こくばん

よつげ @Eight_os

こくばん #エイトで妄想 pic.twitter.com/q54L67Ujj1

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１ 小学校の、ニ年生のとき、 わたしは、こくばんのかかりでした。 ほんとうは、１時間がおわる時ににけすだけだけど、わたしは、こくばんをけすのが楽しくて、だから、朝早くきて、こくばんをきれいにしていました。 ある日のことです。 #エイトで妄想

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２ わたしが、いつものように学校に行くと、こくばんのすみっこに、字がありました。 『いつも、こくばんきれいにしてくれて、ありがとう』 わたしは、こくばんがお礼をくれたのかなと、思いました。 だけど、お母さんに聞いたら、「そんなわけない」と言われました。 #エイトで妄想

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３ わたしは、お礼をもらった日、帰るときに、こくばんをきれいにしてから、 『どういたしまして』 と、こくばんのすみっこに書きました。 それで、先生に見つかったらおこられるなと思って、はってあったプリントを動かして、かくしてました。 #エイトで妄想

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４ つぎの日、朝、学校に行って、プリントをめくったら そこには、どういたしましてはなくて、 『がんばっててえらいです』 と、書いてありました。 それを見て、わたしは、先生かなと思いました。 だから帰りに。 同じところに 『ありがとう』 とかいてから #エイトで妄想

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５ わたしは、こっそり、となりの教室にかくれて、だれがくるのか見ていました。 すると、それは、先生じゃありませんでした。 きたのは、 同じ１組のきみたかくんでした。 きみたかくんが、教室にはいったので、わたしは、ろう下に出て、見ていました。 #エイトで妄想

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６ きみたかくんは、きょろきょろまわりを見てから、プリントをめくって、うれしそうにわらいました。 それで、うーんと考えて、チョークを持って、何か書いていました。 「…へへ」 きみたかくんは、楽しそうにわらって、教室を出てきたので、わたしはまたかくれました。 #エイトで妄想

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７ わたしは、今まで、きみたかくんとは、話したことがありませんでした。 でも、今日、こくばんさんがきみたかくんだとわかって、うれしかったです。 わたしは、これからもこくばんさんとのひみつのお話を、つづけようと思いました。 それで、ずっとつづけていました。 #エイトで妄想

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８ こくばんの、きみたかくんとは、たくさんお話しました。 べんきょうのわからないところ。 うんどう会のリレーがんばってねってこと。 あと、わたしがこくばんがんばっててえらいって言ってくれました。 だけど、わたしがこくばんのきみたかくんとお話をはじめた時から、 #エイトで妄想

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９ わたしのお父さんと、お母さんは、けんかが多くなりました。 ある日、お母さんが、ベッキョという言葉をつかいました。 わたしは、それがよくわからなくて、こくばんのきみたかくんに聞いてみました。 『べっきょって何？』 はじめて、おへんじがありませんでした。 #エイトで妄想

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１０ その時は、わたしが、『ごめん、こくばんさんもわからないね』と書いて、 つぎの日、きみたかくんは『うんわからなかった』と書いてたので、よかったけど、 何か月かたった後、 お母さんが、わたしに、 「はる、おひっこしするよ」 と言いました。 #エイトで妄想

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１１ 友だちともおわかれで、すごく悲しかったけど、 きみたかくんと、お話できないのが、悲しかったです。 それで、1か月したらと、言われたので、 １週間くらい前になって、わたしは、きみたかくんに、こくばんに、書きました。 #エイトで妄想

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１２ 『あのね、 お父さんとお母さん、やっぱりべっきょするんだって だから、つぎの土曜日、おひっこしします いままでありがとうございます おひっこしまでよろしくおねがいします』 きみたかくんは、なんて言うかな、と、思いました。 #エイトで妄想

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１３ つぎの日、こくばんには 『わかった』 だけ、書いてありました。 それを見て、きみたかくんは、さみしくないのかな、と、思いました。 それで、あっという間に金曜日になりました。 わたしは、さいごなので、 『いままでありがとう』 と、書いて #エイトで妄想

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１４ ちょっと考えて、それをけして 『またいつか、きみたかくん』 と、書きました。 そのあと、ひみつだったから名前を書いたらいけないなと思って、 『きみたかくん』 は、けしました。 だから 『またいつか』 だけが、こくばんにのこりました。 #エイトで妄想

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１５ さいごだから、おへんじは、今日見ないといけないから、 わたしは、前と同じように、となりの教室にかくれていました。 きみたかくんは、その日、なかなかきませんでした。 やっときた時、きみたかくんは、ないたみたいに目がまっかでした。 #エイトで妄想

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１６ それから、いつものようにプリントをめくったら、きみたかくんの目から、また、なみだが出てきました。 はなをすすりながら、きみたかくんは、『またいつか』をけして、何か書きました。 きみたかくんが帰って、わたしは、こくばんを見て、ないてしまいました。 #エイトで妄想 pic.twitter.com/9A7gu3JpWB

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１７ 素直な気持ち 素直な笑顔 私、どこに置いてきたんだろう。 小三頃からだろうか。 私は、笑うことも、喋ることさえも少なくなって だんだんと、一人になっていった。 それなりにまともに中学校までを過ごし それなりにまともな高校に入って。 今日は入学式。 #エイトで妄想

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１８ 一緒に行く人なんかいるはずもなく。 「早くー！」 「ちょ、そんな焦らないでも大丈夫だってば笑」 そんな風に私の横を走り抜けていく新女子高生達を尻目に。 俯いて学校へと続く路地を歩く。 時々誰かにぶつかられ、邪魔者を見るような視線を浴びながら。 #エイトで妄想

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１９ 学校に着くと、玄関前で人が群がっていた。 当然だ。 扉のところに、クラス分けの紙が貼ってあるんだから。 私は 「１年…６組」 …よりにもよって階段から一番遠い教室。 移動教室とか大変だよなぁ、ツイてない。 そう思いながら、教室に向かいました。 #エイトで妄想

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２０ 教室に入ると、前の黒板に人が群がっていた。 綺麗にデザインされた黒板アート そしてその片隅にアートの世界感を壊すように貼られた席順の紙。 見たところあいうえお順だ。 「…あった、前島葉瑠」 私はすぐにその席へと向かう。 その席には既に先客がいた。 #エイトで妄想

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２１ 席を間違えているのに気づいていないのか、見事に突っ伏して居眠りしている男の子。 「あのー…ここ、私の席なんですけど」 肩を叩いたり揺さぶったりすると 「んー…？」 その人はゆっくりと目を開けて私をじっと見た。 何となく、その顔に見覚えがある気が… #エイトで妄想

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２２ と、思うより先に 「あ？…あ」 と、その人が先に気づいた。 「もしかして…葉瑠ちゃん？」 「…侯隆くん？」 侯隆くんとは、小二時代一緒のクラスで、話したことは一度も無い。 でも、秘密の思い出が一つ。 『はるちゃん、いつもがんばっててすごいな』 #エイトで妄想 pic.twitter.com/fUr2bEFisp

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２３ 侯隆くんも、私のこと、覚えてくれてたんだ…。 いや、余りに一人でい過ぎたからかも知れない。 特殊すぎて、何となく印象に残ってしまったのかも。 侯隆くん、あの頃みんなから慕われてたし。 などと考えていると、侯隆くんが何かを言おうと口を開きかけた。 #エイトで妄想

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２４ が、それを言葉にしようとしたその時！ 「よーこちょ♪」 「おわっ、何やねんヤス！」 侯隆くんの後ろから抱きついてきた、と言うより飛びついてきた男子。 私は彼も見たことがある。 確か、２年の時この子も同じクラスだった。（話したことないけど） #エイトで妄想