ゴールデンカモイ #11
(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)
2017-08-02 21:01:24「テッポウ・ミズ!イヤーッ!」ロングテイルは、掌に溜めた水を国後に向け解き放った。スイトン・ジツの一種、テッポウ・ミズである。放たれた海水は超音速まで加速し、鉄をも穿つ弾丸となって国後に襲いかかる!「きゃっ!?」国後はこれをなんとか避けた。1
2017-08-02 21:03:07国後の持つ大型ライフルの威力は、潜水艦には侮れない威力だ。だから、牽制は怠らない。「このおっ!」択捉が爆雷を直接投げつけてきた。こちらは威力こそ高いが、見てから避けられる。バックフリップで爆雷を回避すると、海に落ちた爆雷が爆発、水柱を吹き上げた。2
2017-08-02 21:06:11「しむしゅしゅしゅーっ!」水柱を切り抜け、占守が懐に飛び込んでくる。これが最も安全だが、最も手に余る。「イヤーッ!」ロングテイルは掬い上げるようなフックを放つ!「しゅっ!」占守は上体をスライドさせ、フックを避ける。ボックス・カラテの基本技術、スウェーである!3
2017-08-02 21:09:07「イヤッ、イヤーッ!」「しゅーしゅしゅ!」ロングテイルの猛烈なラッシュを、占守はいなし、カウンターのジャブを放った。直撃!「ッ!」ジャブのダメージはそれほどではない。だが、ボックス・カラテのジャブは常にワンツーで放たれる。「しゅーしゅしゅ!」痛烈なボディーブロー!4
2017-08-02 21:12:05ロングテイルは腕でこれを防いだ。今度は占守の顎目掛け、ハイキックを打ち上げる!「しゅっ!?」ボックス・カラテに蹴りはない。スウェーも余分に大きくなる。ロングテイルは素早く足を戻し、その勢いで体を回転、その名の通りの長い尾で占守を撃つ!「グワーッ!」占守が吹き飛ばされた!5
2017-08-02 21:15:04「占守!」国後がライフルを撃つ。ロングテイルは追撃を止め、銃弾を側転回避する。「うーっ……強いっす」肋骨をさする占守を護るように、国後と択捉が立ちはだかる。仕切り直しだ。だが、ここ数度の交錯で、ロングテイルには3人をまとめて倒す道筋が見えていた。「そろそろ仕留めるか」6
2017-08-02 21:18:02「ゴボーッ!」突如、ロングテイルの横に大型サイボーグ護衛マグロが浮上した!「なにっ!?」「えっ!?」「ゴボボーッ!」マグロの側面武装ポッドが開き、択捉たちへ小型ロケットが斉射される!「あわわわ!?」「しゅしゅー!」3人は慌てて散開!陣形が乱れる!7
2017-08-02 21:21:09「コラッ!私が戦ってる時は手出しするなって言っただろう!」「ゴボボッ!」ロングテイルの叱責に、マグロは訴えるように鳴いた。「何が……うん?」それで少し冷静になったロングテイルは、戦況を見る余裕ができた。――北端上陸姫の部隊が、潰走している!8
2017-08-02 21:24:17「しまった……!」目の前の戦いに夢中になるあまり、ほかの戦線に気を配ることを忘れていた。港湾水姫の爆撃部隊は有効打を与えられず、北方水姫も幌筵泊地に突入できていない。そして泊地からは艦娘たちが出撃して、各地に増援として向かっている。つまり。「作戦は失敗か!」9
2017-08-02 21:27:03ロングテイルは閉じていた魔力通信回線を開き、部下に連絡した。「敵には十分な損害を与えた!そろそろ撤収するぞ!」《ゴボッ!?》《しかし、まだ船が……》「第1から第3魚群までは後退開始!第4、第5魚群は20分の砲撃支援の後、後退を開始せよ!カムチャッカ半島で合流する!」10
2017-08-02 21:31:02続いて、他の場所で戦う姫たちに通信を投げた。「お前たち!作戦は失敗だ、撤退しろ!」《ダメだ!幼女に会うまでは帰らないぞ!》「いつまで役にこだわってるんだ!?」北方水姫が護衛棲姫の母親を演じたのは、横須賀の提督を釣り出すためである。今となっては何の意味もない。11
2017-08-02 21:33:07《すまねえ!魔女の姉さん、中々下がってくれねえんだわ!》その側にいるらしい港湾水姫が答えた。「こちらは撤退を始めている!取り残される前にそちらも退け!」《わーってる!だけどよ、姫サンは!?》北端上陸姫の反応はない。「私が探す!まったく、世話のやけるお姫様だ……!」12
2017-08-02 21:36:09海防艦たちに負け惜しみの魚雷を放った後、ロングテイルは護衛マグロに飛び乗った。「占守島に向かうぞ!」「ゴボーッ!」マグロは加速、撤退する自軍から離れ、占守島へと向かった。その後ろに、同じく撤退集団から離れ、彼女の後を追う一群がいるとも気づかずに。13
2017-08-02 21:39:07「魔力反応、確認しました!ほっぽちゃんです!」「よし、リフト降ろして!隼鷹、翔鶴姉、グラーフ、行くよ!」北方棲姫の到着を受け、提督は艦橋を飛び出した。甲板に出ると、ちょうどリフトが上がってきたところだった。「不知火!」提督は真っ先に、ル級に担がれた不知火に駆け寄った。15
2017-08-02 21:42:03「ちょ、うわ、これが提督!?」「何やってんの、降ろして!」「は、はい!」ル級は慌てふためき不知火を降ろす。「救護班!」「はい!」後ろで様子を見ていた医者と妖精さんが、不知火と杉坂に駆け寄った。「提督はこっちだよ!」隼鷹が提督の制服の襟を掴み、不知火から引き剥がす。16
2017-08-02 21:45:04提督たちは北方棲姫が持ってきた柩の前に座らされた。その途端に、提督の喉に吐き気がせり上がってきた。「うえ……」「我慢!ってかヤバいな、こりゃ……!」「はい。海を渡ってる途中で、急に魔力が変わって……」さっきまで上に乗っていた神威は、真っ青な顔をしていた。17
2017-08-02 21:48:01「血だ」柩の上に溢れた杉坂の血を見て、グラーフが言った。「あの血が、何か余計な触媒になったんだろう。そのせいで、柩の効果範囲が際限なく広がり続けている」「何なのさ一体!提督、早く調べておくれよ!」「わかってる!」提督は箱のあちこちに手をかざし、その中を探っている。18
2017-08-02 21:51:04艦娘を率いる提督や、式神を操る空母の艦娘は、その殆どが霊能力や魔法の才能を持っている。北方棲姫がアトラソフ島で見つけた箱が、異様な影響をバラ撒いていると神威から聞いた提督は、側にいた専門家を掻き集めて、無力化を試みようとした。19
2017-08-02 21:54:04「ただの通信機じゃないぞ、これ……どうやって作った!?」「何なんだい!?」「通信相手が世界とか、物理法則とか、精神とかそういうのだ!」「世界法則でも書き換えてるのか!?」グラーフが叫ぶ。「多分それ!これのせいで人も武器も何もかも、『死なずに、戦い続ける!』」「マジかよ……!」20
2017-08-02 21:57:04《提督、幌筵の城島大将から通信です!》「わかった!隼鷹、グラーフ、解析と停止、お願い!」柩を2人に任せ、提督は通信をとった。「もしもし、東郷です!」《東郷くん!?キミの船に深海棲艦が乗り込んだって聞いたんやけど!》「はい!戦艦タ級を捕虜にしました!」流れるように嘘をつく。21
2017-08-02 22:00:11《捕虜?》「はい!拘束と尋問はこっちでやりますから、お任せください!」《いや、せやけど、これ言うた提督が……》突然、蔵王を激しい揺れが襲った。「何だぁ!?」《左舷から砲撃!か、艦娘が攻撃してきます!》「何ぃ!?」《ちょっと待て、アイツに乗っ取りは勘違いやって伝えろや!》22
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