- Uroak_Miku
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1)日本の敬語システム、難しすぎる!そう嘆く日本語学習者をなだめるにはどうしたらいいのか。こんな風に説得する。日本語の動詞は主語にあわせて活用しない。そもそも主語がない。(「主語」は12世紀ヨーロッパで生まれたローカルな言語概念) すると動詞の主体が誰なのかを[続く]
2018-01-04 23:07:112)文脈から推定するしかない。これは実際には行き違いが生じやすいので、敬語から判断できるように進化した。「お食べになる」なら格上の人物の行為だし、「申し上げる」なら話者が誰かより格下だとわかるから、後は文脈からの推測ができる。敬語にはこういう機能がある。[続く]
2018-01-04 23:09:443)明治になって英文法をお手本にして国文法が編み出された。「主語」が強引に日本のことばにかぶせられた。それから大正期に敬語研究が進んだ。いや敬語の「発明」がなされた。[続く]
2018-01-04 23:11:534)「敬語」と「主語」は昭和に入って手を取り合ってワルツを踊った。どんどんち密に、そして複雑化した。天皇制と寄り添うようにしてヒエラルキー構造化された。[続く]
2018-01-04 23:13:405)敗戦で天皇制は崩壊。敬語の強力なパトロンが消滅した。今度は民主化という新たなイデオロギーにそうよう、再構成を迫られた。敬語はかえってねじれを増していった。
2018-01-04 23:15:166)「殿下には特別な相手はおられません」は正しいのかな?「おられる」の元である「おる」は謙譲語とされるから、「おられる」と尊敬語にはできないという理屈が発動して、この文は誤用と判断される。
2018-01-04 23:17:228)上下関係をことばの世界に反映させる技は、『源氏物語』を引用するまでもなく遥か昔からあったわけですが、このシステムが言語化されマニュアル化が進んだのは大正期以後でした。
2018-01-04 23:20:529)一千年以上も昔から機能してはいるけれどマニュアル化は近代に生まれたわけで、しかも敗戦でこのマニュアルは一度崩壊。戦後日本は改めて規範を探らざるをえなかった。
2018-01-04 23:22:2111)ああ、こうして書きながら考えるに「正しい敬語」というそもそも存在しえないものを私たちは今も探し回っているわけですね。斎藤美奈子の『文章読本さん江』を凌駕するおもしろい論に進化するかなこれ。
2018-01-04 23:27:3912)音楽でもあるでしょ。ラモーの音響理論によって今のコード理論が生まれ、やがて音楽の禁則ごとが規範化されていった。いわゆる「藝大和声」。あれはバッハから前期ブラームスくらいまでの西洋音楽を分析して禁則ごとを抽出したものでしかない。事実ビートルズは禁則しったことかな歌を歌った。
2018-01-04 23:30:2914)しょせんは近代の生み出した規範にすぎないものに、古来から根拠を探し求めるのが論理矛盾。しかしことばとナショナリズムは、後天的なものでありながら血肉化の度合いがほかのどんなイデオロギーよりも強く、深い。ゆえに私たちはそうしても自分のアイデンティティをそこに見出そうとする。
2018-01-04 23:35:48