ゴールデンカモイ #11

数分前に盾にしようとした幼女を避難させる子供と言い張る畜生ムーブ 10:https://togetter.com/li/1135584 12:https://togetter.com/li/1136905
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劉度 @arther456

左舷から、幌筵の艦娘たちが蔵王を攻撃していた。同士討ちにも関わらず、彼女たちの照準にためらいはない。「あいつら……!」恐らくは『アメリアの柩』の影響だろう。それにしても、あっさりと味方を撃つとは。意志の弱さに、提督は腹が立った。「反撃するぞ!ミサイルを……」23

2017-08-02 22:06:11
劉度 @arther456

「瑞鶴?」「ひっ」提督が振り返ると、翔鶴がすぐ目の前に立っていた。真顔だ。怒ってる。「随伴艦の皆さんに、迷惑かけちゃいけないって言ってるでしょう?」「はい、はい……ごめんなさい……」怒りが急速にしぼんでいく。いつの間にか提督も『アメリアの柩』の影響を受けていたようだ。24

2017-08-02 22:09:08
劉度 @arther456

「ちゃんと隼鷹とグラーフさんのお手伝いをして、早く終わらせなさい?お姉ちゃんが見ててあげるから」「は、はいぃ……」震えながら箱の側に戻ってきた提督に、隼鷹とグラーフは哀れみの視線を投げかけた。「そんな目で見ないでください……」「いや……とにかく、解除急ぐよ?」「ああ」25

2017-08-02 22:13:22
劉度 @arther456

3人が柩の解析を進めていると、またしても艦橋から提督に通信が入った。《提督!大変です!強力な魔力反応が本艦に接近しています!》「那智!」《どこだ!?姿が見えんぞ!》《マルサンマルの方向!》《こっち!?しまった、海中!?》水柱が上がり、何者かが甲板に飛び乗った。26

2017-08-02 22:15:05
劉度 @arther456

「見つけた……!」現れたのは、防寒服めいた黒いドレスを身に纏った深海棲艦。艤装はボロボロで、頭から血を流すほどの重症だが、柩を真っ直ぐに睨みつける目は闘志が爛々と燃えている。「アメリアの柩……お前が、そこで叫んでるから!お前のせいで!」27

2017-08-02 22:19:00
劉度 @arther456

「離島棲姫!?みんな、戻って……」《違います!》艦橋のオペレーターが叫んだ。「何!?」《深海棲艦じゃありません、この魔力は……》何かが船体にぶつかり、蔵王が揺れた。その揺れは、提督たちはもとより、乗り込んできた深海棲艦もが戸惑う、不吉なものだった。「これは……!?」28

2017-08-02 22:21:09
劉度 @arther456

黒いドレスの深海棲艦のすぐ後ろ、艦首を登って金色の大きなものが姿を現した。「え」振り返った深海棲艦が、それが何なのか把握する前に、巨獣は腕を振り回した。深海棲艦の首がボールのように飛んだ。頭を失った首からは血が吹き出し、胴体は呆然と立ち尽くしてから、甲板に倒れた。29

2017-08-02 22:24:18
劉度 @arther456

「ネオヒグマ……!?」蔵王に乗り込んできたのは、尋常ではない巨体のネオヒグマだった。あまりの大きさに、船がクマの方に傾いているように思える。「そんな、姫さんが一撃で……!?」戦艦ル級が震えている。深海棲艦を物理的に一撃で倒すなど、生物が持ってはいけない力だ。30

2017-08-02 22:27:03
劉度 @arther456

「どうするのよ、ちょっと、ねえ!?」やましろが提督を揺する。提督は少し考えてから、近くにいた北方棲姫を持ち上げた。「ぽ?」「ほっぽちゃん!」「なに?」「あのクマ、ぶっ飛ばしてちょうだい!」北方棲姫は陸上型深海棲艦である。その力は、そこらの深海棲艦とは比べ物にならない。31

2017-08-02 22:30:23
劉度 @arther456

艦娘や深海棲艦と戦わせるのはためらうが、野生動物相手なら気負うことはない。この心強い味方に、ネオヒグマを倒してもらおう。そう思って提督は北方棲姫を持ち出した。抱えられた北方棲姫は、ぽけーっと熊を見てから、提督の方に振り向き、顔の前で手を横に振った。「むり」「えっ」32

2017-08-02 22:33:06
劉度 @arther456

「あれムリ」「いや、そんな冗談を……」「つよすぎ」提督はポカンと口を開け、すがるように足元の護衛棲姫を見た。護衛棲姫も同じように手を横に振った。ル級も首を横に降っていた。ネオヒグマはゆっくりと近付いてきている。艦首から主砲の横まで来ている。「管制室」《はい》「撃て」33

2017-08-02 22:36:07
劉度 @arther456

ネオヒグマのすぐ横にあった主砲が火を吹いた。ほぼ接射で放たれた砲弾は、ネオヒグマの側頭部に命中、大爆発を起こした。「艦尾から乗り込まれてたら、終わりだったかな」帽子を押さえながら、提督は引きつった笑いを浮かべた。本当に、一歩間違えば熊の餌食だっただろう。34

2017-08-02 22:39:02
劉度 @arther456

煙が晴れる。ネオヒグマはそこにいた。直撃を受けた頬は、毛皮と肉が剥がれ骨が見えていた。それだけだった。普通に立っている。「うそ……」ネオヒグマは砲身に腕を振り下ろし、小枝でも折り取るかのように破壊した。それから平然と提督へと歩いてくる。「誰か……誰かーっ!」35

2017-08-02 22:42:02
劉度 @arther456

「はいっ!」提督の後ろから、青い影が飛び出した。羽黒だ。手には愛用のネギトログラインダーバットを携えている。それを、ネオヒグマの顔面目掛けて振り上げる!ネオヒグマは腕を振り下ろしこれを受け止める!すかさずグラインダー機構が作動、腕をネギトロにしようと唸りを上げる!36

2017-08-02 22:45:03
劉度 @arther456

ネオヒグマは腕をすり潰されながらも、羽黒を押し潰そうとする。「無茶だ羽黒!」「身長が5倍の相手だって、支えてみせます……!」片膝立ちになりながらも、羽黒はバットを離さない。しかし、回転する機構が、煙を噴いて止まった。ヒグマの筋肉が硬すぎたのだ。37

2017-08-02 22:48:00
劉度 @arther456

「そんな!?」「まずい、誰か援護を……」「任せろォ!」ネオヒグマの背後から、躍りかかったのは木曾だ。愛用のサーベルをネオヒグマの背中に突き刺した!流石のネオヒグマの毛皮も、戦艦の装甲を切り裂く近接艤装までは防げない。肉に突き刺さる鉄の痛みに、巨獣は絶叫した。38

2017-08-02 22:52:03
劉度 @arther456

「おうっ……!?」木曾はサーベルを抜こうとしたが、動かない。強靭な筋肉に固定されている。ネオヒグマは痛みのあまり両腕を振り回した。「きゃあっ!」「うわあっ!?」その風圧だけで、羽黒と木曾は吹き飛ばされた。羽黒は提督たちの方へ。木曾は海に放り出された。39

2017-08-02 22:54:05
劉度 @arther456

「やばい、やばい……!」ヒグマの強さは話に聞いていた。だが、腕利きの艦娘たちが束になってかかっても敵わないなど、思ってもみなかった。迫る魔獣に、提督はただ焦ることしかできない。いよいよ万事休すか。誰もがそう思った、その時!40

2017-08-02 22:57:03
劉度 @arther456

「Wasshoi!」何者かが回転ジャンプで甲板上にエントリーしてきた。ただならぬ気配にネオヒグマが振り返ると、破壊された主砲上に腕を組んで直立する深海棲艦の姿があった。「ドーモ、ロングテイルです」ネオヒグマはアイサツを返さず、ロングテイルと名乗った潜水棲姫に突撃する!41

2017-08-02 23:00:10
劉度 @arther456

「イヤーッ!」ロングテイルは跳躍してこれを回避。主砲の残骸が吹き飛ばされる。降り立った彼女の足元には、首を失った北端上陸姫の遺体があった。それを見たロングテイルは、今しがた主砲を吹き飛ばしたネオヒグマの腕力を確かめた後、カラテを構えた。「殺す」42

2017-08-02 23:03:08
劉度 @arther456

ネオヒグマが再度突撃!ロングテイルは側面に回り込み、その脇腹に掌底を叩き込む!ヒグマが苦悶の声を上げた。ロングテイルの掌底は、内臓にカラテを直接叩き込む。砲弾を弾く毛皮も、このワザの前には無力、だが。「重い……!」内臓を揺らすには、相手が大きすぎる!43

2017-08-02 23:06:15
劉度 @arther456

半端な衝撃はネオヒグマを激昂させる結果となった。ロングテイルに向け、次々と腕が振り下ろされる。避けるロングテイルの頬に、凄まじい風圧がのしかかる。一発でも受ければ即死は間違いないだろう。「油断はできんか」カラテをたぎらせ、腕を掻い潜り、喉へ2発目の掌底を叩き込んだ。44

2017-08-02 23:09:07
劉度 @arther456

その奮闘に紛れて、提督たちは後退していた。「逃げろ逃げろ、早く!」武蔵もあきつ丸も熊野もいない中、あんなネオヒグマは相手にできない。柩や不知火たちを担いで逃げようとした提督たちだったが、そこに何者かが立ち塞がった。「誰だ!?」見知らぬ老人が刀を持って立っていた。45

2017-08-02 23:12:02
劉度 @arther456

「おい、逃げる気か?」その一言には気迫がこもっていた。老人に一睨みされただけで、提督は彼が言い訳の通じない相手であることを察した。提督は、ゆっくりと北方棲姫を持ち上げ、老人に突きつけ、言った。「子供と負傷者を運んでます!邪魔しないでください!」46

2017-08-02 23:15:04
劉度 @arther456

「じっちゃん……」北方棲姫は大きな目でじっと老人を見つめた。老人は難しい顔で考え込んでいる。アウトか、セーフか。答えはでなかった。激しい揺れが彼らを、蔵王全体を襲ったからだ。「何だぁ!?」《魚雷が命中!舵が利きません!》幌筵艦隊からの攻撃は、まだ続いていた。47

2017-08-02 23:18:02