日向倶楽部世界旅行編第14話「トラック泊地・帝王の休日」

バヌアツを発ちシドニーを目指す日向達。 一方トラック島では、軽巡洋艦娘那珂が一人優雅な休日を謳歌していた…
0
三隈グループ @Mikuma_company

そのとき! 「うわぁぁぁっ!?」 「えっ、提督!?」 穴の周りのコンクリートが崩れ、提督が地面の下へと落下した! 手の届かぬ那珂は素早く耳を澄ませ、穴の深さを知ろうとする 「いってぇぇ…」 が、その必要はなかった、落下した情けない男の声がすぐに聞こえて来たからである。

2017-09-12 22:18:09
三隈グループ @Mikuma_company

ひとまず那珂は穴に向けて声をかけた 「大丈夫ー!?」 すると 「生きてるー!」 無事な提督の声と、水の流れる音が聴こえて来た。 「そこどこー!?」 状況を確認するべく質問を続ける、生きているから提督の声は当然返って来る 「多分下水道だ!水がある!」

2017-09-12 22:19:06
三隈グループ @Mikuma_company

が!それは突如叫び声に変わった! 「うわぁぁぁっ!?」 「提督!?」 迫真の叫び声、それを聞いた那珂はすぐに穴の中へ飛び込み、間抜けな男の元へ急ぐ。 「どうしたの!?」 固まったように動かない提督に声をかけつつ彼女は周囲を見渡す、何か危険なものがいるのかもしれない。

2017-09-12 22:20:11
三隈グループ @Mikuma_company

だが、うっすらと明かりのついた下水道は平和そのものだった。 「…何もいないけど、何かいたの?」 警戒しつつ震える提督に尋ねる、すると彼の口からは彼女の予想外の答えが返って来た。 「そ、そこにな、フナムシ…」 「フナムシ!?それは…はぁ!?」 下水道に那珂の声が響く。

2017-09-12 22:21:09
三隈グループ @Mikuma_company

皆さんは海辺を歩いているとき、突然目の前を超高速で通り過ぎる小さな物体を見たことがあるだろうか?そう!あれがフナムシである。 「えっ?大きさは?」 念の為訊くと 「こっ、このくらい…」 馬鹿な男は指でサイズを示す、そのサイズは那珂がよく知るごく普通のフナムシだった。

2017-09-12 22:22:04
三隈グループ @Mikuma_company

まさかと思い那珂は訊いた 「じゃあフナムシに驚いて叫んだの?」 「うん」 もう一度訊いた 「貴方提督だよね?フナムシって泊地にもいるよね!?それで叫ぶ!?」 「だって虫…」 「…」 馬鹿な男のあんまりな答えに那珂は絶句した、そもそもフナムシは虫ではなく甲殻類である。

2017-09-12 22:23:04
三隈グループ @Mikuma_company

警戒を解き、彼女は大きくため息をついた 「昔泊地の小屋に虫が出たって大騒ぎしてたけど、何も変わってない…」 「すいません…」 「はあ…」 二人は落ちて来た穴を見上げる、下水道というのは結構大きいものであり、故にその穴も戻るには厳しい高さに位置していた。

2017-09-12 22:24:21
三隈グループ @Mikuma_company

「まあ向き不向きがあるってのは提督の口癖ですもんね、フナムシ相手は向いてないってことで良いです。」 「うう…」 紡がれるわざとらしい敬語を聞き提督は情けない声を上げる、十割責任がある故になおさら何も言えない。 今の彼は穴に落ちただけでなく、男としての格も真っ逆さまであった。

2017-09-12 22:25:25
三隈グループ @Mikuma_company

そんなハナクソをよそに、那珂は帽子を被りなおして辺りを見回す 「…まあ仕方ないし、どこかマンホールを探して外に出ましょう。どうしても虫が怖いなら、下や周り見ずに私の背中だけ見てて下さい。」 「はい…お願いします…」 華やかな街並みから一転、二人は薄暗い下水道を歩き始めた。

2017-09-12 22:26:13
三隈グループ @Mikuma_company

だが歩き始めて少ししたとき 「あ、那珂さんストップ、止まって。」 提督が那珂の袖を掴んで止めた 「…また虫?」 「…いや違うんだ、そこ、何かおかしい。」 彼の指差した先は一見何もない空間 「…?何かあるの?」 「よく見てよ那珂、そこにネズミが引っ付いてる…」

2017-09-12 22:27:08
三隈グループ @Mikuma_company

提督の言うように目を凝らすと、そこには一匹のネズミが妙な体勢で固まっていた。 「何、これ?」 それだけではない!虫やゴミやホコリなど、様々な物体がその空間に張り付けられるように固まっていたのだ! 「まるで見えない壁があるみたいに、物が止まっている…」

2017-09-12 22:28:12
三隈グループ @Mikuma_company

那珂は近くに落ちていた鉄パイプを取り、その空間に向けて振り下ろした。 「何か、何かに引っかかった様な感覚…」 振り切った鉄パイプを見ると、そこには白い糸の様なものが絡み付いていた。 「糸…?」 「糸だなぁ…」 白い糸、どうやらゴミや生き物はこれに引っかかっていたらしい。

2017-09-12 22:29:11
三隈グループ @Mikuma_company

下水や風は正常に流れている、止まっているのは物理的な物体のみ。 何かを理解し始めた二人は、揺れる白い糸を神妙な面持ちで見つめた 「これじゃまるで…」 「蜘蛛の巣…だよね。」 ショッピングモールでの悪夢を彷彿とさせる状況に、二人は静かに息を呑んだ。 つづく

2017-09-12 22:30:05
三隈グループ @Mikuma_company

【トラック島】 ミクロネシア連邦に存在する島群、対深海棲艦の要衝としてトラック泊地が設立されている。 島同士は大きな橋で結ばれており、その大部分は三隈グループの企業城下町となっている。 なお正式名称はチューク諸島だが、現実のそれとは大きく異なる為に本作ではトラック島としている。

2017-09-12 22:31:09
三隈グループ @Mikuma_company

【トラック泊地】 トラック島に存在する対深海棲艦の要衝。 三隈グループがスポンサーを務める豊かな拠点で、それ故に観光地としても人気があり、なんとマンションまで建てられている。 責任者は提督だが実権は那珂が握っており、外務は提督、内務は那珂という体制で運営が行われている。

2017-09-12 22:32:08
三隈グループ @Mikuma_company

【トラック・ストリート】 様々な商業施設が建ち並ぶトラック島の大通り、その大半は三隈グループ傘下の企業が占めており、夜に見られる煌びやかな風景は同社の威光と島の発展を存分に示している。 休日は車両に対する交通規制が入り、パフォーマーや観光客などで賑わう。

2017-09-12 22:33:09
三隈グループ @Mikuma_company

【提督】 トラック泊地の責任者、提督と呼ばれているものの実権は那珂が握っており、有事に責任を取る為にいる男。 才もカリスマもない凡夫だが交渉ごとはそれなりに得意、その肩書きを活かして泊地と島の潤滑油として日々島を回っている、モットーは適材適所。 本名を呼ばれる事を極端に嫌う。

2017-09-12 22:34:22
三隈グループ @Mikuma_company

【那珂】 トラック泊地の軽巡洋艦娘。 島で知らぬ者はいない有名人、指導者としても艦娘としても非の打ち所がない泊地の帝王にして英雄。 人としても優れた人格と才を持ち、全てを成し遂げ、誰に対しても明るく優しく微笑むその姿は人々を惹きつけ続ける。 休日は変装して街を楽しんでいる。 pic.twitter.com/KmE0lMvyO2

2017-09-12 22:35:27
拡大
三隈グループ @Mikuma_company

なお以前那珂さんが主役を務めた「帝王の休日」シリーズに関しましてはこちらから読むことができます、読んでおくと楽しめるかもしれません。

2017-09-12 22:43:11