陥没アヒルチャンのフォロワー百合小説 EP8

ゆーりんちー
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Φ @ahiruchan_phi

テーブルの上のタブレット端末が、見知らぬ番号からの着信を知らせている。「出なくて良いのですか?」「知らない番号なので」「そうですか」向かい合って席に着くのはセンとにょーふや。ここはにょーふやのアジト。元第1百合研究所の一室だ。「……さて、取引の確認をしましょうか」「はい」

2017-12-17 18:24:33
Φ @ahiruchan_phi

「私が求めるものは、『ウールの個人情報』と『調査班の百合解析情報』の横流し」「私の求めるものは、『のじるい製薬が貴女に何をしたか』と『百合ゾンズドライバーのデータ』」二人は互いの条件を提示する。これは駆除班とにょーふやの取引ではない。センとにょーふやの、個人的な取引である。

2017-12-17 18:27:39
Φ @ahiruchan_phi

「αドライバーは現在手元にありませんが、個人的に解析したデータがここにあります」にょーふやがUSBメモリを取り出す。「貴女の望むものは、この中に」センはタブレット端末の画面を爪で叩く。「では、私の身の上話を始めましょうか」にょーふやはコーヒーを一口啜り、話し始める。

2017-12-17 18:31:09
Φ @ahiruchan_phi

「まず、百合とは何かから話す必要があるでしょう。貴女たちの狩っている百合……あれは、のじるい正式には『第2世代百合ゾン』の失敗作と呼称されるものです」「第2……?」センが唾を飲む。「言ったでしょう、第1の百合がここで造られた、と」にょーふやが部屋の隅に寄せられた謎の機械類を指す。

2017-12-17 18:34:47
Φ @ahiruchan_phi

「のじるい製薬は人工生命の研究をしていました。生み出されたのは動物や植物、果てには非生物の特性を持つクリーチャー。しかしそれらの細胞は安定せず、寿命は数分がせいぜいでした。そこで、のじるいは、考えました」にょーふやの声に怒りが混じり震えだす。「人間と怪物の、交配実験です」

2017-12-17 18:39:16
Φ @ahiruchan_phi

にょーふやは努めて平静を保つ。「実験は半分は成功したと言っていいでしょう。大量の薬物の投与によって体質を改造された哀れな人間の細胞と、怪物の細胞。その融合細胞はタマゴのようなものを形成し、やがて安定した存在であるヒト型の陥没アヒルヘッド……第1世代百合ゾンを生み出しました」

2017-12-17 18:42:52
どくどくウール @poisonwool_2

とっても可愛かったんですよ第一号ツブレアヒルバットチャン #のじるい島民放送局

2017-12-17 18:44:43
Φ @ahiruchan_phi

「ですがそれはある面では失敗だった。彼らが理想としたのは、完全なヒト型で百合の力を行使できる個体。数百を超える百合が生み出された末、彼らは結論づけました。『この人間では理想個体は産めない』と。そして……」コーヒーを啜る。「その人間は放逐され、第1の百合は全てここで処分されました」

2017-12-17 18:46:58
Φ @ahiruchan_phi

センは言葉を失っていた。にょーふやが促し、センはぬるくなったコーヒーを飲む。少し落ち着く。「つまり、その」「もうお分かりでしょう。……その百合研究の第一人者が、ドクター・ウール。そして、第1の百合の母体……いえ、怪物に細胞を提供する『苗床』にされたのが、この私です」

2017-12-17 18:50:06
どくどくウール @poisonwool_2

オツカレサマドスエ!(つやつやした顔) #のじるい島民放送局

2017-12-17 18:51:54
Φ @ahiruchan_phi

はんちょ〜とセンの乗った救急車がのじるい製薬社ビルに到着したとき、二人を入り口前で出迎える人物があった。「駆除お疲れ様でした。二人でもなんとかなるものですね?」ドクター・ウール。「人数減らすとか抜かすんじゃないぞ」「むしろ増やしたいところですよ」三人は社内にエントリーする。

2017-12-27 18:20:42
Φ @ahiruchan_phi

「シアの喉、なんとかできるか」「無論。誰が取り付けたと思ってるんです?」ドクの返答にはんちょ〜が舌打ちする。ドクは意に介さず続ける。「丁度駆除班の皆さんのメディカルチェックもしておきたかったところです。戦いも激化してきましたからね」ドクははんちょ〜たちの生々しい傷跡に目を向けた。

2017-12-27 18:24:00
Φ @ahiruchan_phi

はんちょ〜はドクを睨む。「お前には聞きたいことが山ほどあるが、まずはシアのことが先だ」そしてドクの胸ぐらを掴んで引き寄せ、顔を近づけた。「いいか、シアに余計なことでもしてみろ。その時は」「誰が怒るんです?金だけで繋がったビジネスの関係でしょう、貴女方は」ドクは飄々と返した。

2017-12-27 18:28:08
Φ @ahiruchan_phi

再び舌打ちし、はんちょ〜はドクを解放する。彼女らのもとに一人の研究員が歩み寄り、処置室の準備ができたと告げた。「ではシアさんは彼女についていってくださいね」「ピー」シアは不安げな表情を見せる。「気持ち悪いだろうが今は耐えろ、シア」はんちょ〜の言葉に小さく頷き、シアは場を離れた。

2017-12-27 18:31:32
Φ @ahiruchan_phi

はんちょ〜がドクに向き直る。「話を聞かせろ」「その前に、もう一つ。私にも私の要件がありますので」ドクは入口自動ドアの方向に目を向けている。そのドアが開き、はんちょ〜の見知った二人が現れた。「クロ、……サバ」「駆除班の全員に招集をかけたのですが……一人足りませんね、残念です」

2017-12-27 18:35:48
Φ @ahiruchan_phi

「サバちゃん、見つけて来た」はんちょ〜に駆け寄り、クロが言う。はんちょ〜はサバの手にあるベルトを一瞥する。「それは」「百合ゾンズドライバー、オメガタイプ。貴女のお姉さんが持っていたものの完成版です」ドクの言葉にはんちょ〜が一瞬固まった。「お前が、アレを姉さんに渡したのか」

2017-12-27 18:40:39
Φ @ahiruchan_phi

ドクは口元を歪め笑う。「まさか。私は彼女に狙われているんですよ?盗まれたんです」そしてドクは白衣のポケットから携帯端末を取り出した。「少々失礼。サバちゃんのメディカルチェックの申請をしますからね」ドクが三人の側から離れる。ここで初めて、はんちょ〜は無言のサバの顔に目を向けた。

2017-12-27 18:44:47