日向倶楽部世界旅行編第46話「満月の向こう側」

トラブルを切り抜けブルネイ泊地に辿り着いた日向達、ひとまずは腰を落ち着け、大会に向けてゆったりとするが…
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三隈グループ @Mikuma_company

「…肉」 「ボクを撃った事は…覚えているかい?」 「夢中になっちゃって」 「初霜に何かが起きている」 「じゃあ、まさか…!」 「満月だろうと、全てを見せはしないのだ」 「何があるか分からないのになァ、クハハハハッ!」 「汝の様に、お前の様に、そうだろ?」 日向倶楽部、この後21:00! pic.twitter.com/d02cMh3eHZ

2018-05-08 20:45:49
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【前回の日向倶楽部】 扶桑です。 深海棲艦の襲撃は様々な波乱がありましたが、駆けつけた多くの皆さんによって無事鎮圧されました。 あれほどの深海棲艦がどこから来たのかなど、不明瞭な点は多いですが、ひとまず私達はブルネイ泊地に入港します。

2018-05-08 21:00:48
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【前回の日向倶楽部その2】 しんどい戦いをする日向を扶桑が救う! 波紋弾、波紋閃光、五月雨波紋、波紋嵐、次々と繰り出される扶桑の波紋技は、瞬く間に深海棲艦を撃滅する。 そこへ更に乱入する者達、利根姉妹、那智大佐など懐かしき出会いと混乱を経て、日向達はブルネイ泊地に到着する…

2018-05-08 21:02:08
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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第46話「満月の向こう側」

2018-05-08 21:03:35
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〜〜 ブルネイ泊地、司令部。 入港早々、日向はヒューガリアンの代表者として武蔵に呼び出されていた。 「ドタバタした後に済まないな。」 「いえ、問題ありません」 「そう言ってくれると有難い、まあ座ってくれ」 黒い長学ランを着た武蔵は、まだ着いたばかりの日向を労わり、話し始めた。

2018-05-08 21:04:42
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「まずは礼を言わせてもらおう、主らのおかげで深海棲艦を一網打尽に出来た、感謝する。」 「ありがとうございます、私も優秀な仲間達や駆け付けられた戦士達に助けられ、深く感謝しています。」 謙遜するような日向の言葉、武蔵は目を細めて楽しげに笑う。

2018-05-08 21:06:15
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「フッ、謙虚なものだな。一番無茶をしたのは主だと、三隈嬢からは聞いているのだがね。」 「な、三隈が…」 「ハッハッハッハ!面白い顔を見せてくれる、互いに良い友人と仲間を持っているな。」 驚く日向を指しながら武蔵は大きな口を開けて笑い、ズレたサングラスを元に戻す。

2018-05-08 21:07:47
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「ウム、主らとはこれからも良い関係を期待している、主らの所属するトラックの者達にも是非伝えてくれ。」 武蔵はそう言うと、話にひと段落つける、まず一つ目の話が終わった。 「さて次に…あの深海棲艦達のことだ」 「クソ…やたら多いのは気がかりでしたが、何か分かったのですか?」

2018-05-08 21:08:59
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日向が訊ねると、武蔵は一応頷く 「うむ…これは憶測に過ぎないが、一応主らに言うのが義理と思ってな。」 「義理?」 「フッ…主らに調査を依頼した地図にない島、覚えているな?」 日向は当然頷く、ブルネイ近海に現れた謎の島、眼前で沈んでしまったあの島、そう簡単には忘れない。

2018-05-08 21:10:12
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「あの島が何か…?」 「ああ、今回深海棲艦が現れた座標と、あの島の沈んだ座標が大体一致していた。」 「なんと」 「不思議だよな。あの島にたむろしていた連中が散り散りになった…と、私は一応考えている。根拠は大してないがね。」 武蔵はこの自論を鼻で笑い、二つ目の話を終えた。

2018-05-08 21:11:18
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話は三つ目へ 「さて、これが最後、闘技大会についてだ。」 「はい」 「エントリーの締め切りは二週間後、主の艤装をうちのメカマンに診せたところ、かなり損傷が激しいと言っていた…間に合うか?」 武蔵の問いに日向は複雑な面持ち、自分の艤装の事は自分が一番知っているからだ。

2018-05-08 21:12:17
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「…メインコンピュータや記憶デバイスは無傷ですが、間に合うかは微妙なラインです。」 「そうか…主の活躍には期待している故、なるべく融通は利かせるつもりだ、エントリーは前向きに検討してくれ。」 「ありがとうございます、なんとかしてみましょう。」 こうして三つ目の話も終わった。

2018-05-08 21:13:18
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話が終わると、武蔵は立ち上がる 「よし、以上だ。明日の夜、今回の礼や大会前の余興、パートナー探しなども兼ねた立食パーティを開く予定だ、是非参加してくれ。」 「おお…」 「本当は今夜でも良かったが用意が間に合わなくてな、その分明日はシェフも腕を振るう、期待しててくれ。」

2018-05-08 21:14:41
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武蔵はニッと笑うと、司令部の扉を開けた。 「ではまた、何かあれば言ってくれ。ああそれと、初霜は医務室の個室で預かっている、目は覚めているそうだ。部屋番は受付で聞いてくれ。」 「初霜が…ああ良かった、お心遣い感謝します、では…」 日向は再度一礼し、司令部を後にした。

2018-05-08 21:15:37
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やがて、そして、一人になった武蔵は司令部のドアを閉じると、静かに含みのある笑みを浮かべた。 「…初霜の奴にも、また話を聞かねばな…奴に、何かが起きた…そのはずだ。」 武蔵のギラギラとした赤い目が光る、司令部はただただ、静かであった。 〜〜

2018-05-08 21:16:43
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〜〜 ブルネイ泊地医務室、広い個室のベッドに初霜は横たわっていた、ステンドグラスの窓からは、橙色をした夕暮れの日がぼんやりと見える。 「水飲む?」 「うん…貰うわ。」 ベッドの隣では、最上が彼女に付き添っていた。初霜は渡された水を飲み、伏し目がちに息をつく。

2018-05-08 21:18:44
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「んっ…ふぅ…」 海の上で倒れた初霜が目を覚ましたのは、彼女がヒューガリアンに運び込まれ、ヒューガリアンが入港した後、彼女は昼寝する程度の時間を眠っていた。 「…大丈夫かい?」 「うん、平気よ、いつも通り元気だわ。」 初霜は明瞭な声で答え、普段と変わらぬ微笑みを浮かべる

2018-05-08 21:20:19
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それを見ると、最上は安堵の表情を浮かべた 「良かった…痛むところとかないかい?」 「ふふっ、日向さんみたいね。平気よ、どこも痛くないし、むしろ気分はスッキリしてるくらいだわ。」 ふんふんと腕を回し、初霜は元気を表現してみせる、確かに問題なさそうだった。

2018-05-08 21:21:43
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そして、彼女は二人しかいない部屋の中を見渡しつつ訊ねる 「…日向さん達は?」 「ああ…もうすぐ来ると思うよ。みんなも心配してたから、元気なところ見せてあげてよ。」 最上がそう言うと、初霜は俯き気味にため息をつく、少しナイーブな感情だ。 「そうね…迷惑かけた事も謝らなくっちゃ」

2018-05-08 21:23:01
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そんな彼女の様子を見て、最上は穏やかに声をかけた 「ねえ初霜」 「何?」 「ちょっと、手出してみて」 「手?」 初霜は首を傾げつつも、言われるがまま最上にスッと右手を差し出した。腕には艤装をつけていた跡が、赤い色をしてまだ少し残っていた。

2018-05-08 21:24:23
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その華奢で小さな手を、最上は両手でそっと包んだ。それは唐突な事だったが、初霜は黙って包まれていた。包む手は大きく、暖かい。 やがて、しばらくの沈黙があった後、最上はギュッと手を握り、屈託のない優しい表情で言った。 「…明日、天気良いんだって。何かする?」

2018-05-08 21:26:24
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この問いに、初霜は少し躊躇ってから答えた 「…肉」 「お肉?」 「うん、焼肉…そう、焼肉が食べたいわ」 華奢で小さな身体に似合わぬ焼肉要求、だが最上は特に驚く事もなく、笑って頷いた。 「そっか、前行った所にする?」 「うーん…他のところも行ってみたいけど、この前の所も…」

2018-05-08 21:27:29
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焼肉をどこで食べるか、およそ病室の白いベッドで考える事ではない。 初霜はうーんと悩んだ末、答えを出した。 「…この後"も"食べちゃダメかしら」 「えっ、夜と明日の昼って事?」 「ええ、まだ夕方だし…」 最上もこの食いしん坊な意見には驚いたが、これにもすぐ頷いた。

2018-05-08 21:28:40
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「うん、じゃあこの後行けるか、日向さん達にも話してみよう。別に二人で行っても良いからさ」 「良いの?」 「良いよ、ボクもお腹空いてるし」 最上はトントンっとお腹を叩いて笑う、それを見て初霜もクスッと笑った。 「ねえ、何食べる?」 「ここって豚は置いてないからね、やっぱり…」

2018-05-08 21:30:25
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とまあそんな話をしていると、ドアがコンコン、とノックされ、病室にゆったりと人が入ってきた。 「失礼しますわ。」 「初霜殿、大丈夫でありますか?」 やって来たのは三隈とあきつ丸。最上達が普通に話しているのを見ると、二人の顔にはひとまず安堵が表れた。

2018-05-08 21:31:43