日向倶楽部世界旅行編第46話「満月の向こう側」

トラブルを切り抜けブルネイ泊地に辿り着いた日向達、ひとまずは腰を落ち着け、大会に向けてゆったりとするが…
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三隈グループ @Mikuma_company

「突然倒れたので何事かと…無事で何よりであります。」 「二人共心配かけてごめんなさい、でももう元気よ。」 初霜の明瞭な返事を見て、三隈も微笑む 「お怪我は無いようだけれど、痛むところがあればすぐに言って下さいね。モガミンも付き添いありがとう。」 「まあね」 病室は和やかで賑やかに

2018-05-08 21:33:02
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「そういや日向さんと…扶桑さんは?」 「ひゅーちゃんは司令部でお話が…フーさんもすぐに来ますわ。」 するとまた一人…いや二人、廊下でペラペラ話しながらやって来た 「ココデスカー?ハツシモチャン」 「そのはずよ、失礼するわ」 ガラッ、病室に背の高い女と、強そうな女が入って来た。

2018-05-08 21:34:12
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最上達はその二人を見て即座に思い出す 「この二人は…金剛さん!足柄さん!」 「ハァイ!ハツシモチャンお久しブリ!」 「久し振りね最上、他の三人も。」 身長が190cmもある女、「金剛」はとても陽気に、その隣の170cmほどの女「足柄」は落ち着き払って言った。

2018-05-08 21:35:41
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金剛と足柄、二人はトラック泊地歴戦の勇士にして大ベテランであり、当然最上達もよく知る艦娘だった。 その戦闘スタイルと所属から察していた最上は、確信となったそれにウンウンと頷いた。 「やっぱり金剛さんと足柄さんだ…トラック泊地所属の援軍というのは、お二人!」

2018-05-08 21:37:07
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「ザッツライ!いい運動になったネ!」 金剛は親指を立て、白い歯を見せて笑う、左手の薬指では、くすんだ指輪が静かに光る。 「予想外の遭遇だったけれど、調整の役には立ったわ、艦娘は戦うのが一番ね。」 足柄は自信に満ちた笑みを浮かべる、好戦的で理知的、それが彼女だ。

2018-05-08 21:38:24
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また彼女は、かつて最上が巡洋艦杯で打ち倒した強敵でもある。 「お二人が駆けつけてくれたおかげで、ヒューガリアンは無傷でした」 そう礼を述べる最上に、足柄は口元を押さえて笑う 「フフッ、貴女も随分と敵を圧倒してたそうじゃない、流石チャンピオンね。」

2018-05-08 21:39:27
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チャンピオン、その言葉に最上は背中がむず痒くなる、一年以上経った今でも実感は沸かない。 「アハハそんな、からかわないで下さいよ足柄さん」 「……フフフッ…」 二人がそんな会話をする一方、金剛は初霜に目を向ける。

2018-05-08 21:40:43
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「ハツシモチャン、倒れたと聞きましたが大丈夫デスカ?」 「はい、この通りです」 「オゥ、マッシヴ!タフ!」 初霜の肩をポントンポンと叩き、金剛はニッコリと笑う。歳の差こそ10以上あったが、彼女は初霜にとっては戦友である。反攻作戦では何度も戦果を挙げ、共に勝利を掴んだ間柄だ。

2018-05-08 21:41:51
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そんな小さな戦友に、人生の先輩として金剛は注意する 「でも貴女、身体小さいんですからね、あんまり無理しちゃダメですよ、OK?」 先程とは違う落ち着いた声に、初霜は頷く 「ええ、気を付けます。」 「グッド!何事もホドホドネ、ホドホド。」 また親指を立て、金剛はニッコリ笑った。

2018-05-08 21:43:15
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そんなこんなでそういえば 「ところで、お二人はどうしてブルネイに?」 最上が訊ねると、二人は頷く 「それは当然、闘技大会の出場よ。」 「ハァイ、ワターシはそんなノリキじゃ無いんデースケードネー…歳も歳だし観戦したいイッタンデスケドモ、カコもナカも来れないからシカタナク。」

2018-05-08 21:44:27
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やる気マックスな足柄に対し、金剛は若干消極的だ。 「当然最上、貴女も出るのよね?」 「ええまあ、詳しい事はまだ決めてないんですけどね。」 と、そんな話をしているとまた人が入ってきた、今度は金剛より背が高く大柄な女性だ。 「来ました」 「オゥ…オゥ?」 その女性に金剛は困惑する

2018-05-08 21:45:35
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これは誰か?当然扶桑である。 「初霜さん、大丈夫ですか?」 「ええ、平気です」 初霜の答えに扶桑は安堵の表情 「そうですか…無事で何よりでした。日向ももうじき来るでしょう。」 するとバタバタ走る音と共に部屋のドアがバァッと開き、日向が現れた。

2018-05-08 21:46:48
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「大丈夫か初霜痛むところはないか何かあったらすぐに言うんだぞ」 「ええ、大…」 「本当か無理はするなよ油断もするな少しでも気になる事があったらちゃんと言わないと」 「ひゅ、日向さん落ち着いてくださいよ」 最上に制止されると、まくし立てていた日向は一旦話すのをやめた。

2018-05-08 21:47:41
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そして冷静になり、ゆっくり話し出す 「…すまない、ともあれ無事なようだな、良かった」 「はい…迷惑かけてごめんなさい」 「いや、気に病む事はない、全員無事だからな。…ただ、何故あんな事を…というのだけは、きちんと聞いておきたいんだ。」 謝る初霜に、日向は優しく、諭すように訊ねた。

2018-05-08 21:48:49
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「まず…何があったか覚えているか?」 「…はい、深海棲艦との戦闘を…戦ってるうちに気を失って…」 初霜はゆっくり、絞り出すように答えた 「…そうか、では何故、私達に応答しなかった?」 「……ごめんなさい、夢中になっちゃって、それで…」 「…なるほど」 日向はふむふむと頷く。

2018-05-08 21:50:02
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すると、最上が横から口を挟んだ 「じゃあ初霜、ボクを撃った事は…覚えているかい?」 「…?」 最上の問いに、日向とあきつ丸は彼女の方を見る、だが最上は、初霜の目を見たまま訊ねる。 「………」 「…覚えてるかい?」 沈黙する初霜の赤みがかった目を、最上はジッと見つめる。

2018-05-08 21:51:14
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その目を見たまま、初霜は答えた 「…ごめんなさい、多分、夢中で気が付いて無かったわ。」 彼女がそう答えると、最上は柔らかな表情で微笑む 「…そっか、まあ乱戦だったもんね。」 「でも言い訳にならないわ、私のせいで場が混乱しちゃったんだもの…」 「良いんだよ、そういう時もあるさ」

2018-05-08 21:52:25
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落ち込む初霜を慰めるように、最上は微笑みのまま言った。 やがてひと段落すると、日向が総括 「…まあ、皆無事で何よりだ。初霜は今後はこういう事が無いよう気を付けてくれ、連携や意思の疎通は大切だからな。」 「はい、すみませんでした…」 再度謝罪する初霜

2018-05-08 21:53:46
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そこへ日向は優しく言った 「もし疲れやストレスがあるなら、遠慮なく言ってくれよ。美味いものを作ったり、何処か行ったり、あるいは一人が良いなら、そういう時間も作るからな。」 「ありがとうございます、日向さん。」 「うむ」 初霜の返事に日向はしかと頷く、こうして話は終わった。

2018-05-08 21:55:26
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すると、最上が初霜の手を取って言った 「あっそうだ日向さん、ボクと初霜は今夜焼肉を食べたいんですけど」 「焼肉?」 「ええ、前に二人で観光した時に美味しいところ見つけてて。戦闘終わった後だし、足柄さんとかもいるし、行きませんか?」 足柄や金剛などの顔も伺いつつ、最上は提案する。

2018-05-08 21:56:38
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提案された日向は、心なしか訴えかける様な初霜の顔を見つつ、頷いた 「…そうだな、今日は体力も使ったし、しっかり食べるのも良いだろう。足柄、金剛、二人はどうだ?」 「良いわね、旅の話も聞いてみたいし、ご一緒するわ。」 「私もOKネ」 夕食は大勢での焼肉に決定した。

2018-05-08 21:57:57
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となれば早速支度が始まる 「では私が予約を入れておきましょう、モガミン、お店を教えてくださる?」 「ああ、名前は焼肉屋フルメタルで…」 三隈は名前と電話番号を把握すると、手早く人数を数え、スマートフォン片手に病室の外へ向かった。

2018-05-08 21:59:07
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「私達は外で待ってましょうか」 「そうデスネー…ええ、そうシマショウ」 広い個室とはいえ大人数がいるのは狭い、足柄と金剛は病室の外へ向かう 「失礼スルネ」 「ええ、どうぞ」 金剛は扶桑の顔をまじまじと見つつ、部屋を後にした。 残ったのは最上、日向、扶桑、あきつ丸、初霜の五人。

2018-05-08 22:00:27
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ここで最上が初霜に言った 「…初霜はシャワー浴びて来なよ、出撃後浴びれてないでしょ?」 「ええ、そうするわ、潮臭いものね」 「着替えはそこにあるよ、上着も一応」 「ありがとう、待っててね」 促され、初霜は病室に備え付けられたシャワールームへ入って行った。

2018-05-08 22:01:57
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やがてシャワーの水音が聞こえ始めたことを確認すると、最上は日向の腕を突つき、あきつ丸と扶桑を残して廊下に出た。 「…どうした」 「これからご飯食べに行くのに申し訳無いですけど…初霜の事です」 「…ああ、不明瞭な答えだったな。」 最上の言葉に、日向は神妙な顔で頷く

2018-05-08 22:03:42