#お好み焼き屋浜風 秋雲編３【艦これSS】

紅吏珠名 @chrishna_c2

「提督。“国産ぷにあな”ってどういう意味ですか？」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

満身創痍となった秋雲が、明石さんたち工作艦の手によって搬送されていくところでした。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

秋雲の、陽炎型を象徴する艤装は大破し、応急処置で巻かれた包帯の所々から血が痛々しく滲んでいました。 ひどいケガ。私たちも艦娘。こんな事態が起こることは覚悟していたはずなのに。 大切な妹が目の前で傷ついている姿を見るのは正直つらい。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

偵察機の報せにより、秋雲が作戦上のミスによって敵艦隊に鹵獲されたとの報が入り、鎮守府中の艦娘、あらゆる探知、通信技術を駆使し、敵泊地の場所を特定・強襲。 ――結果から言えば、陽炎姉さんによる電撃作戦によって秋雲を取り返すことができました。できたのですが。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「やい秋雲！　傷は深いぞがっくりしろ！」 時津風がさらっと縁起でもないことを言っています。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「か、身体が死んでも、魂はふ、め、つ……がくっ」 こんな時にまでノリが良いですね秋雲。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「こらこら時津風。そういう時はですね、こうするんですよ」 すかさず雪風が時津風に肩ぽん。 さすがは時津風のお姉ちゃんですね。姉らしい、頼りがいのあるフォローの言葉。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「こういう時は、人命を救うための必殺兵器を使うんです。その名も……」 『救う』……。 あの“大戦”を生き残った雪風が口にすると、とても説得力のある言葉ですね。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「――AEDです！」 それ。心臓が動いているひとに使っちゃダメですからね雪風。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「秋雲のばかばかばかぁ。もし死んじゃったりしたら、絶対に許さないんだからぁ！」 目を離していた隙に、舞風が満身創痍の秋雲をポカポカやっています。しかも駆逐艦の主砲を両手に持ったままで。 「ちょ、舞姉。ギブギブ。それでやられたら死ぬ。マジ死ぬって」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

そう。舞風にとって秋雲は唯一人の妹。“お姉ちゃん”としての舞風にとってふたりとない、かけがえのない存在なのです。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「秋雲が死んじゃったら、秋雲を沈めて、あたしも沈むぅ～！」 「だから主砲で殴られたら死ぬ。マジで死ぬから」 秋雲の魂の叫びが聞こえていないのか。泣きじゃくる舞風のポカポカは続いていました。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「そんな……舞風が沈んでしまったら私は生きていけないわ」 野分でした。さながら中性的な貴公子が肩を落としたような後ろ姿。 「水臭いぜのわっち。そん時ゃ俺も一緒に沈んでやるよ」 嵐が、そんな野分の肩に腕を回しながらキメ顔でなにか言っています。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「いやだわ。深海に呼ばれている気がするこの感じ……そうよ。なにもかも提督の采配がいけないの」 萩風が白兵戦用のナイフを抜き、なにやら呟いていました。 あの子達の回りにだけなぜか、あのアイアンボトムサウンドにも似た不穏な空気が漂っていました。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

満身創痍となった妹の姿を前に、すっかり気が動転してしまっているのか。第四駆逐隊の四人がそれぞれ自分の世界に旅立っている様子でした。 あれがあの子達なりの、傷ついてしまった秋雲への気遣い方なのでしょうね。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

――ほどなくして。 さっきから暴走気味だった雪風と時津風、野分、嵐、萩風、舞風が、不知火姉さんの号令によって一斉に羽交い絞めにされ、ドックから強制退場させられていきました。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

――さて。あの轟沈提督がいながら、呉鎮守府を陰で支えてきた工廠チームの皆さん。 妖精のまとめ役でもあるヒラガ中将と、その弟子であり工作艦の明石さんの整備技術があれば、たとえ艤装のひとかけらからでも完全復活させることができるわけですけど。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「もう、皆さんダメですっ。秋雲さんは絶対安静にしないと危険な状態なんですよっ」 明石さんに怒られてしまいました。 あとはチームの皆さんに任せ、私たちも退散しましょう……。 「ちょ、タンマ明石さん。……浜姉、こういう時になんだけどさ。ひとつお願いしてもいいかな？」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

艤装は大破し、時津風の精神攻撃を受け、舞風からは主砲で殴られ、もういつ意識を手放してもおかしくない状態の秋雲が、それでも気力を振り絞って私のほうを見ています。 「わかりました。私にできることなら何でも言ってください」 「さんきゅ。じゃあさ、これを受け取ってよ」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

慌てふためく明石さんを制止して、秋雲が手渡してきたのは、一枚の電子タブレット。 それは執筆作業から夜のおかずのレシピまで、これ一枚で何役もこなせる板状のコンピューター（谷風談）という話。 この板一枚に、人々が培ってきた技術の粋が刻みこまれているんですね。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「私の命の次に大事な液タブ、浜姉に預けるよ。中に新刊の原稿が入ってる。いつもの印刷屋に持っていったら後は全部やってもらえるようになってるから」 艤装は大破しているにも関わらず、タブレットには傷ひとつついていません。 この子は。こんな身体になってまで同人のことを。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「だってさ。身体は時間さえあればいつでも治せるけど、即売会はその日その時にしか味わえないじゃん？　たとえ身体がクタクタになっても、自分の描いた原稿を楽しみに待っててくれる読者のみんなのことを考えたらなんてことないしさ」 にひひ、屈託のない笑顔で秋雲は言います。 #お好み焼き屋浜風