稲川淳二のつぶやき怪談　2017年11月30日投稿分

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「ここって、やっぱり普通じゃない---」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と、思ってたらば、沖縄のクルーの人が、闇の向こうから近づいて来て、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「稲川さん、実は、うちの会社の同僚なんだけど、 ここへ来たことがあると言うんですよ」 って。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「彼は、ここで怖い思いをしてるって言うんです。 あわてて廃屋から逃げ出すと、海岸へ飛び出した。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その時は、潮が満ちてて、砂浜は海水の下。 水ん中を夢中で走っていたら、突然、足がすくわれて、 ドーンッ！ と水ん中に倒れ込んだ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ウワーッ！ と急いで立ち上がろうとすると、足に何か引っかかってる。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

よく見たら、稲川さん、ほら、そこにマングローブがあるでしょ？」 指、差す。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「ああ、あれ、ねえ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「あれ、マングローブじゃなかったって、言うんですよね---。 月明かりの下で、 それがたくさんの、人の手や足や死体だった、って言うんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

稲川さん---」 って。 あのお兄ちゃんと、同じことを言うんで、さすがゾーッとしましたよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「あぁぁ---、そう」 私、もう、なにも言えなくなっちゃって----。 と、思って。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ところが、これが、何とね、方向が海の方、向いてる。 周囲は柵で囲って、柵に扉がついてる。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その扉も、海の方に向かって、開くんですよ---。 扉の向こうに、道と石段があって、そっから先がない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、気づいた。 その社、ですよね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

祠みたいなもの。 その社と、さっき庭の端、井戸のとこで見た石段と、 これ、つながってんだなあ、と思ったんです----。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「そうか---」 と、だいたいわかったんですよ、なるほど、と。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

廃屋の建っている、その場所っていうのは、 もともとはね、お社があったんですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

海で豊漁、安全、また海で亡くなった人の魂を慰めるための、 神様が祀られていたんでしょう。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

日本の大きな木は、神社の入り口などでよく見る、ご神木です。 まさに、聖地なんですよ。 祀られてる場所。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

海で亡くなった人が、ここへ流されてくるわけだ。 戦争で死んだ人達も、ここへ流されてきた。 そういう、場所なんですよね----。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、広い意味で言えば、 ここは土地の人々の魂を慰める、大切な場所だった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ところが、沖縄の文化だとか、風習など、わからないアメリカ人だから、 その社を、動かしちゃったわけだ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、その場所に、他人にのぞかれることもないし、 プライベートビーチのある別荘を、つくっちゃったんですよね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そりゃ、アメリカ軍ならできますよ。 それじゃ、祟るわけだ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それを、みんなに説明すると、 「そうか、そういうことだったんですね」 って、みんな納得してくれました。