日向倶楽部世界旅行編第14話「トラック泊地・帝王の休日」

バヌアツを発ちシドニーを目指す日向達。 一方トラック島では、軽巡洋艦娘那珂が一人優雅な休日を謳歌していた…
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三隈グループ @Mikuma_company

【前回までの日向倶楽部】 扶桑です。 火山で岩に襲われたり色々ありましたが、私達はバヌアツ観光を終え次なる目的地シドニーを目指します。 …のですが、今回は私達のお話では無いようですね。

2017-09-12 21:30:07
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日向倶楽部 〜世界旅行編〜 第14話「トラック泊地・帝王の休日」

2017-09-12 21:30:38
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〜〜 太平洋に浮かぶ「トラック島」 雄大な海、青々とした空、それと相反するかのように拡がる経済都市、ビル群、そして対深海棲艦の一大拠点トラック泊地。 日向達が旅をしている間、この場所でも当然同じ時間が流れていた。

2017-09-12 21:31:10
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ここはそんなトラック島都市部の「トラック・ストリート」 三隈グループの商業施設を中心に様々な建物が立ち並ぶ大通りであり、交通と経済の中心にして大動脈である。 東京の最強都市銀座を彷彿とさせる街並みは昼夜問わず美しく拡がり、トラック泊地の威信をも存分に表している。

2017-09-12 21:32:07
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広場では陽気な音楽を鳴らしながら大道芸人達が技を披露する、艦娘が身近な所であるが故、艦娘の格好をして踊る人々もいる。 「そこのお姉さん!良ければ一緒に踊りましょう!」 オレンジのワンピースを着た眼鏡の女性が、戦艦娘の格好をした踊り子に手を引かれ人々の前に立つ。

2017-09-12 21:33:04
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「私の真似をしてね!」 ギターの音に合わせて踊り子は踊る、くるくる回り、ステップを踏み、ポーズを決める。 それをじっと見ていた女性は同じようにする、くるくるくると回り、タンタタンとステップを踏む、だがその踊りには圧倒的なキレと優雅さがあった、踊り子は口に手を当てて驚く。

2017-09-12 21:34:05
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じゃあこれはどう?対抗心と好奇心に押された踊り子がより複雑な踊りを踊る、回って、ステップ、そしてジャンプ。 対する女性はそれをコピーしたかのように正確に踊る、オレンジのワンピースがひらひらと揺れ、眼鏡の縁に当たる太陽の光が煌びやかに彼女を彩る。

2017-09-12 21:35:07
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気が付けば二人は競うように踊り始めていた、煌びやかな踊り子と同じように踊る地味な格好の女性の姿は、異世界に迷い込んだ少女の冒険譚のように人々の眼に映る。 それを見ようと徐々に人が集まり、人が人を呼び、気が付けば二人の周りを大勢の人が埋め尽くしていた。

2017-09-12 21:36:05
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「おい!あの姉ちゃんすげえな!」 「ありゃあ経験者の動きだぜ!」 バック転、バック転、バック宙、女性は踊りというより新体操のような動きをする、踊り子も競るように前転、側転、バック宙、広場は気が付けば二人のアスレチックと化し、周囲にいた別の音楽家達も踊りに音を合わせていた。

2017-09-12 21:37:04
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二人の踊りは半時間ほど続き、正午の時報と共にポーズを決めて終演を迎えた、湧き立つほど集まっていた群衆から喝采の拍手が贈られる。 「貴女すごいわね!また会えたら嬉しいわ!」 踊り子は滴る汗を拭きながら笑う、女性も礼を言って、群衆の熱い眼差しを受けながらその場を立ち去った。

2017-09-12 21:38:25
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やがて彼女はテクテクと歩き、自然豊かな公園のベンチにゆったりと腰掛ける、時間は昼食どき、どこで腹を満たすか少し考える時間が必要だった。 「どうも、こんにちは…」 そんな彼女の横から間の抜けた男の声が聞こえてきた、その声に彼女は聞き覚えがある。

2017-09-12 21:39:13
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「…どなたですか?」 彼女はわざとらしく知らぬふりをした、すると男は動揺したのか、謝罪の言葉と共にその場を立ち去ろうとする。 その様子がたまらなくおかしくなり、彼女は肩を震わせて笑った。 「嘘嘘、分かるでしょ?」 男の方へ振り向き、眼鏡を少しずらしてみせる。

2017-09-12 21:40:07
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それを見ると彼は肩を落として苦く笑った 「ああ良かった…心臓止まるかと思ったよ。」 「ふふっ、この変装も熟れて来たでしょ?」 本当だよなどと言いながら男もベンチに座る、島の陽気には少々暑そうなスーツと、頭に乗るちょっぴり高そうな帽子が滑稽に見える男だった。

2017-09-12 21:41:11
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「どうしたの?これからお昼?」 隣に座った彼に女性は尋ねると、男はスマートフォンを取り出す 「今日は午前中で全部終わっちゃったから、何か食べて帰ろうとしたらね…」 彼は笑いを堪えながらそれを操作し、何やらビデオを再生した 「綺麗な踊り子さんがいてね、追っかけてきたんだ。」

2017-09-12 21:42:04
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女性はクスクスと笑ってその画面を手で隠す 「なぁにその言い方、また何か読んだの?」 「いや、いくつになってもこういう事言ってみたくなるんだ、良いじゃないか。」 男は小っ恥ずかしそうにスマートフォンをしまい、ベンチの背もたれに背を預けた、明るみに少し赤くなった顔が現れる。

2017-09-12 21:43:08
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やがてそんな顔を誤魔化すように彼は尋ねた 「そういえばこれからお昼食べるつもりなんだけど、一緒にどうかな。」 お腹をさするような仕草をすると、女性は 「えー?どうしよっかな、私は一人でも構わないし。」 そう勿体ぶって言った、男の口が寂しそうにへの字に曲がる。

2017-09-12 21:44:09
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「いやね、たまには執務室じゃなくてさ、おしゃれな所で食べたいって思ったんだけど…」 「うふふふっ」 男の言葉に彼女は公園ではしゃぐ子供達と同じように笑う、男は男で暗中を索するように言葉を紡ぐし、そんな様子がまたおかしくなり、彼女の笑顔はいっそう強くなった。

2017-09-12 21:45:09
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そんなやりとりをしてから、女性はスッと立ち上がって言った 「ふふっ、いいよ、どっかで一緒に食べよ。」 「本当に?…へへへ、やったね。」 男はゆっくりと立ち上がって笑う、二人は公園を出て賑やかな街中へと向かって行った。 〜〜

2017-09-12 21:46:13
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〜〜 トラック・ストリート三丁目から少し外れた場所にある小さなイタリア料理店、小綺麗な店先には花や陶器の小物が並び、メルヘンチックな雰囲気を醸し出している。 厨房ではイタリア人とインド人のシェフが忙しく動き、調理場らしい音を響かせる、そんな店へ二人はやって来ていた。

2017-09-12 21:47:13
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「良さそうな所だなぁ」 男は帽子と上着を置いて椅子に腰掛ける、女性も同じところに帽子を置いて座る。 「最近出来たところなの、良いでしょ?」 「もちろん、きっと美味しいとこだよ。」 二人はメニューに目を通す、イタリアンらしくピッツァやパスタが見慣れない言葉と共に並んでいた。

2017-09-12 21:48:08
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「やっぱり島らしく海の物が多いね」 「ここの養殖業もすっかり軌道に乗ってるから値段もリーズナブルだなぁ」 オーソドックスな物もあったが、目を惹くのは美味しそうな魚介類の名前ばかりだ 「私この、ホタテのクリームパスタにしよ。」 「ホタルイカのパスタ…?これにする。」

2017-09-12 21:49:03
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料理を決めると店員を呼び、女性は流暢な外国語で注文を始めた。 「Oh、ニホンゴデ、大丈夫デスよ。食後はコフィ、ティー、如何シマスカ?」 男は紅茶を所望した 「ありがとう、じゃあ紅茶とコーヒーでお願い。」 「オゥケィ」 注文を聞き取ると、店員の男は厨房へと戻っていった。

2017-09-12 21:50:05
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やがて店内にオシャレな音楽と共に軽快な調理音が響き始める、それに背を押されるように男は口を開いた 「眼鏡かけると雰囲気変わるね。」 「そう?」 「うん、なんだか学校の先生みたいで、呼び捨てに抵抗がある。」 それを聞くと、女性は笑いながら眼鏡をクイクイッとさせる。

2017-09-12 21:51:14
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「野分ちゃんみたいに"那珂さん"とか呼んでみる?」 「呼ばれたらどう思う?」 女性…軽巡洋艦娘那珂はうーんと少し考える 「提督が提督じゃなくなりそうだよね」 「なんだそれ」 「さあ?」 「えー…?」 男…提督は口をへの字にして肩をすくめた。

2017-09-12 21:52:10