Fake＆Gimmick

よつげ @Eight_os

２２６ そんな風に返すのが常だった。 それから、２週間くらい後だろうか。 『大倉、今日アメリカ行きの飛行機乗るらしいで✈💭10:00発のやつ。 見送らんでええの？』 丸山さんからの朝一のLINEに気が重くなる。 …きっとこのアメリカの仕事が終わったら。 #エイトで妄想

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２２７ 大倉さんはこの家を出ていくのだろう。 既に私以外の人の気配を全く感じない部屋。 この状態がずっと続くのか━━ でも、 『行けません』 私に見送る権利なんてない。 かといって仕事に行く気にもなれない。 …大倉さんがいるような気がしてしまうから。 #エイトで妄想

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２２８ 風邪を引いたと嘘をついて仕事を休んだ。 何もする気が起きなくて。 どうにもできない虚無感だけが重く感じられて。 誰もいない静かな部屋で寝っ転がって 長い 長い １日を過ごした。 #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

２２９ …気づけば日付が変わってて。 いつの間にか寝てしまったらしい。 泣き疲れたのかもしれない。 今日も仕事休もうかな…と考えていると 〜♪ LINE通話の着信音。 相手は… 「丸山さん…？ なんで電話…」 分からないまま電話を取る。 #エイトで妄想

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２３０ 「あ、琴葉ちゃん！？大倉の様子どう！？」 すぐさま耳に飛び込んできたのは丸山さんの切羽詰まったような声。 「大倉さん…？大倉さんって、海外行ってるんじゃないんですか？ 丸山さんが教えてくれたんじゃ…」 「え」 丸山さんは一瞬言葉に詰まった後、 #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

２３１ 「そーか…大倉が行ってもうたショックでテレビ見てへんのやな」 と、訳の分からないことを言った。 「え、えっと、どういう…」 困惑する私。 「んー、琴葉ちゃん、とりあえず今テレビつけてみ？今の時間帯やったらぎりぎりニュースやってるはずやから。」 #エイトで妄想

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２３２ そういえば昨日はテレビなんてつけなかったな というか元々大倉さんが見てるのを一緒に見てたから、自分から見る方ではない。 言われるがまま、私はテレビをつけ、ニュースをやっている局に切り替えた。 #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

２３３ 『次のニュースです。 昨日起きた、高速道路の玉突き事故について…』 そこでは昨日の朝起こったらしい高速道路の事故について言っていた。 続いて映し出された画像を見て、 …心臓が嫌な音を立てる。 衝突している何台かの車の中に …黒塗りの高級車が１台。 #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

２３４ ４台目か５台目くらいだろうか …私はあの車を知ってる。 いつも朝、この家の前に …大倉さんを、迎えに来ていた。 大倉さんが、事故に、あった…？ 信じられない私に、決定打となるニュースキャスターの言葉。 #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

２３５ 「この事故では合わせて１３人にも及ぶ死傷者が出ていますが、この中に、株式会社BIRDS ARISTOCRAT社長大倉忠義氏も含まれているとの情報も入っており、警察が事実関係を調べています。」 #エイトで妄想

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２３６ 「なぁ、もしもし…？」 何も考えられなくなった私に語りかけようとする丸山さんの声。 「…っ…丸山さん」 言葉より先に 涙が出てきて 「私…大倉さんに、酷いこと言ってっ…」 「…うん」 「今までだって、たくさん傷つけて…」 「…うん」 #エイトで妄想

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２３７ 今まで考えもしなかった仮定。 「もし… 大倉さんが本当に死んじゃったら、どうしよう… もっと…大倉さんと話せばよかった… 一緒の時間を、大切にすればよかった… …もっとちゃんと、 大倉さんに、好きって伝えればよかった…」 #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

２３８ 丸山さんに申し訳ないと思いつつも、涙は止まってくれなくて。 しばらく私の嗚咽をただ聞いていた丸山さんだったけど、私が少し落ち着いた頃 「…届いてると思うよ、琴葉ちゃんの気持ち。」 「…なんで」 「んー…何となく。 でも、大倉はそういう奴やから」 #エイトで妄想

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２３９ そう言う丸山さんの声はすごく落ち着いていて。 …何となく腑に落ちたような気がした。 「あいつはちゃんと人の気持ち、分かってあげられる奴やから」 「…うん」 「やから、次は琴葉ちゃんの番やで？」 「え…？」 #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

２４０ 「琴葉ちゃんは自分の気持ちに向き合えてなかったって言ってたけど… 自分の気持ちだけちゃうやろ？」 「え━━」 「大倉の気持ちにも 向き合えへんかったやろ？」 丸山さんの言葉に顔を上げる。 そうだ、私は。 大倉さんからたくさんの優しさをもらって。 #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

２４１ でもそれは同居人だから当たり前のことだと思ってて。 でも。 出会った時の大倉さんを思い出す。 私にはわかる。 あの最低最悪な男がそんな理由だけで私に優しさをくれたりしない。 私は ちゃんと 大倉さんに大切にされていた。 #エイトで妄想

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２４２ それなのに私は… 「…後悔、あるんやろ？」 「…っ、はい…」 本当 丸山さんには、なんでもお見通しだ。 「やったら、早く行ったり。大倉のとこ。」 「うん…ありがとうございます」 通話を切って、私はすぐに丸山さんに教えてもらった病院へ駆け出した。 #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

２４３ もし貴方の耳がもう聞こえなくても もしその目が私を見てくれなくても 今すぐに貴方のところへ行って 後悔も 今まで言えなかった思いも 全部 全部… 「大倉さんっ…」 病室のドアを開けると、 「…琴葉ちゃん…」 大倉さんがこっちを向いた。 #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

２４４ まず最初は ああ、生きてたんだ、よかった…って思って。 次に え、本物だよね？って思って。 その後、 あ、怪我ひどいなって… でも、とりあえず言いたいことは 「よかった…無事で」 「…無事ではないけどな笑」 久々に見る大倉さんの笑顔。 #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

２４５ もう何より安堵が大きすぎて その場にへたりこんでしまった。 「死者もいるって聞いてたから… 心配してたんだよ？」 「玉突き事故の４台目か５台目ってそんな大したことにはならへんやろ笑」 マジレス返さないでください…← 私のここまで来た思いが… #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

２４６ それでもちゃんと言わなきゃと思って話だそうとすると 「あの」 「あのさ」 見事にタイミングがカブってしまって （デジャブ…） 「あ、大倉さんどうぞ…」 と、弱腰に譲ってしまう。 大倉さんは１つ息を吸い込んで。 #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

２４７ 「あんな… 俺、ずっと言いたいことがあってん。 でも言えなくて。 やけど、ちゃんとしようって決めたから。 …あの家ちゃんと帰って、今度こそ言うから。 …俺のこと待っててくれる？」 私の返事は、もちろん… #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

２４８ そして、 それから１ヶ月とちょっと。 待ってると言ったし、仕事の方で大倉さんに心配はかけたくないし… お見舞いにはそれからあまり行かず、行ったとしても荷物を置くくらいで。 そのまま、 今日。 大倉さんが帰ってきます…！ #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

２４９ 「ただいま〜… って、そこにおるんかい笑」 そう。 土曜日だったんですけどね、 仕事休みだったんですけどね！？ 家で落ち着いておかえりなさいって出迎えてあげたい気持ちと、 早く迎えに行きたい気持ちで葛藤して。 玄関前にちょこんと座っておりました。← #エイトで妄想

よつげ @Eight_os

２５０ …とは大倉さんに言いづらいので、口を尖らせて俯いていると、 「…じゃあ、俺もここ笑」 隣によいしょっと座った大倉さん。 玄関前に２人で並んで座るという奇妙な構図。 …距離が近くてドキドキ。 「それで、ちゃんと言いたいことがあってな」 #エイトで妄想