隊の戦車だ。33

2017-07-31 22:33:07
劉度 @arther456

かつての戦闘で破壊され、放棄された車輌だった。車体の右半分が抉れ、中が見えているにも関わらず、普通の戦車と変わりなく動いている。そして、傷口から見える車内で戦車を動かしているのは、死してなお柩によって日本のために戦わされる、白骨の兵士だった。34

2017-07-31 22:36:08
劉度 @arther456

「い……嫌ああああっ!」限界だった。北端上陸姫は、恥も外聞もかなぐり捨てて、海へ向かって逃げ出した。森の中からは1台、更に1台と、戦車が現れつつあった。司令官の逃亡により勝敗は決したが、戦いが終わる様子はまったく無かった。35

2017-07-31 22:39:02
劉度 @arther456

【ゴールデンカモイ】#10おわり#11へ続く

2017-07-31 22:40:04