日向倶楽部世界旅行編第12話「バヌアツ・タンナ島観光編」

三隈達が首都ポートビラを観光する一方、日向達は火山を有するジャングル島「タンナ島」へと上陸した。
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三隈グループ @Mikuma_company

最上は大きなあくびをすると布団をかけ直し、眠る態勢に移った 「じゃあ日向さん、また明日…」 「ああ、おやすみ。」 会話が終わり、自然の音だけが響く部屋は宇宙のように暗く静かになった。 「…なあ、最上」 そうなってしばらくの後、日向は思い出したように口を開いた。

2017-08-29 22:18:13
三隈グループ @Mikuma_company

「お前は私と出会って…」 そこまで言った後、彼女は返事がない事に気がついて口を紡ぐ。 「…寝てるよな、そりゃそうか。」 おやすみ、と小さな声で言って日向も目を閉じ、穏やかな眠りについた。 〜〜

2017-08-29 22:19:04
三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 ちょうど同じ頃、上にいる扶桑はベッドの上で横になったまま目を開いていた。 その光景はかなり異様で、2メートルの長身故にベッドのサイズはまるで合わず、長い黒髪と着物の裾がシーツのようにそれを覆い隠していた。 布団のお化けが眠っている…という表現が極めて適切だろう。

2017-08-29 22:20:08
三隈グループ @Mikuma_company

隣では初霜がすやすやと寝息を立てている、村で一番はしゃいでいたのだから当然の熟睡でる。 そんな大と小が眠る部屋で、布団のお化け…扶桑は静かに起き上がり、蚊帳を四苦八苦して潜り抜け、空を一望出来るバルコニーへと出た。 今、星々が輝く夜空を彼女は独り占め出来ている。

2017-08-29 22:21:05
三隈グループ @Mikuma_company

(星空というのは、古今東西変わらぬものですね…) 真っ赤な瞳に夜空が映る、しかしすぐに彼女の瞳は別のものを、目下に広がる集落を映した。 明かりもない夜更けのそこには何もいないはず、事実彼女の目に動くものは映っていない。 (…降りてみましょうか。)

2017-08-29 22:22:11
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何かを思い立った扶桑は、地上10メートルはあるその場所から下の地面へと飛ぶ。 落下する彼女の身体は地面に激突する事なく緩やかに減速し、静かに、そしてふわりと着地した。 降り立った彼女は辺りに目をやる。 正面、何もいない。 右を見る、森がある。 左を見る、建物がある。

2017-08-29 22:23:02
三隈グループ @Mikuma_company

後ろを振り返る 「やっほ」 人影、あり 「こんばんは〜。」 「…何者ですか。」 「うーん、業物?」 扶桑の問いに人影はおどけて答えた、だが軽い態度とは裏腹にその両手には刃輝く刀が握られている。 対峙し目を凝らす扶桑、顔は何かに覆われておりその正体は分からない。

2017-08-29 22:24:09
三隈グループ @Mikuma_company

「へへへっ、何者ですか…って質問は、私もしたいんだよねぇ、貴女にさぁ〜。」 人影は刀を構える、これを見て穏便にはいかないと悟った扶桑も晴嵐の波紋を起こした、身体がほのかに赤く包まれる。 そして遠くで火山が唸ると同時、人影は地面を強く踏んで扶桑へと襲いかかった!

2017-08-29 22:25:01
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「波紋縛!」 それを見るや扶桑は素早く右手から波紋を撃つ、波紋縛はまず見破られない! 「おっとぉ、危ないっ!」 だがそれは「波紋を知らない相手」に限った話! 「貴方…」 「ん〜?どうかした?」 人影は見切ったように波紋を避け、扶桑へと切り込む!

2017-08-29 22:26:04
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間合いを詰められた扶桑は地面から飛び上がってこれを避け、そのまま滞空しつつ思案する、相手は奇襲の波紋縛を避けた、それが意味する事は一つ! この相手は、波紋を知っている! 「晴嵐、波紋弾!」 波紋を起こし、赤い光の弾丸を右手から放つ!しかし、いややはり、人影は避ける!

2017-08-29 22:27:03
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「ふーっ怖い、魔法使いみたいだねー…」 地面を抉るように開いた穴を見て人影は呟き、ふわりと着地した扶桑へ再度迫る、対する扶桑も接近戦を避けられないと見て構える。 「はあっ!」 人影は二刀を振って扶桑を追い立てる、扶桑は扶桑でその二刀を切り傷一つ創らず素手でいなしてゆく。

2017-08-29 22:28:11
三隈グループ @Mikuma_company

「貴女やっぱ普通じゃないね!」 斬撃を弾かれながら人影は言う、その間にも扶桑の両手は鋼のように刀との打ち合いを演じている。 その最中、ガキッという鈍い音と共に一本の刀が動きを止めた! 「嘘っ…!」 扶桑が右手で刀身を掴んだのだ!人影は瞬時に判断、その刀を手放し、飛び退く!

2017-08-29 22:29:02
三隈グループ @Mikuma_company

人影がそうしたのとほぼ同時、掴まれた刀は赤い光に包まれたかと思うと、まるで氷のように粉々に砕け散った! 「ひゅーっ、貴女すごいね、何それ?」 「…白々しいですね、これが何か知っているのでしょう。」 扶桑の赤い目は人影を見つめている、その瞳に宿るのは激しい感情だ。

2017-08-29 22:30:02
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「さあね、まあ良いや…今日はここで退散かな。」 人影は刀を収める、だが扶桑にその気はなかった 「逃すと思っているのですか?」 「えーっとね、それを決めるのは貴女じゃないかな。」 瞬間、何かが地面に転がり落ちて黒い煙を撒き散らし、人影をすっぽりと覆い隠した!

2017-08-29 22:31:02
三隈グループ @Mikuma_company

「じゃあね〜」 おどけた声が消え、しばらくして煙が晴れる。人影は既にその姿を消しており、そこに残っているのは火山の唸りだけが聴こえる夜であった。 「…素早いですね。」 扶桑はもう一度辺りを見回し、何もない事を確認してからツリーハウスへと戻って行った。 〜〜

2017-08-29 22:32:02
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〜〜 翌朝…といっても日が昇る前、日向達はツリーハウスの下に集まっていた。 「よく眠れたか?」 「もう少し寝たい…」 「私も…」 最上と初霜は眠い目をこすって言った、訊いた日向の方も口を抑えてあくびをしている。

2017-08-29 22:33:03
三隈グループ @Mikuma_company

「扶桑…キミはよく眠れたらしいな…」 扶桑はそうですねと頷いた、眠気とは無縁、いつも通りの彼女である。 「まあ良い、ではこれから今回の目玉であるヤスール山へ向かう、着いて来てくれ。」 一行はあくび混じりの日向を先頭に、本命のヤスール山へと向かい始めた… つづく

2017-08-29 22:34:19
三隈グループ @Mikuma_company

【タンナ島】 バヌアツ共和国の南部に存在する火山島。 世界で最も近付きやすい火山と言われるヤスール山を有し、他にも海中洞窟や豊かな自然、伝統を守る村々などがあるバヌアツ屈指の観光地。 災害が多いが、暮らす人々はサイクロンの直撃を受けても一切へこたれない程に凄まじくタフ。

2017-08-29 22:35:03
三隈グループ @Mikuma_company

【ジョン・フラム信仰】 タンナ島に実在する積荷信仰、第二次大戦前頃に興ったとされる。 大雑把に言うと「ジョン・フラム(外見には諸説あるが、背は高いらしい)という神が島に恵みをもたらす」というもの、バヌアツ独立の原動力にもなった信仰で、議員に信仰者がいたりするなど影響力は強い。

2017-08-29 22:36:12
三隈グループ @Mikuma_company

【扶桑】 守護神の異名を持つ横須賀鎮守府の航空戦艦娘。 身長2メートル超の巨女、優しく穏やかな性格だが生身で艦娘や深海棲艦を一蹴できる桁外れの強さを持つ。 晴嵐の波紋を編み出した人物で、同じく瑞雲の鼓動を編み出した日向に自身との世界旅行を依頼した。艦娘になる前は教師だったという。 pic.twitter.com/VjZc9yExaZ

2017-08-29 22:37:19
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