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村田勇気/彫刻家 @murataart
このクソヤバい彫刻を見てきました。作者はGenova生まれの彫刻家Francesco Queirolo(1704-1762)、原題「Disinganno」 (邦題:暴かれた欺瞞/妄想からの解放)、1753-1754の作です。 pic.twitter.com/7TdLa3YARv
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村田勇気/彫刻家 @murataart
継ぎ接ぎもなく一塊の大理石から彫り抜いた網の描写はまさしく超絶技巧で、指先に絡み合う網紐ばかりか面の張りや弛みによって引き起こされる網目の緩急まで細密に表現してあり、そのこだわりと仕上がりは異常というほかありません…
村田勇気/彫刻家 @murataart
推測するに制作工程としては、従来の人物彫刻同様、トーガを着用している想定のもとポーズに即した(結び目の厚み分の)布地を残しておき、稜線などを基準にアタリをつけて彫り起こしたのではと思います。が、内側に折り返って重なっている2層目以下の低レイヤーの処理などはまるで想像が及びません…
村田勇気/彫刻家 @murataart
Francesco Queiroloの主な業績は、Fontana di Treviのプロジェクト参加で、Nettunoの向かって左像(多分…la statua dell'Autunnoとあるので豊穣神Demetraのはず)を制作したことが挙げられます。
村田勇気/彫刻家 @murataart
反響が多いので「Disinganno」の成立背景や解説を補足します。
村田勇気/彫刻家 @murataart
依頼者はTorremaggioreの有力者であったRaimondo di Sangroという発明家、科学者、錬金術師であり、その父のAntonio公爵に寄贈するための作品として「Disinganno」は制作されました。
村田勇気/彫刻家 @murataart
Antonio公爵は妻の死後Raimondoを祖父に預け欧州を飛び回り、その人生の盛期を多忙にして不規則、つまり放蕩に過ごしていたものの、晩年は悔い改め爵位と財産を放棄し聖職者としてNapoliの修道院で静謐に過ごしたとされます。
村田勇気/彫刻家 @murataart
すなわち、「Disinganno」の網に囚われた男はこのAntonioを表しているとみてよいでしょう。
村田勇気/彫刻家 @murataart
この図像は具体的に聖書の一幕を再現したものではないと思われますが、世俗や煩悩を象徴する地球を足元に、額に炎(Promētheus?)をつけた天使、つまり知性の象徴が網(原罪)に囚われた男を解放しています。
村田勇気/彫刻家 @murataart
地球に立てかけられたラテン語の書物はこれはもちろん聖書を示すものです。Raimondoはフリーメイソンリーでもあり、コンパス、角定規とともに”The Great Lights”に数えられるメイソンの重要な象徴たる聖書の挿入は、彼の経歴と決して無関係ではないでしょう。
村田勇気/彫刻家 @murataart
とはいえ本の中に刻まれている文章は聖書の現実のページを書写したものではありません。ただし、状況の補足として右側ページ、3つの異なる文書から章と節が抜き出されているのがわかります。
村田勇気/彫刻家 @murataart
ナホム書(旧約聖書/十二章予言書-7) 1:13 ソロモンの知恵の書(旧約聖書/外典) 22:2(?) パウロによるコリントの信徒への手紙1(新約聖書/書簡) 11:32
村田勇気/彫刻家 @murataart
ナホム書1:13より “今わたしは彼のくびきを砕いて、あなたからとり除き、あなたのなわめを切りはなす。” コリントの信徒への手紙1 11:32より “しかし、さばかれるとすれば、それは、この世と共に罪に定められないために、主の懲らしめを受けることなのである。”
村田勇気/彫刻家 @murataart
知恵の書に関しては本来19章までしかないのにXXIIとありよくわかりませんが、推測するに多分XVII=17の誤字っぽいです。左ページ文中にある”ET LONGAE NOCTIS”=“長い夜”と語彙が共通し、内容も繋がりがあるので恐らく。
村田勇気/彫刻家 @murataart
知恵の書17:2より “17-2不敬者が、清い人々を支配できるのだと思ったそのとき、彼らはやみのとりことなり、長い夜にしばられ、永遠の摂理から退けられ、自分の屋根の下に閉じこもり、そこに伏した。”
村田勇気/彫刻家 @murataart
さて左ページの内容はこう。 "VINCULA TUA DISRUMPAM VINCULA TENEBRARUM ET LONGAE NOCTIS QUIBUS ES COMPEDITUS UT NON CUM HOC MUNDO DAMNERIS"
村田勇気/彫刻家 @murataart
左側の文言は意訳すると「あなたは長い夜の束縛から解き放たれるだろう、そして世界とともに非難されはしないだろう。」みたいな感じ。ラテン語はよくわかりませんが。
ローマの松毬 @pignaromana
@murataart @youkaimedama これ、数年前に行ったときは撮影禁止でした。印象的な作品ですよね。 確かここの教会の地下に、異様な標本があった記憶が。
村田勇気/彫刻家 @murataart
@pignaromana 現在も相変わらず撮影禁止なので、公式から拝借しています。仰るとおり地下にあります標本は、循環器系モデルという物体を超えて明確に「作品化」された、1-2世紀先取りしたセンスがあると感じます。
ローマの松毬 @pignaromana
@murataart あ、解禁されたわけじゃなかったのですね。この彫刻、全体が一塊の大理石を彫り込んだものだとは、目にしていながら信じられない思いでした。ただ後から考えると、これはこの礼拝堂の中では、最も罪のない無邪気なものなのかも、という気もします。他の作品は、何かあまりにも恐ろしい
村田勇気/彫刻家 @murataart
@pignaromana 信仰がベースとはいえそれは副菜に過ぎず、まるっきり技巧そのものが主たる動機であるように見受けられます。そこがイノセンスなのでしょう。
ローマの松毬 @pignaromana
@murataart ただ同様にヴィルトゥオーゾでも、ヴェールに覆われたキリストは、何かぞくっとするものがあります。
村田勇気/彫刻家 @murataart
@pignaromana 類似の描写は後世に乱立しますが、明らかに格の違う"圧"がありますね。

コメント

丹羽 旅部 31月曜日西こ22a @298gama 2017-11-24 17:25:16
大理石を実際に彫ることに意味があるのだけど、こういうのを3Dデータや3Dプリンタなどででも超絶職人でなくても作れる時代が来たので模型を家に飾りたいね
空 or せい @ku_999 2017-11-25 21:21:46
「ヴェールに包まれたキリスト像」を思い出すなと思ったら、同じ所にあって、注文者も同じくライモンド・ディ・サングロだった・・・ついでに昔本で見た「血管ミイラ」も彼が作らせたもので、そこにあったのにびっくり  https://twitter.com/dilettante_k/status/636750718989262848
nekosencho @Neko_Sencho 2017-11-25 21:27:16
作品もたしかに見事なのだけど、作ってるとこ見たいよね
FFR31 @FFR31 2017-11-26 06:19:25
とてつもない技量ですね… いつかテレビで見た「狛犬が口の中に玉をくわえている。玉は動かせるが、牙が引っかかって口から外れない」というのも石屋さんが一塊の石から削り出したと言ってましたが、それ以上の驚きです。
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