ゴールデンカモイ #10

一通り調べた結果、どいつもこいつも命を勘定に入れてないと判断するしかなかった。 9:https://togetter.com/li/1134867 11:https://togetter.com/li/1136243
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2017-07-31 21:01:26
劉度 @arther456

1945年8月19日、午前6時半。「砲兵部隊!敵の戦車隊を何としても止めろ!」朝霧の濃い占守島に、ソ連軍将校の怒号が響いた。「対戦車ライフルを持ってる奴は前に出ろ!」「迫撃砲、手榴弾、火炎瓶でもいい!爆発物をよこせぇ!」飛び交う命令には、悲鳴すら混じっていた。1

2017-07-31 21:03:10
劉度 @arther456

「同志ミハイロフ!」交戦準備を進めるソ連軍に、増援が現れた。後から上陸してきた、第7独立狙撃大隊だ。「なんだこの戦況は、どうなってる!?」「ルビンスキーか!よく来た、対装甲兵器をあるだけ持ってきててくれ!」「待て、なぜ勝手にここまで進軍した!?説明しろ!」2

2017-07-31 21:06:14
劉度 @arther456

ミハイロフ率いる先遣隊は、上陸すると当初の作戦を完全に無視し、橋頭堡も築かずに島の奥へ突撃していった。そのため、上陸戦は不必要に過激になり、指揮艦艇が炎上するほどの被害を受けた。「作戦無視は軍法会議ものだぞ!どう責任を取るつもりだ、ミハイロフ!」3

2017-07-31 21:09:14
劉度 @arther456

「黙れ臆病者が!」ミハイロフの気迫に、ルビンスキーはたじろいだ。「我らが祖国の興亡が、この一戦にかかっているんだ!立ち止まってなどいられるか!」その言動に、ルビンスキーは違和感を抱いた。彼の知るミハイロフは、こんな大それた愛国心を持つ男では無かったからだ。4

2017-07-31 21:12:03
劉度 @arther456

ルビンスキーの背筋に悪寒が走った。辺りを、いや、この島全体を、言葉に出来ない妙な気配が覆っていた。それはルビンスキーの背中を押し、戦いに駆り立てようとしていた。「戦車隊、来ます!」「応戦せよ!」その正体を知る前に、日本軍の戦車隊が霧の中を抜け、彼らに突撃してきた。5

2017-07-31 21:15:04
劉度 @arther456

【ゴールデンカモイ】#10

2017-07-31 21:16:02
劉度 @arther456

謎のスツーカ隊が占守島を攻撃してくれているお陰で砲撃が止んだ。空爆も横須賀の提督が辛うじて食い止めている。幌筵泊地の城島大将はここを転機と見ていた。今出撃すれば、戦況を巻き返せる。「大将!今出撃するのは無茶です!」なのに、部下はすっかり怯えきってしまっていた。5

2017-07-31 21:18:04
劉度 @arther456

「せやけどなあ!出るなら今しかないやろ!」「いつ砲撃が再開するかわからないんですよ!」「ひょっとしたら、出てきた俺たちを狙い撃ちにするつもりかもしれません!」素人は黙っとれ、と城島は言いたくなったが、実際、僻地である幌筵の提督は実戦経験の浅い素人だらけなのだ。6

2017-07-31 21:21:09
劉度 @arther456

本当なら、長瀬と松岡が先陣を切って他の提督や艦娘を鼓舞するのだが、長瀬は砲撃で負傷し、松岡は指揮艦を失って出撃できない。城島が出撃すれば、今度は全体の指揮を取る人間がいなくなる。こんな士気の落ち込んだ提督たちを放置したら、何をしでかすかわからない。7

2017-07-31 21:24:12
劉度 @arther456

「どないせーっちゅーねん……」城島は途方に暮れながら、地下指令所のモニターを見た。砲撃を免れて生き残っていたカメラが、泊地の様子を映し出している。そのうちの画面の1つが、城島の目に留まった。「……おい、あれ見ィ!」「え?」「あ、あれは!」8

2017-07-31 21:27:02
劉度 @arther456

波止場を映すモニターに、海に浮かぶ黄色いラバーダックが映っていた。「アヒル元帥や!」「何ですって!?」「本当だ!」「元帥自ら出撃されているぞ!」幌筵の提督たちは色めき立った。尊敬できる上司であり、幌筵泊地で最も優秀な司令官が、危険を顧みずに出撃しているのだ!9

2017-07-31 21:30:13
劉度 @arther456

アヒル元帥は砲撃で揺れる波間にプカプカと浮かんでいる。アブナイ!「お前ら!すぐにアヒル元帥をお守りするんや!」「ウオオオオ!」上司が先陣を切れば、部下は後を追わざるを得ない。幌筵の提督と艦娘たちは、暗い地下シェルターから飛び出し、戦いのために大海原へと飛び出した!10

2017-07-31 21:33:18
劉度 @arther456

戦艦タ級は北方棲姫たちを護衛しながら、幌筵泊地へと向かっていた。少女2人は無傷だが、男は腹部に怪我を負って、手当を受けている。「あの、そっちの人間さん、大丈夫ですか?」「俺は不死身だ」「ええ……」謎の強がりを見せる男に、タ級は少し引いた。12

2017-07-31 21:36:08
劉度 @arther456

「あの、ほっぽちゃん?この人たちどうするんですか?」「連れてく!」「はあ……」何度か人間と戦っているタ級は、正直言って人間とはあまり関わりたくない。しかし、この海域の姫の命令とあっては断れない。そうこうしているうちに、タ級たちは幌筵泊地の側までやってきた。13

2017-07-31 21:40:01
劉度 @arther456

戦況はすっかり不利になっていた。北端上陸姫の砲撃は散発的になっていて、泊地からは艦娘たちがどんどん出撃している。封じ込め作戦は失敗だ。「ほっぽちゃん、これは逃げた方がいいですよ」「なんで?」「え、いや、だって人間の泊地……」「ほっぽが泊まってる、城島のおっちゃんの島!」14

2017-07-31 21:42:02
劉度 @arther456

「……まさか、人間にお世話になってるんですか!?」ようやく気づいたタ級の喉に、冷たいものが突きつけられた。「そのまま泊地まで行きなさい」タ級に背負われている不知火のナイフだ。「シ、シージャック……!」「行け」「は、はいっ!」タ級に選択肢などなかった。15

2017-07-31 21:45:02
劉度 @arther456

「どうなってんだ、こいつは」日本陸軍と戦い続けていたロシア極東軍の軍曹は、この戦場が異常なものだと感づき始めていた。陸軍と深海棲艦に挟み撃ちにされていることではない。かなりの損害が出ているはずの日本陸軍の反撃が、まったく衰えないのだ。17

2017-07-31 21:48:02
劉度 @arther456

少尉が率いる部隊は、塹壕に入った。辺りを警戒するが、日本軍はもう撤退したようだ。残っているのは破壊された野戦砲と、数人の死体だけだ。こうして、死者が出ているのは何度も確かめている。なのに、敵が減った気がしない。訝しんでいると、司令部から通信が入った。18

2017-07-31 21:51:03
劉度 @arther456

《HQより第3小隊へ。そこから南で第5小隊が攻撃を受けている。すぐに増援に向かえ》「南!?」少尉は思わず聞き返した。自分たちは南からやってきたのだ。通ったのは見通しの良い野原で、敵を見落とすはずがない。「HQ!本当に敵の攻撃か!?同士討ちじゃないだろうな!?」19

2017-07-31 21:54:05
劉度 @arther456

《無人機で確認した。日本軍が攻撃している。急いで向かえ》「……了解!」そう言われては動くしかない。「お前ら!休憩は終わりだ、引き返して第5のノロマどもを助けに行くぞ!」彼の命令を受け、兵士たちが出発の準備をする。その時、少尉は日本兵の死体の手が動いているのを見つけた。20

2017-07-31 21:57:05
劉度 @arther456

「……クソッ!」相手よりも早く銃を構え、頭を撃ち抜く。鋭い銃声に、兵士たちが身構えた。「ノロいぞ、お前ら」そう言いながら、少尉は油断なく死体に近づき、銃剣で心臓を突き刺す。しかし、死体がまた動き、少尉の銃を掴んだ。「何だと!?」少尉は死体を蹴り剥がす。21

2017-07-31 22:00:22