「敬語」についてエレン先生はこう考える

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uroak_miku @Uroak_Miku

1)敬語が日本で異常なまでに進化した理由をずっと考えています。以下は仮説ですのでそのつもりでお楽しみください。

2018-01-12 07:04:17
uroak_miku @Uroak_Miku

2)日本語にはヨーロッパ言語でいう「主語」がない。しいて言えば主格補語でしかない。そのため動詞だけだと誰がその動作や状態なのか特定できない。文脈や状況やジェスチャーで判断するしかない。

2018-01-12 07:05:44
uroak_miku @Uroak_Miku

3)そこで「言う」のほかに「申し上げる」とか「おっしゃる」とか「言われる」とか、いろいろな変奏が用意される。これがあれば「言う」のは誰なのかだいたい推察できるから。

2018-01-12 07:07:00
uroak_miku @Uroak_Miku

4)敬語ってそうやって生まれたんじゃないかなーと思います。ちなみに「敬語」という呼び名が生まれたのは明治後期です。大正だったかな? 日本アルプスは何万年も前からあったけれど「日本アルプス」という呼称は明治になって生まれたように。

2018-01-12 07:08:37
uroak_miku @Uroak_Miku

5)動詞の活用から主体が想像できるよう工夫されて自然進化したものが、明治の天皇制の下、ピラミッド型のヒエラルキー構造に人為的に整えられていった。

2018-01-12 07:09:58
uroak_miku @Uroak_Miku

6)そして昭和になって中国大陸に勢力をひろげ、天皇制を日本列島より外に広げていくなか、敬語のシステムも体系化されていった。国語研究の名のもとに、天皇制の堅固化に貢献していった。

2018-01-12 07:11:39
uroak_miku @Uroak_Miku

7)「恐れ多くもかしこくも」みたいなくどい敬語が発明されたのも昭和に入ってからです。天皇とそのファミリーを絶対頂点にした、ことばのヒエラルキー。

2018-01-12 07:12:44
uroak_miku @Uroak_Miku

8)主格を間接的に示すためのアイテムとして自然発生したはずのものが、大日本帝国という巨大なヒエラルキーに沿ったものとして再構築されていった。

2018-01-12 07:13:54
uroak_miku @Uroak_Miku

9)敗戦。天皇制崩壊。天皇はシンボルとしてのみ残り、ヒエラルキーの頂点ではなくなった。敬語の存在理由が消えた。それで敗戦後、新たな敬語の規範が国語審議会によって模索された。それまでは「楽しゅうございます」でないといけなかったのが「楽しいです」でも〇とされた。

2018-01-12 07:15:44
uroak_miku @Uroak_Miku

10)天皇制という巨大ピラミッドを根拠にせず、もっと数学的なシステムとして敬語の再整理がなされた。というか再整理が努力された。

2018-01-12 07:17:18
uroak_miku @Uroak_Miku

11)しかしどうしても数学的構造ではまとめきれない部分が残った。たとえば「頑張ってください」を目上に言うのは敬語の数学的解釈においてはおかしいのですが、といってこれ以外にこれといったものもないため大目に見られている。

2018-01-12 07:18:55
uroak_miku @Uroak_Miku

13)「正しい敬語」の指南書が今も本屋の棚にいっぱい並んでいるのは、こういう歴史的いきさつの反映なのです。

2018-01-12 07:22:22
uroak_miku @Uroak_Miku

14)繰り返します。西洋言語でいう「主語」がない日本のことばでは、動詞の特殊な活用(「いう」を「申し上げる」や「おっしゃる」にする類)によって「主語」をそれなりにイメージできるよう進化した。

2018-01-12 07:23:56
uroak_miku @Uroak_Miku

15)ですが、それはひととひとの上下関係という、やっかいなヒエラルキーを話者に意識されることになった。

2018-01-12 07:25:19
uroak_miku @Uroak_Miku

16)明治日本は天皇を頂点に置いたヒエラルキーを目指した。そして「敬語」が提唱された。

2018-01-12 07:26:04
uroak_miku @Uroak_Miku

17)そして昭和になって東アジア全域に天皇制を広めるために悪戦苦闘。敬語の天皇制化がさらに推し進められ「恐れ多くもかしこくも」系のやりすぎ敬語が乱発された。

2018-01-12 07:27:38
uroak_miku @Uroak_Miku

18)敗戦で、敬語の根拠であった天皇制が崩壊。国語審議会は代わりにもっと数学的つまりシステマティックな敬語を模索した。たとえば「楽しゅうございます」のほかに「楽しいです」を正しいものとして肯定した。

2018-01-12 07:29:55
uroak_miku @Uroak_Miku

19)システマティック化のおかげで天皇制から敬語は分離された。しかしそのせいでシステム思考では対処できない問題がいくつも生じてしまった。「頑張ってください」を目上に使っていいのか?など。

2018-01-12 07:31:55
uroak_miku @Uroak_Miku

20)「です」(丁寧語)を使っているからいいんじゃないの?と思うかもしれない。しかし「頑張る」は尊敬語ではないから「頑張ってください」では尊敬語になりえない。

2018-01-12 07:33:12
uroak_miku @Uroak_Miku

21)システム思考に徹するとおかしいわけですよ。戦前なら「ご無理をなさらないようにしてください」あたりが正解だったのでしょうが、簡略化を是とした戦後国語ではこういうのはあまり好かれなかった。

2018-01-12 07:34:41
uroak_miku @Uroak_Miku

22)難しいですね。こうしたややこしい問題をさっと説明してもらいたいわけですよ私たちは。だから「敬語のマナー」とか「正しい敬語」と銘打った本に飛びついてしまう。実用性の高い規範が欲しいから。

2018-01-12 07:36:06
uroak_miku @Uroak_Miku

23)そんなのは歴史的にもなかった。ないからこそ果てしなく「正解」を探し求める。「起源」を追い求める。それで敬語本が市場を作っているのです。

2018-01-12 07:37:07
uroak_miku @Uroak_Miku

24)いわゆる「日本人の英語」は、こうした敬語の規範問題と地続きです。

2018-01-12 07:37:51
uroak_miku @Uroak_Miku

25)ここから先は説明にさらに手間がかかるので、とりあえずここまで。

2018-01-12 07:38:33