日向倶楽部世界旅行編第13話「ヤスール山・動く巨岩」

タンナ島観光の大一番であるヤスール山を目指す日向達。だがそんな彼らに静かに、大きな影が迫る。
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三隈グループ @Mikuma_company

【前回までの日向倶楽部】 扶桑です。 タンナ島へ降り立った私たち、とても活発な島の人々と交流し、踊ったり踊ったりして充実した一日を過ごしました。 そして夜は木の上の家…ツリーハウスというものに宿泊、翌早朝に起床した私たちはヤスール山を目指します。

2017-09-05 21:30:08
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【前回までの日向倶楽部その2】 三隈達と別行動でタンナ島の観光を始めた日向達、地元の人々との交流、ツリーハウスでの大人気ないジャンケンを経て、一行は翌日に備え眠りにつく。 だがその夜、謎の影が扶桑を襲い、意味深な言葉を並べ逃げ去るのだった。 そして翌朝、一行はヤスール山を目指す…

2017-09-05 21:31:06
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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第13話「ヤスール山・動く巨岩」

2017-09-05 21:31:43
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〜〜 太陽がまだ顔を出していない早朝、日向達は車に揺られてヤスール山を目指していた。 「け、結構揺れますね」 「舗装なんてされてないからな、ずっとこの調子だから我慢してくれ。」 石ころや木の枝を踏み潰し、車は山道を登って行く。

2017-09-05 21:32:07
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やがて車は山の中腹にたどり着いた、ここから山頂までは徒歩で行く必要がある。 「足場は悪い上に暗くて視界も悪い、懐中電灯はきちんと付けるんだぞ。」 各々日向から懐中電灯を受け取る 「…扶桑さん、その格好で平気ですか?」 扶桑に懐中電灯を渡しながら最上は尋ねた。

2017-09-05 21:33:06
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「ええ、心配は要りませんよ。」 長い長い着物と山道の相性は最悪に見えたが、彼女は無問題といった様子であった。 「よーし、それじゃあ火口目指して歩くぞ!」 火山を前に眠気も覚めたのか、懐中電灯を振りながら日向はずんずん山道を歩き始めた、最上達もその後に続いて行く。

2017-09-05 21:34:10
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余談だが、ヤスール山は活火山であり登山には相応の危険が伴う。 故に、観光にはきちんとしたツアーへの参加が絶対である事をここに記しておく。 「うおお地鳴りだ」 今回は日向だから問題ないというだけの話である、航空戦艦はすごいのだ。

2017-09-05 21:35:11
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そんなこんなで一行は夜明け前のヤスール山道をえっさほいさと登っていく。 「足場本当に悪いですね…扶桑さん本当に平気なんですか?」 「平気ですよ、足腰は丈夫なんです。」 小石を蹴散らしながら扶桑は山を登る、はたから見るとなんとも奇妙な光景である。

2017-09-05 21:36:10
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途中は本当に石や岩だらけ、ところどころにかつての噴火の痕跡が残っており、自然の力強さをひしひしと感じさせてくれる。 「ぽこぽこ穴が空いてるわ、何かしら?」 「火山のガスとかがピューって出たんじゃないかなぁ」 勝手な憶測を語り合って科学者気分、山をどんどん登って行く。

2017-09-05 21:37:11
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そして 「よーし、着いたぞ!」 先頭の日向が拳を突き上げて言った、遂に山頂へ辿り着いたのである。 「三人とも見ろ!すごいだろう!」 「おお…!」 最上達も山頂へと並ぶ、足場の悪い山を登る疲れはあったが、目下に拡がる光景はそれらを焼き尽くすように消し飛ばした。

2017-09-05 21:38:03
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「な、なんだこれ、すごい…!」 拡がるのは大穴のように拡がる火山の火口、暗闇、しかしその中では真っ赤な溶岩がまるでシチュー鍋のようにグツグツと煮えたぎっている。 「本当は夜でも良いんだがな、この早朝深夜の方が空いている…そしてよーく見ていろよ、もっと凄いぞ。」

2017-09-05 21:39:21
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日向がそう言った次の瞬間! 「おおおおっ!?」 ゴゴォォォォォンンンという爆音と共に赤い溶岩が血飛沫のように噴き出した! 溶岩達は光を撒き散らし、地に堕ちるホタルのように再び火口へと消えて行く! 凄まじい光景!これが大自然!バヌアツ!タンナ島!ヤスール山!

2017-09-05 21:40:11
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「すっごーい!!ねえ!ねえ!もっと近くに行っちゃダメなんですか!?」 「いや、これ以上は危険だからダメだ。」 更に前へ行こうとする初霜を日向は制止する、彼等が今立っている場所も相当危険なのだ。 「もっと見てみたいわ…」 「なら、私の上から見てみますか?」 「えっ!?」

2017-09-05 21:41:05
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困惑と興奮の入り混じった初霜を扶桑はヒョイっと持ち上げて肩に乗せる、彼女の視点が2メートル上に行く。 「どうですか?」 「わーっ!すごいわ扶桑さん!」 人間の視野というのは数十センチの上昇でもかなりの拡がりを見せるという、当然彼女の目に入る景色は先程とはまた別物だった。

2017-09-05 21:42:06
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「どうだ初霜?」 「すごいわ!地球の底が見えるみたい!」 煮えたぎる溶岩が更に鮮明に映る、感動しないわけがなかった。 だが、もう一つ彼女の目には気になるものが映った。 「…?アレ何かしら?」 「どうしたの?」 目を凝らし、初霜は溶岩とは別の方を見つめる。

2017-09-05 21:43:04
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「向こうで岩が動いたような気がするの、落石かしら?」 「地響きも多い、そうだと思うが。」 「そうよねえ…」 気になる事もあったが、ともかく一行は火山見物を大いに楽しんだ、特に初霜は終始扶桑の上におり、誰よりもその場を満喫し、はしゃいでいた。

2017-09-05 21:44:05
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「おっ、これは噴火したての溶岩だな。」 日向も日向で冷え固まった溶岩や石ころを拾い集めていた。 「黒くて綺麗ですね…」 「そうだろう、まるで宝石のようだ。しかし気になるな。」 「どうしたんですか?」 喜びつつも訝しむような顔の日向に最上は尋ねる。

2017-09-05 21:45:05
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「さっきから削られたような岩が目立つんだ、ちょっと妙だな。」 彼女の指差す先には、まるで齧られたように変形した岩石があった。 「誰かが削って持ち帰ったとか?」 「まあそんなとこだろうが…地質学者でも来たのかな。」 そんなこんなで火山見物を続けるうち、日が昇り始めてきた。

2017-09-05 21:46:04
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一行は火山の上から水平線を見つめる 「眠気を堪えて来た甲斐があっただろう?」 「はい…すごいや…」 キラキラと登る朝日、それを同じくらいキラキラした目で見つめる最上達に日向は微笑んだ。 しばらくの間、一行は朝日に顔を照らされながら夜明けを過ごした…

2017-09-05 21:47:08
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やがて朝日が上りきり、火山見物もひと段落ついた 「そろそろ腹も減ったろう、戻るか?」 「そうですね…だんだん暑くなってきたし。」 溶岩がすぐそこにあるという認識もあってか、火口近くは気温以上の暑さを感じた。 「では世界一危険なポストに手紙を投函して、村に戻るとしよう…」

2017-09-05 21:48:02
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そう言って日向が振り向き、歩き出そうとした時だった。 「…?なんだこの岩は。」 来た道の上に見上げるほどの大きな岩が鎮座していた。 しかしそれはおかしい、この道を通って来たのだから、そこに障害物があるはずがないのだ。 日向は訝しみ、注意深くこれを観察する。

2017-09-05 21:49:03
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「落石なら危ない話だが、まず気付くよな…」 彼女がそう言った時!信じられないことが起きた! 「なっ」 ズゥゥン!その岩が! 「え?」 動いたのだ! 岩は意思を持つように動き、その場でくるりと回った! 「日向さん!これ!」 「気を付けろ!こいつは岩じゃないぞ!」

2017-09-05 21:50:02
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やがて180度回った岩はその正体を現した! 「なんだこいつは!?蟹か!?」 白い大きな二本のハサミ、太く硬く長い六本の脚、まばらな色をした身体! 体長は数メートルに及び、大岩を背負ったようなそれは蟹のような虫のようなサソリのような、とにかく巨大な「生き物」!

2017-09-05 21:51:03
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「嘘だろ…ここに来る途中の穴ってこいつの足跡かよ…」 巨大甲殻類の脚を見て最上は息を呑む 「しかもこいつ、岩石を食ってるな…妙な点は全部こいつの仕業ってことか。」 日向の方は対峙して様子を伺う、その手には甲板と刀があったが、この硬そうな生き物に通じるかは不確かだ。

2017-09-05 21:52:05