犬シリーズ①【駄犬】

ぺちか @pechika_udon

【駄犬①】 ウチには一匹の駄犬がいる。 『なぁ、今日は仕事休み？』 「うん」 『やった！ほしたら一緒にごろごろしようや！』 「そやね〜」 なんて話をしとったら、私のスマホが着信を告げた。 「もしもし？わ、久しぶり！どしたん？え、ほんま？すぐ行く！」 #犬シリーズ

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【駄犬②】 電話の相手は高校時代の友達で、こっちに遊びに来てるからって連絡くれた。 私はすぐ会う約束をして電話を切った。 ...視線を感じて振り返ると、駄犬...もとい、まるちゃんがこっちを見てた。 『...どっか行くん？』 「うん。友達がこっち来てんねん」 #犬シリーズ

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【駄犬③】 『え！？今日は僕とごろごろするんちゃうかったの！？』 「ごめんて。でも、まるちゃんとごろごろするんはいつでもできるやん」 友達とは会うんやってもう何年ぶりってくらい久しぶりなんやし。 『そんなんズルい！僕かて休みが合うんずっと待ってたのに！』 #犬シリーズ

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【駄犬④】 きゃんきゃんと文句を言うまるちゃんの鼻をぎゅっと摘む。 「我侭言わんの！」 『そんなぁ...』 ぺたん、と限界まで垂れ下がった耳と尻尾が見える気がする。 「できるだけ早く帰ってくるし、お利口でお留守番しとってな？」 『...はぁい...』 #犬シリーズ

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【駄犬⑤】 久しぶりに会う友達は全然変わってなくて。 私たちは昔話や近況に花を咲かせた。 暫くして、ブーッと電話が鳴った。 見てみれば、まるちゃんからのLINEで。 《何時頃帰ってくる？》 《迎えに行くから連絡して》 ...始まったよ。 #犬シリーズ

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【駄犬⑥】 これがまるちゃんが駄犬たる所以。 彼はとにかく「待て」ができない。 〈はいはい〉 適当に返事を打って、スマホを下向きにした。 友達と話をしながらちらっとスマホの画面を見る。 そこにはずらりとまるちゃんからのLINEが並んでた。 ...おい。 #犬シリーズ

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【駄犬⑦】 同じような内容と催促の嵐。 いつものこととは言え、さすがにイラついて電話をかけた。 『はい！』 「...待て」 『へ？』 「待てができんのやったらまるちゃんとはもう口きかん！」 『えぇぇぇぇ！？』 それだけ言って、ぶちっと電源を切った。 #犬シリーズ

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【駄犬⑧】 それから、友達といっぱい話したり、ぶらっと買い物したりしてあっという間に時間が過ぎた。 「またね〜」と友達と別れて家に帰る道中、電源を切ったままやったことを思い出す。 電源を入れると、画面いっぱいにまたまるちゃんからのLINE表示。 #犬シリーズ

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【駄犬⑨】 《ごめんなさい》 《怒っとる？》 《僕が悪かったです》 ...はぁ、と溜息が吐いて家路を急ぐ。 「ただい...うわぁ！？」 『おかえりー！』 玄関を開けた途端、抱き着いてくる大きな影。 ぎゅうぎゅう抱き着いて、ぐりぐりと頭を擦り付けて。 #犬シリーズ

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【駄犬⑩】 その何とも情けない姿を見ると、言いたかった文句なんて全部吹き飛んで。 「...ただいま。遅なってごめんな？」 ぽんぽん、と頭を撫でてあげれば、また抱き着く力を強くしてきた。 #犬シリーズ

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【駄犬⑪】 ウチのまるちゃんは「待て」もろくにできひん駄犬。 やけど、そんなところも可愛いと思ってしまうあたり、私も大概、親バカ？ #犬シリーズ