査読なき論文、野党の質問なき法案

学術雑誌は論文の信憑性を高めるため、その論文に関わっていない研究者を査読者として据える。国会での野党の質問はちょうど査読に相当する。それが失われるのは、査読なき論文と同じで、信憑性に疑いが生じるのだ。
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shinshinohara @ShinShinohara

科学の研究では、「査読」が重視されている。研究者は論文を学術誌に投稿するのだが、その際、掲載する価値があるかどうかを審査するのが査読なのだ。通常、2名以上の査読者が任命される。その分野の専門家が担当する。2名の査読者が「掲載の価値あり」と認定して初めて論文として掲載される。

2017-11-03 11:27:30
shinshinohara @ShinShinohara

当たり前だが、論文の執筆者に名前を連ねた研究者は査読ができない。自分が書いた論文を自分で審査したら、掲載価値がない、つまり科学的でない論文なのに掲載を認めることになりかねないからだ。だから必ず査読者は、その論文とは関係のない、しかしその分野に詳しい研究者が任命される。

2017-11-03 11:28:50
shinshinohara @ShinShinohara

査読者は、後で「科学的な価値がない」なんて指摘されて、研究者としての能力を疑われないよう、科学的な目で論文を評価しようとする。その結果、論文は科学的な批判に耐えうるものが学術誌に掲載されることになる、というシステムとして機能している。

2017-11-03 11:30:49
shinshinohara @ShinShinohara

もちろん査読しても見抜けない誤りがあったりする。しかしそれらは、論文を読んで再現実験を試みる研究者が現れて、真実の検証を行うから、結果的に問題はない。査読システムは、その論文の再現実験を試みる価値があるかどうかを見極めるのに重要なフィルターの役割を果たしている。

2017-11-03 11:32:32
shinshinohara @ShinShinohara

この査読システムをうまく利用しているのが、オープン環境で開発されているソフト。Firefoxなどの無料の開発ソフトは、愛好家たちがボランティアで開発している。誰もが改良を加えることができる。ただし改良を反映させてよいものかどうかを判断するフィルターが用意されている。査読だ。

2017-11-03 11:34:27
shinshinohara @ShinShinohara

過去に提案した改良が反映されたことのある開発者が、新しい改良の提案を「査読」する。これはよい改良だ、と2名以上の査読者がオーケーを出したら、その改良が認められる。こうすることで、誰も開発を監督するものがいないにもかかわらず、使いやすいソフトが開発されていく。

2017-11-03 11:35:48
shinshinohara @ShinShinohara

査読システムは、悪意ある研究者、開発者をうまく排除し、良心的な研究成果、あるいは改良技術を採用するのに優れた手法だ。だから科学は実質的な監督者がいないにもかかわらず、常に発展し続ける。オープンソースのソフトは、監督者がいないのに次々に改良されていく。

2017-11-03 11:37:11
shinshinohara @ShinShinohara

ところで政府は、議員数に応じて国会の質問時間を調整するということを検討しているという。議員数の多い与党が質問時間の大半を占め、野党は質問時間を大幅に減らすということになる。しかしこれは科学研究の事例から考えると、「査読なき論文」と同じことになってしまう。

2017-11-03 11:38:34
shinshinohara @ShinShinohara

いわば論文執筆者自身が自分の書いた論文を査読し、「これはすばらしい論文です」とお手盛りの評価を下すのを許し、質の低い論文、あるいは捏造したデータも含まれているかもしれない論文を、どんどん学術誌に掲載することを許すのと同じことになる。これでは論文の質は保てない。科学的でもない。

2017-11-03 11:39:50
shinshinohara @ShinShinohara

野党による国会の質問はいわば科学研究で言うところの「査読」にあたる。その法案が果たして社会の役に立つのか、誤った適用がされる恐れはないのか、チェック機能を果たすことを期待するものだ。しかし与党の質問は、容易に想像されるように、お手盛りの「ヨイショの評価」ばかり出てくる恐れがある。

2017-11-03 11:41:32
shinshinohara @ShinShinohara

「差読なき論文」は科学的保証が失われるのと同じように、「野党の質問が少ない法案」は十分な検討が行われないまま、自画自賛で法案が改良もされずに通ってしまう恐れがある。これは大変憂慮すべきことではないだろうか。科学研究を参考に、査読機能がきちんと発揮される国会運営を期待したい。

2017-11-03 11:44:05