日向倶楽部世界旅行編第12話「バヌアツ・タンナ島観光編」

三隈達が首都ポートビラを観光する一方、日向達は火山を有するジャングル島「タンナ島」へと上陸した。
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三隈グループ @Mikuma_company

どこへ行っても現地の人は歓迎ムード、故に失礼のないよう背筋も少し伸びる。 「人々は大樹の下によく集まっていますね。」 扶桑の指差す先には巨大な樹木と、その下で根のように集まる人々の姿があった。 「ジャングルの中だから樹木に対する信仰…というより、信頼が強いのだろうな。」

2017-08-29 21:53:03
三隈グループ @Mikuma_company

特定のシンボルに人が集まるという事例は大都会でも珍しい事ではない、銅像やオブジェが立派な樹木に代わっただけの話だ。 そんな事を話しながら村の中を歩いていると、こちらを見つけた島民が笑顔で近づいてきた。 「どれ、私が話そう。」 流暢な言葉で日向はコミュニケーションを取る。

2017-08-29 21:54:02
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「どこへ行ってもそうですが、日向は語学に秀でていますね。」 「そうですよねー」 扶桑の言うように日向はどの国でも言葉に不自由していなかった、現地住民とのやり取りは全て彼女に一任出来るほどである。 三人がそんな事を話しているうち、日向は島民を連れて戻って来た。

2017-08-29 21:55:02
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「何やら彼らの村で面白いものを見せてくれるらしい。」 「わお」 「我々を歓迎してくれるそうだ、行こう。」 日向の隣では上裸の少年が白い歯を見せて笑っている、彼女は彼に声をかけ村へ案内してくれるよう伝えた。 それに少年は笑顔で頷くと、先頭に立って歩き始めた。

2017-08-29 21:56:07
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「大きくない島だけど賑やかだね。」 「ね、活気は首都とあまり変わらないわ。」 人口が密集しているわけではなく、むしろ土地は広々と持て余されている。 しかし住人が皆一様にエネルギッシュな故にその印象は極めて明るかった、建物もないのに常に誰かの声がするのだ。

2017-08-29 21:57:05
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最上と初霜が歩きながらそう話していると、少年が振り返った。 「お姉さん達は旅の人?」 「えっ、日本語が話せるの…?」 突然彼から飛び出した流暢な日本語に、一行は呆気に取られる。 「うん、話せるよ。学校に行ってるのは兄さんだけだけど、僕も少し勉強したんだ。」

2017-08-29 21:58:04
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聞き取りやすいはっきりとした日本語に一行は感心する 「凄いなぁ…」 「ありがとう、昔村に来た日本人の人が本を置いて行ってくれて、それで勉強したんだ。」 得意げな彼と話しているうち、やがてジャングルの中に少し開けた場所が見えて来た、到着したのだ。

2017-08-29 21:59:11
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「少し待っててね。」 少年は村の中へと消え、やがてすぐに戻って来た。 「さあ、入って来て!」 「うむ、行こう。」 一行は村へと入って行った… 〜〜

2017-08-29 22:00:05
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〜〜 村では大地を踏みしめる情熱的なダンス、伝統的な手芸、一行は様々なものを体験しながら村人達と交流を深めた。 「しっかり掴まっていて下さいね」 背の高い扶桑は特に注目を集め、村の子供達を腕に掴まらせながら中心で踊っていた。 「扶桑さん力持ちですね…」 「確かに…」

2017-08-29 22:01:06
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子供達を腕にぶら下げたまま扶桑はメリーゴーランドのように踊る、身長が2メートル以上ある色白の女性というのはインパクトがあるらしく、他の村人も彼女の周りで踊っていた。 「ジョン・フラム信仰というのがタンナ島には存在するが、色白で背の高い彼女はイメージが近いのかもしれないな…。」

2017-08-29 22:02:18
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また至れり尽くせりな体験の一環として、狩猟における弓矢の体験まで行なった。 「うーん、当たらなかった…」 「私もダメだったわ、砲とは訳が違うのね。」 盛大に外した最上と初霜の隣では子供達がパスパスと的に当てている、彼等の力強さをひしひしと感じる一幕だ。

2017-08-29 22:03:07
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「これを私が?ええ…」 扶桑に至っては人の背丈ほどある弓を持たされている、轟音と共に放たれた矢は的ではない遠くの木を撃ち抜いていた。 「ああ…上手くはいきませんね、これを当てられるのは凄いと思います。」 「そうですよね…」 三人は島民の技術にすっかり感心していた。

2017-08-29 22:04:07
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「日向さんはやらないんですか?」 「私か?いや、私はいい…」 (こういうの好きそうなのに意外だな…) 日向だけは矢を射る事なく体験を終えた。 その後も一行は村での体験を楽しみ、夕食を済ませ、太陽が落ちる寸前に宿泊先であるツリーハウスへと戻った。 〜〜

2017-08-29 22:05:12
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〜〜 日も暮れた夜、電気やガスのないツリーハウスにおいて明かりは星々とランプの僅かな光のみ、真っ暗だ。 また翌日早朝に火山へ向かうという事もあり、一行は早々に就寝体制を整え始めた。 「では二人共、おやすみなさい。」 「日向さん最上さん、また明日ね。」

2017-08-29 22:06:04
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更に上へ上る扶桑と初霜を見送り、最上と日向は蚊帳を吊った部屋へと入って行った。 「明かりを消すぞ、ベッドには入れたか?」 「大丈夫です。」 最上の返事を聞き、日向はランプの明かりを消した、これで部屋を照らすのは窓の外から入ってくる星の明かりだけだ。

2017-08-29 22:07:04
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暗くなった部屋の中で最上はぼんやりと天井を眺める、目下にいた人々も姿を消したのか、火山の唸り声がとてもよく聴こえてくる。 (不思議な感覚だなぁ…) トラック泊地もヒューガリアンも基本的には海の側、彼女にとって山の音が聴こえるというのはとても新鮮で奇妙な事であった。

2017-08-29 22:08:05
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しばらく眠る事なく耳を澄ませていると、隣のベッドから聞き慣れた声がした。 「…なあ、まだ、起きているか?」 その声に最上は返事をする 「そうか、こうしてお前と二人で泊まるのは久しぶりだな。」 「久しぶりっていうか、初めてかもしれないですね…」 「そうだったか?」

2017-08-29 22:09:10
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最上と日向は長い付き合いになる、しかしこういう機会は本当に初めてであった。 「そうか…なんだか、前にもあったような気がしてしまうな。」 「トラックじゃ同じ家に住んでたし、同じ食卓にいたし、そう思っちゃいますよね。」 二人は揃って小さく笑う、改めて考えると不思議な事であった。

2017-08-29 22:10:02
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「初めてトラック泊地で会った時、なんだか厳しくて真面目そうな人だと思ったんですよ、日向さんの事。」 厳しくて真面目、その言葉に日向はフフッと笑う 「おいおい、今はどう思ってるんだ。」 最上は少し考える 「今は…なんだろ」 答えは出ない 「色々見てて分からないけど…」

2017-08-29 22:11:03
三隈グループ @Mikuma_company

強いて言うなら、と言葉を見つける 「…前向きな人?ですかね」 「前向き?」 「前向き」 誤魔化した訳ではない、彼女はこの旅の前から、長い艦娘生活の中で様々な日向を見て来た、笑ったり驚いたり、少し落ち込んだりと本当に様々だ。 だからこそ、どうにも一つの言葉では表し辛かった。

2017-08-29 22:12:05
三隈グループ @Mikuma_company

「そうか、前向きか…なるほどな。」 「日向さんはボクの事どう思ってたんです?」 同じ問いを投げかけてみる、こういうやり取りは滅多にしない故に興味があった、してみたくなった。 「…普通、だな。」 「普通?」 「ああ、良い意味で普通の人間に見えた。」

2017-08-29 22:13:08
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良い意味で普通、それは最上にとっていまいちピンと来ない言葉であった。 「艦娘になる…というか、あの頃艦娘になるような奴はみんな何かしら普通じゃなかったからな、色々と。」 初霜、三隈、あきつ丸、身近な所でも変わった人間は多かった、範囲を広げればそういう者たちはもっと居た。

2017-08-29 22:14:09
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「その中でお前はやたらに普通だった、なんで来たのか分からないくらいな。」 「へえ…。」 日向の言う通り最上は本当に普通だった、特別な家に生まれた訳でもなく、何かが失くなった訳でもない、ごく普通の人間。 それは激動の中に居た第一世代の艦娘において、極めて異質なのであった。

2017-08-29 22:15:02
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「…まあ、いざ共に過ごしてみればお前も十分ヘンな奴だったな、戦闘の時はやたらに思い切りが良いし。」 「えーっ、ヘンって酷くないですか。」 「ハハハッ、貶してる訳じゃないさ。肩の力を抜く時は抜いて、やる時はやる、良い事だ。」 「そうかなぁ」 暗闇の中、和やかな会話が続く。

2017-08-29 22:16:02
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二人はしばらく語らい続けた、昔の事、今の事、これからの事…そうするうちに、眠くなかった最上も穏やかな睡眠欲に包まれ始めた。 「ふぅ…そろそろ眠くなってきた…」 「そうか、明日は日が昇る前にヤスール山へ登るから早起きだぞ。」 「ふあーあ…じゃあちょうど良いですね…」

2017-08-29 22:17:04