陥没アヒルチャンのフォロワー百合小説 EP8

ゆーりんちー
3
Φ @ahiruchan_phi

「戻って来たんだな」はんちょ〜のその言葉に肯定的な感情は含まれていなかった。「何のためだ」「ボクは、百合を狩ります。ボクが人であると証明するために」サバが口を開く。そこには確かな決意が感じられた。だが。「お前が人だろうが百合だろうがどっちでもいい。だが、ここにお前の居場所はない」

2017-12-27 18:48:54
Φ @ahiruchan_phi

サバに突きつけられた言葉は無慈悲だった。クロが慌てて口を挟む。「待って。サバちゃんはあのベルトのおかげでもう安全だし、それに」「クロ」クロが黙る。「お前は良くても、センとシアが耐えられない。いいか、駆除班は連携で百合を狩る。それが乱される要素は、駆除班には置いておけない」

2017-12-27 18:52:59
Φ @ahiruchan_phi

サバはその言葉を黙って聞いていた。「そういうことだ。百合を狩るのは勝手だが、どこか他所で一人でやってくれ。姉さんのようにな」「……わかりました。お世話になりました」サバは軽く頭を下げる。「サバちゃん……」クロがなにか言いかけたとき、ドクが通話を終え戻ってきた。「お待たせしました」

2017-12-27 18:56:19
Φ @ahiruchan_phi

「サバちゃん、今度こそ二人でお話ができますね」サバはベルトを装着しドクに向き直る。「警戒はさせてもらいますから」「どうぞ」サバを案内するべく、新たな社員が現れる。サバは案内に従った。それを見届け、今度はドクがはんちょ〜に顔を寄せる。「貴女に駆除班を編成する権限はないはずですよ」

2017-12-27 18:59:19
Φ @ahiruchan_phi

「だから何だ」「これからもサバちゃんには報酬の分け前が振り込まれ続けるということです。貴女方の取り分が」はんちょ〜は黙り込む。ドクは最後、顔の引き際に加えて言った。「矛盾が見え始めましたね?知っていたことですが」そしてドクは二人を残し、サバの向かった方向へと立ち去っていった。

2017-12-27 19:02:32
Φ @ahiruchan_phi

ディスプレイに『全データコピー完了』の文字が表示される。部屋の隅に置かれたPCに繋がれているのは駆除班のタブレット端末。「なるほど、ドクター・ウールは島の南部に極秘の研究所を持っていると」「社内の極少数の人間のみが知る、個人的な研究所のようです。普段はそこに入り浸っているとか」

2017-12-27 19:06:33
Φ @ahiruchan_phi

センはテーブル上に置かれたUSBメモリを見やる。「これで取引成立ですね」満足げなセンの様子を見て、にょーふやは訝しげに問う。「何故ドライバーが必要なのですか?」「決まっているじゃないですか」センは冷めたコーヒーを飲み干す。指の痛みも引いてきている。「大切な人をこの手で守るためです」

2017-12-27 19:10:01
Φ @ahiruchan_phi

「そう、ですか」にょーふやはセンの純粋なその瞳に、一瞬言葉を詰まらせた。この瞳に、妹は絆されたのだ。だが、自分は迷ってはならない。一度殺した己を蘇らせてはならない。「ここは第一世代百合の処刑場でもあったと言いましたね」にょーふやは努めて淡々と話しながら、部屋の出口へ歩みを進める。

2017-12-27 19:12:54
Φ @ahiruchan_phi

「百合は一部屋に集められ、特殊な薬剤によって処分されました」「何を言ってるんです」にょーふやは無言で壁のスイッチを押す。センの側のテーブルを囲むように、床から天井にまで達する透明の壁がせり上がってきた。「これは」狼狽するセンに、にょーふやは冷たく言い放つ。「ここが、その部屋です」

2017-12-27 19:15:48
Φ @ahiruchan_phi

「謀りましたね……!」センは壁を蹴破ろうとするが、突然脚の力が抜け転倒する。立ち上がろうとするが、もはや指一本とて動かせない。「先程のコーヒーには、大豆イソフラボンの吸収を阻害する薬を混ぜておきました。これでもう動けないでしょう」くぐもったにょーふやの声が樹脂壁越しに聞こえる。

2017-12-27 19:19:07
Φ @ahiruchan_phi

「そんな、汚い……」「私が百合を全て殺すというのは虚勢ではない。貴女は自分を利口だと思っていたかもしれませんが、警戒しなかったのは愚かです。……自身も百合でありながら」にょーふやはセンの正体に初めから気づいていた。その上で、取引に応じた。「くそ……っ」センは己を責めた。

2017-12-27 19:22:02
Φ @ahiruchan_phi

「そしてもう一つ。αドライバーは第一世代の百合のために開発されたものです。貴女では扱えない。私は体質改造の影響で使用が可能になりましたが」センの行動のすべてが無益だった。それを知ったセンは絶望し意識を手放した。「さようなら、第二世代百合理想個体のセンさん」にょーふやは退室する。

2017-12-27 19:25:00
Φ @ahiruchan_phi

部屋の外でにょーふやは壁に寄りかかり、数秒間目を閉じていた。「これで、もう戻れない」小さく呟く。この行動は妹、はんちょ〜との決別の証になるだろう。かつての仲睦まじい姉妹は、もう戻らない。「私にはもう、復讐以外の道はない」目を開き、歩き出す。にょーふやの奥で7つ目の怪物が唸った。

2017-12-27 19:28:07
Φ @ahiruchan_phi

【YURIZONZ NEXT HUNT】 「これでは、理想個体は生まれない」……「サバちゃんは、何なの」……「ドクター・ウール……!」……「戦いましょう」……「これが、シグマドライバーです」

2017-12-27 19:31:57
Φ @ahiruchan_phi

【YURIZONZ EPISODE:8 おしまい】

2017-12-27 19:32:32

番外編

Φ @ahiruchan_phi

或る、のじるい島での1日 privatter.net/p/2980483 @masatada_phiさんから #のじるい島民放送局 できたよ!のじるい島番外編夢小説!重くなってきた本編の補完はこういう形でやっていけるといいね!

2017-12-11 20:08:44