- sia_kikyou428
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「う、うるさいなぁ。別にそんな予定……」「だったら、私が百景さんをもらっちゃっても誰も困りません、よね……」ずい、とくろぐだは彼女の目の前、吐息がかかるほど近くまで顔を近付けた。「や、あの……」「頼りになるけど、だらしなくて、無防備で。ちょっとイイかも、とは前から思ってたんです」
2017-11-07 00:39:06くろぐだは微笑ましくクスッと笑った。「駄目仙人さんの気持ち、今なら分かる気がします」「あー、駄目仙さんな!あれァ露骨だよね!分ッかりやすいし!」苦し紛れに、百景は話に乗っかった。「気付いてないの、当のシアさんくらいですもんね」くろぐだはその話を可笑しそうにくすくすと笑う。「……」
2017-11-07 00:43:41「あー……ダメですか」「駄目です♡」即答。取り付く島無し。参ったとばかりに百景は片腕で目元を隠す。まさかこんなことになるなんて。顔が熱い。くろぐだがこんなに積極的な子だったとまでは見抜けなかった。「どうしても、駄目ですか」「嫌です」嫌、と来たか。彼女がここまで我を出すなんて。
2017-11-07 00:50:08ずるい。卑怯だ。彼女に先に言われてしまったら、もう自分が嫌とは言えないじゃないか。「逃げ切れると、思ったんだけどなぁ」「…逃げる、つもりだったんですか……?」「あっ」まずい、口を滑らせた。眼鏡のレンズの向こう、くろぐだの目元に俄に涙が滲んでくる。「え、や、あの」焦るが、もう遅い。
2017-11-07 00:55:42「ひどい人です、百景さん。気付いてて逃げるだなんて、シアさんよりひどいですよ」「……ごめんなさい」「それは、どっちの『ごめん』なんですか」くろぐだはちょっと怒ったように見つめてくる。「……逃げようと、した方」「……私と、女の子同士は嫌じゃ、ない?」顔を逸らしたまま、頷いてみせた。
2017-11-07 01:00:08「ちゃんとこっちを向いてください」顔に両手が添えられた。まだくろぐだの目尻には涙が滲んでいる。今度はしっかり彼女の瞳を見ながら、ゆっくりと頷いて、「嫌じゃない。あたしみたいなヤツ、なんかでいいなら」くろぐだの顔が、ぱぁっと明るくなる。そうして、二人の顔が徐々に近付いて……。
2017-11-07 01:05:54「……フィヒ……」「「うぇえッ!?!?」」いつの間にか部屋の窓ガラスに顔を押し付けるように貼り付いていた美女の存在に気付き、二人は身の危険を感じて抱き合ったままバッと反射的に飛び退いた。恐る恐る百景が窓の蝶番を外すと、美女は部屋の中に身を乗り出してきた。「……社長……!」「うヒ」
2017-11-07 01:09:57「どうしたんですか、はんちょ~さん」「イひひ。明日の業務についての連絡をしようとしたんですがァ、百景さんの携帯が繋がんなくってェ。寂しくてシコるのもナンだからこの時間でいるとしたら此処かなァと目星ッた次第でして」「……ここ、建ってるの海沿いですよ……?」くろぐだが震え声で指摘。
2017-11-07 01:14:25「……DMとかじゃ駄目だったんですか?」「…………あ」闖入者はわざとらしく驚いてみせた。「………もォっ!!せっかく、イイところだったのにィ……!」「……ッ」「わオ」今までに聞いたことがないほどに大きな声を出して怒鳴ったくろぐだの勢いに二人は圧倒された。「これはこれは失礼をば」
2017-11-07 01:19:19「んじゃま、後でDMにでも投げときますわ。お二人の一部始終は是非シコネタにさせていただきたいので、どうぞごゆっくりィ~」両生類めいたモノに変化した左後脚に掴んだモノを、彼女はべチャリと窓際に置いた。丸くて黒ずんだ…ギョロリと目を向いて二人を見つめる怪物体。定点カメラの類だろうか。
2017-11-07 01:23:48そのままベチャ、ベチャと不気味な足音は二人の部屋の上へと昇っていく。『いやァ~まさかお二人がそこまで進んでいたとは。僕もお二人に「アレ」を使った甲斐がありましたよォ~』目玉怪物体から突然声が出てきていやらしい笑みを浮かべる。コワイ!『あひん』百景は光の速さでそれを外へと投げた。
2017-11-07 01:28:05「……何度か会ってるけど、すごいインパクトの社長さんだよね」「インパクトというか何というか……」「………」再び静かになり、見つめ合う二人。「「あのッ」」同時に声を掛け、沈黙。二人は可笑しそうに笑い合い、どちらからともなく抱き合って、ベッドに沈んだ。 この街の日没は、もう近い。
2017-11-07 01:32:21「うんしょ、よいしょ、よっこらせっくす」はんちょ~はくろぐだ達のアパートの屋根上へと登りきった。「およ?」驚くべきことに、屋根には先客がいた。ローブで全身を覆い隠し、杖を持った謎の人物。その周囲には、閉じられた本が1冊衛星めいて宙を舞う。「これはこれは。リンドウさん」
2017-11-07 01:37:04「壮健ですか?進捗はどうです?」ローブのフードを取り払った『彼女』は、表情1つ変えることなくそう言った。「順調ですよォ、俺なりに。貴方みたくパパーッといける訳じゃないんですから、一緒とまではいかないですケド」「百合ゾンズドライバー、でしたっけ。壊滅的なセンスですね」「恐縮です」
2017-11-07 01:40:57「では、私はまた行くべき所がありますので、これで」「あーい」リンドウと呼ばれた緑髪の美女はそのまま、屋根に吹く風に乗るようにして姿を消した。「さぁて僕も頑張っちゃおかな、フォロワー女体化百合計画」そうして彼女は百足の尾をバネのようにして、街の外、海へ向かって背面跳躍していった。
2017-11-07 01:45:54