幣束さんによる奥能登「アエノコト」レポート

パッと見て目についたツイートだけ足させていただきます。 どなたか追加・補足などしていただけると助かります。
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幣束 @goshuinchou

「アエノコト」 石川県能登半島の先端の方、奥能登と呼ばれる雪深い地域に分布する貴重な民間の農耕神事。農業に従事する家々で12月5日と2月9日の年2回行われる。その内容は目に見えぬ穀霊である田んぼの神様を家に迎え、ご馳走でもてなしその年の収穫を感謝し(12月)、来る年の豊穣を祈るもの(2月)。 pic.twitter.com/heT7LkLtHS

2017-12-13 20:47:23
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幣束 @goshuinchou

本年12月5日は日本海側に低気圧が発生、天気は強い雪と雨。行く前に読んだ本によれば「アエノコト荒れ」といい、祭になると天気が荒れる事が多いという。ははぁ、これですか。 今回拝観させて頂いたのは穴水町でただ一軒アエノコトを守り続ける森川さんのお宅。auの電波は届かない山間部の美しい集落。 pic.twitter.com/fmBc0DuLl5

2017-12-13 20:57:40
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幣束 @goshuinchou

アエノコトが行われる座敷。左の床の間には天照大神の掛け軸。右側に「田乃神様」の掛け軸。その下に田の神が宿る寄代となる米俵。右の仏間には仏壇。これが私的には意外だった。当家は東本願寺の門徒さん。浄土真宗は阿弥陀の絶対他力のみを信ずるとされ、田の神の神事とは両立しないと思っていた。 pic.twitter.com/NYblqRid24

2017-12-13 21:11:58
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幣束 @goshuinchou

能登の他のアエノコトをする家々も皆どこかの宗派の檀家なのだが仏教は緩やかにこの神事を排除せずに認めてきたようだ。 さて、田の神様をもてなすご馳走。山海の珍味、刺身に漬物、山菜の天ぷら、汁物、とれた野菜、大きな餡ころ餅、鯛を丸々一尾。フルーツも並んでいて、このお宅で取れた物も多い。 pic.twitter.com/MeyuiMVzXT

2017-12-13 21:23:01
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幣束 @goshuinchou

そして、アエノコトといえば二股大根!(二股以上あるぞ!?)田の神様を象徴する物の一つであり、これも神の寄代となるものである。家によっては米俵の上に置くが森川家ではそのまま横に置く。田の神は夫婦のペアであると言われ、右側の大根が男。男根を持つ。左側が女。よく見れば女陰もある!? pic.twitter.com/6bGu5foQ6d

2017-12-13 21:33:52
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幣束 @goshuinchou

ただし、森川さん曰く「うちの田の神様は男の神様一人。」との事。独神。親近感が湧く()。能登のアエノコトは概ねの流れは同じながら、家々によってやり方も所伝も違い、それぞれの家の独自の考え方で行われるようだ。でも男一人なのに大根はペアなので用意すんのね。 あとよく見たら人参まで二股だ。 pic.twitter.com/B4Xswv2YXO

2017-12-13 21:40:14
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幣束 @goshuinchou

午後3時、いよいよ伝統のアエノコトが始まる。家長の森川さんが紋付き袴に傘を被り簑を付け、家の田んぼに行き、神事用の桑で田を掘り起こす。これは土の中の田の神を呼び、来てもらう作法であり、その後柏手を打ち、家に来ておもてなしを受けてもらう為の口上を述べる。 pic.twitter.com/C7JbBGt9m5

2017-12-13 21:48:17
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幣束 @goshuinchou

目に見えぬ、呼び起こした田の神をあたかもその場にいるが如くもてなす。両手を出して田の神の手を取り、家へと案内する。なぜ手を取るかといえば、田の神様は両目が見えない。稲の穂で目を突いたからだと言われる。玄関では「段差があるので気を付けてお上がりください」と細やかな気配りをする。 pic.twitter.com/JH7SFl2rN9

2017-12-13 21:54:57
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幣束 @goshuinchou

家に上がった田の神様は食事の前にまず囲炉裏で暖まってもらう。そして暖まったら今度はお風呂に入ってもらう。家長はお風呂場へ神様を案内し入浴タイムだが、この時、入浴の作法及び入浴中の神は決して見てはならないとの事。田の神様の入浴中は家長の森川さんも囲炉裏で待機する。 pic.twitter.com/oB6HKgFr94

2017-12-13 22:00:36
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幣束 @goshuinchou

お風呂から出た田の神を饗応の席へと導く。アエノコトのメイン即ち「饗(アエ)」の時間である。 「田の神様、一年間ありがとうございました。」 「こちらは家で取れた美味しいコシヒカリでございます」 「今年はキノコだけは不作でございました。」 「さあお酒を一献」 家長が田の神様を丁重にもてなす pic.twitter.com/40IQTqOfwn

2017-12-13 22:15:36
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幣束 @goshuinchou

動画。家長の森川さんが座に着いた田の神様にもてなしの挨拶を行うところ。ここから膳に並ぶ食事の品々の説明、我が家で取れた野菜などの説明を行う。口上はその年々、作物の成り具合や取れた物によって違うようだ。 pic.twitter.com/WokMWeU3xk

2017-12-13 22:28:00
幣束 @goshuinchou

膳の説明部分の動画。台所では奥様方が料理しておられ、この後また一品追加されそれも説明されていた。面白かったのは、バナナやキウイ、みかん、イチゴ等も並びそれらも一つ一つ説明していた。 「ブロッコリーでございます」等々。 田の神様も、最近は珍しい食べ物があると驚いているかもしれない pic.twitter.com/kLfaDAysSU

2017-12-13 22:35:09
幣束 @goshuinchou

田の神様のお食事中は家長は横で待機。 昭和52年の分布調査によれば能登全域で原型のままアエノコトを実施しているのは285軒、一部省略して継続しているのは3126軒あり全農家の半数が継承していたが、それから急速に減少してしまい、現在完全な形でこの神事を行うのは数える程になってしまっている。 pic.twitter.com/rwtqbbIySD

2017-12-13 22:45:37
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幣束 @goshuinchou

さまざまな要因による農家の廃業、時代の変化が背景にあるのだろう。 さて、神の食事が終わると最後の挨拶。「お口に合いましたでしょうか。」 その後、田の神様は饗応の席から後ろの米俵に移って頂き、来年の2月9日まで森川家の中で過ごしてもらうことになる。家族で米俵を持って移動。 pic.twitter.com/2P6a4cfX2f

2017-12-13 22:54:39
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幣束 @goshuinchou

田の神の寄代となる米俵は囲炉裏のある居間の隅の高い場所。ここに米俵をお祀りし、森川家は神と共に冬を過ごす事となる。家人は必ず一礼してからこの下を通る 最後にこの場所に移った田の神に家長が「一年間ありがとうございました、どうぞ来年までごゆるりと」 これをもってアエノコトは終了となる pic.twitter.com/JV7M6m4S5e

2017-12-13 23:05:37
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幣束 @goshuinchou

アエノコトの終了後は、何とまあ有り難いことに直会。拝観者もお食事を頂く。田の神に供えられた物もあり、神人共食をさせて頂いた。地元の社会科見学の小学生さん、役場の方、県内の数名の拝観者の他は県外からは私一人であった。誠に有難い。田の神様と同じ物を食べて恐悦至極でありました。 pic.twitter.com/T55WQ8X7QH

2017-12-13 23:16:08
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幣束 @goshuinchou

アエノコトは観光の目玉として実演的に行われる場所もあるが、私は本当に家々で行われるものが見たかったので役場に問い合わせた所、穴水町役場の方は「車で来られるなら神事をする家まで先導します」と仰って下さり案内して頂いた。その上食事までご馳走になりお土産まで…「能登はやさしや土までも」 pic.twitter.com/iRmV2tMZ2g

2017-12-13 23:24:30
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幣束 @goshuinchou

アエノコトを行う家々は今では奥能登で数える程しかない。しかしその家々はそれぞれの神を宿している。我が田の神は豊穣と繁栄を約束する家の守り神でもあるのだろう。そして時には没落をも司る。各家はそれぞれのやり方、口伝を持ち、継承している。それがこれからも続くと良いな、と切に思う。 pic.twitter.com/h5r8RPJsqs

2017-12-13 23:36:20
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幣束 @goshuinchou

来年2月9日、家人と共に冬を越した田の神様は同じように饗応を受け、豊穣の願いを乗せて再び田んぼへと戻っていく。田の神様は目に見えない。しかし人と神の濃密な関係性は、この目でしかと見ることができました。 奥能登に残る貴重な民間神事アエノコト。宝物のような「マツリ」でありました。終。 pic.twitter.com/1Sj1ACXwDx

2017-12-13 23:53:23
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